米国南西部の数百万人に不可欠な水源であるコロラド川水系から、悪いニュースが相次いでいる。
同川を水源とする巨大貯水池、パウエル湖とミード湖は過去最低水位を記録した。貯水量がさらに大きく低下すれば、グレンキャニオンダムは米国西部の数百万人に電力を供給する能力を失う可能性がある。これを受け、各州が同川を守るための計画づくりに苦慮するなか、連邦政府はカリフォルニア州、アリゾナ州、ネバダ州に大幅な水使用削減を義務付けた。
この状況を懸念すべきなのは、水管理者だけではない。
経済全体に大きな波を起こしているAIデータセンターに将来を託す投資家、企業、発電事業者、政策立案者も注目すべきだ。
彼らが抱える水リスクは見た目以上に大きく、しかも施設の外側に存在する。我々の最新調査が明らかにしたのは、データセンターの最大の水需要は施設内の冷却用ではなく、電力を供給する発電所側にあるという事実だ。
気候変動が干ばつを悪化させ、水資源への負荷を強めるなか、米国西部は長らく予見されてきた現実に直面している。そして今、急速なデータセンター建設が、すでに水資源が逼迫している地域に新たな脅威を重ねようとしている。
その脅威はコロラド川流域の州にとどまらない。東海岸から中西部、グレートプレーンズに至るまで、米国の広大な地域が現在、中程度から深刻な干ばつに直面している。
このリスクの高まりに対処するには、地域社会と企業の双方の水供給を守るために、経済全体の関係者による周到な戦略が必要だ。AIとデータセンターへの需要は鈍化しない。変えられるのは、地域の水供給を損なわずにこれらの施設をいかに計画し建設するかである。それには、データセンターそのものだけでなく、全体像を見渡す視点が求められる。
データセンターの水使用の裏に潜むリスクを評価する
Ceres(セレス)の分析は、米国のデータセンターの約半数が集まる7州(バージニア、テキサス、カリフォルニア、イリノイ、ジョージア、オハイオ、アリゾナ)における、この見落とされてきた需要に焦点を当てている。
これらの州のデータセンターは、電力供給のために年間およそ3.4兆ガロンの淡水に依存しており、これがデータセンターの全水使用量の大半を占めることが分かった。この量は、ロサンゼルス、フェニックス、ワシントンD.C.の年間水使用量の合計のおよそ12倍に相当する。
これらの州の電力の約78%は、化石燃料、原子力、水力といった水を大量に必要とする発電方式で生産されている。水力発電は取水した水の多くを戻すものの、水不足は稼働と信頼性に影響を及ぼしうる。水を利用する発電所で発電される電力の3分の2は、水需要がすでに供給量に近いかそれを上回る地域で生み出されている。
アリゾナ州とコロラド川:水逼迫のケーススタディ
コロラド川流域は象徴的な事例だ。アリゾナ州のデータセンター需要に起因する発電所での水使用量は、年間およそ5200億ガロンと推定され、フェニックスの年間水消費量のおよそ5倍に相当する。同州では、本レポートで分析した発電量の4分の3が、水ストレスと同年内に3カ月以上続く中程度の干ばつ状態の両方にさらされていた。
これは、干ばつがより激しくなり、全体的なエネルギー需要が拡大する世界において、業界を現実のリスクに晒す。例えばカリフォルニア州では、2021年の干ばつによる水位低下で、州全体の水力発電量が過去10年の平均に比べて48%減少した。水不足によって電力供給や自社の事業運営が中断されるとき、これは企業にとって重要な経営課題となる。
企業、投資家、政策立案者にできること
このリスクに対処するための重要なステップがある。
- データセンター企業は、自社の水使用の全容を把握し開示すべきだ。そうすることで、ステークホルダーが責任ある開発の形成に関与できる。主要なテック企業は冷却のための直接的な水使用の削減に取り組んでいるが、必要な電力を発電するために使用される水の量まで開示している企業はほとんどない。
- エネルギー面では、多くの電力事業者がデータセンターを電力需要増の主要因と見なしている一方で、その成長がどのように水リスクへの財務的エクスポージャーをもたらすかを考慮している事業者はほとんどないことが、我々の分析から分かった。
- 投資家にもより多くの情報が必要だ。透明性の向上を求め、データセンター企業や電力事業者と対話し、地域の水ストレスや干ばつ状況を調達や立地の意思決定にどう反映しているか、また水リスクを軽減するために他にどのような戦略を取っているかを示すよう促すことができる。
- 一方、政策立案者は、間接的な水使用を含む標準化された報告を義務付け、水をあまり使わない風力、太陽光、蓄電池の導入を後押しして需要に応えるようにすべきだ。許認可や立地の判断には、発電に使用される水も考慮に入れる必要がある。
AIの構築が前例のないスピードで加速するなか、この発電に伴う「隠れた水使用」はより多くの注目に値する。単一の関係者だけでは対処できないが、それぞれが具体的な行動を取ることで、財務リターンと事業継続性を確保しつつ、米国で責任あるAI開発を実現できる。



