売上高50億ドル(約7890億円)のライブエンターテインメント企業TKOでプロダクトマネージャーを務めるジェニファー・ジェームズは、自身の仕事の変化をある言葉で表現している。彼女はデザイン、エンジニアリング、分析、市場投入の間を、かつてこの職務で必要とされたよりもはるかに少ない引き継ぎで行き来しており、この新たに現れつつある役割を「プロダクトデベロッパー」と呼んでいる。
筆者らのチームがインタビューした別の金融サービス大手のプロダクトリーダーは、一見すると異なる未来を語った。そこでは、AIエージェントが実行業務を担う一方で、人間は自身の専門分野でエージェントを監督する「ドメインスペシャリスト」と、部門を超えて成果物をつなぐ「オーケストレーター」に分かれるという。エージェントは強力だが、サイロ化された状態で機能するため、誰かが点と点をつなぎ合わせる必要がある、というのが彼の主張だ。
この2つの見解は、同じ形状を反対の端から描写している。プロダクトマネジメントは、バーベル型の職業になりつつあるのだ。
プロダクトマネジメントにおける第3のシフト
筆者と同僚は、AIが仕事をどう変えているのかについて、さまざまな業界のソフトウェアプロダクトマネージャーにインタビューした。筆者がForbesの別記事で示した2つの発見は、彼らが活動するシステムに関するものだった。第1に、AIはボトルネックをエンジニアリングから判断へと移している。チームがもっともらしい解決策を生み出す速度が、どの課題に投資すべきかをリーダーが判断する速度を上回るようになっているからだ。第2に、ロードマップは提供予定を並べたカレンダーではなく、学習するシステムになる必要がある。
このシリーズの最後となる第3の発見は、そのシステムを動かす人々に関するものだ。AIが1人でできることを広げるにつれ、プロダクトマネジメントはより幅広く、同時により専門化された仕事になりつつある。
バーベルの一方の端にいるのは、プロダクトインテグレーターだ。顧客課題からプロトタイプ、データクエリ、ローンチ実験へと自在に移り、分野間の距離を縮め、仕事が領域をまたいでもプロダクトとしての一貫性を保つ。
もう一方の端にいるのは、ドメインスチュワードである。市場、技術、リスク環境における深い専門知識を持ち、エッジケースがどこに潜んでいるか、洗練された答えが危険なほど不完全なのはどのような時かを理解している。
組織にはその両方が必要になる。ただし、誤りは、その両方を同じ人物に求めることだ。
幅広さのコストが下がる
AIは隣接分野に踏み込むコストを大幅に下げる。そしてプロダクトマネージャーは、顧客、デザイナー、エンジニアの間に立つ職務であるため、もともと境界を越えるのに適している。
JPモルガン・チェースのスレヤ・カタバトゥニは、その射程が今どれほど広がっているかを示している。スピード重視のチームは、まずデザインし、ドキュメント化は後回しにすることがあり、Figma上で直接反復するうちに要件を失ってしまうことがある。彼女はそれに気づき、デザインファイルを読み取ってドキュメントを生成するツールを構築した。これはかつてなら、プロダクトマネージャーがエンジニアリングに依頼し、場合によっては受け取れなかったかもしれない社内ツールである。
インテグレーターの独自の価値は、こうした活動を共通の目的に結びつけることから生まれる。プロトタイプ、データ分析、ローンチ計画はすべて、同じ顧客のJobs to be Done、すなわち特定の状況で顧客が遂げようとしている進歩に資するべきだからだ。その糸がなければ、部門横断の仕事は一貫したプロダクトではなく、成果物の山を生むだけになりかねない。この種の幅広さに必要なのは、複数のツールに通じていることだけではない。顧客が抱える苦労を定義し、ある領域での判断が別の領域にどう影響するかを見抜く能力が求められる。
判断の価値が高まる
幅広さは、それ自体の危うさも生む。AIは、人が専門外の仕事に取り組むことを容易にする一方で、その人が自分の理解を超えた領域に踏み込んでいることを示すシグナルはほとんど与えないからだ。
この問題は、学術研究で定量化されている。758人のコンサルタントを対象にしたハーバード・ビジネス・スクールのフィールド実験では、AIを使った参加者は適したタスクを25%超速く終え、品質評価も40%超高い成果を出した。一方で、AIの有効範囲外にあるタスクでは、正答に到達する可能性が19%低かった。
したがって、ゼネラリストは驚くほど大きな射程を手にしながら、速いスピードで自信を持って間違えることがある。プロトタイプは完成しているように見えても、アクセシビリティ、アーキテクチャ、プライバシー、規制上の制約を無視しているかもしれない。
このことは、AIによるアウトプット量がもっとも多い領域で、ドメインスチュワードシップの価値をとりわけ高める。Visaのあるプロダクトマネージャーは、同社組織のプロダクトではすでにコードのおよそ80%をAIが生成しており、数年以内にはエージェントが開発の大半を担うようになると予想していると語った。決済において核心的な問いは、コードを生成できるかどうかではない。どのアウトプットを信頼してよいのか、どの基準に照らして安全だと言えるのかを判断できるのは誰か、ということだ。AIは答えを生成するが、スチュワードはその答えが成り立つ時を知っている。
超人的な職務記述書を避ける
組織にとってもっとも簡単な対応は、職務記述書を長くすることだ。1人に対して、プロトタイプを作り、コードを点検し、データを分析し、顧客調査を行い、ローンチを形づくり、それでもなおすべてのステークホルダーを調整することを期待するのである。これは、技術が広げる射程と人間のキャパシティを混同している。ProductPlanが約250人のプロダクト専門職を対象に実施した2026年調査では、73%がPMの役割はよりハイブリッドになると予想している一方、47%がPMへの非現実的な期待を懸念として挙げた。そのほかにも、境界の曖昧さ、スキルギャップ、職人性の喪失が指摘されている。
役立つ明確な選択肢は3つある。
第1に、プロダクトの文脈に応じてインテグレーターとスチュワードのバランスを設定することだ。やり直し可能な意思決定の上に構築される消費者向けアプリケーションはインテグレーター寄りにできる。一方、規制対象のプラットフォームや重要度の高いワークフローには、より強いスチュワードシップが必要だ。すべてのプロダクト領域に両端は必要だが、その比率は異なる。
第2に、意思決定権を定義することだ。インテグレーターは、自分だけで何を調査し、テストし、出荷してよいのかを理解しておくべきである。同時に、リスクと影響に結びついた明確なしきい値で、スチュワードのレビューを受ける必要がある。小さな実験のすべてに専門家の承認を求めれば、AIがなくせるはずの引き継ぎを再現してしまう。一方で、すべての実験をリリースにしてしまえば、速く動く失敗を招く。
第3に、2つのキャリアパスを作ることだ。インテグレーターは、曖昧な問題を定義し、機能横断で統合し、プロダクトの一貫性を保つことで前進できる。スチュワードは、希少な判断力を磨き、基準を設定し、難しい判断を解決することで前進できる。
採用もそれに応じて検証できる。AIによって、洗練されたケース課題の作成は容易になった。雇用主は、候補者が顧客課題をどう定義するか、自分の知識の限界をどう認識するか、そして他者の専門性が必要になるタイミングをどう判断するかを掘り下げるべきだ。
例外的なプロダクトマネージャーの中には、バーベルの両端を兼ね備える人もいるだろう。ただし、大半はどちらか一方に傾く。すべてをこなせる稀有な人物を前提にこの職業を設計すれば、疲弊と表層性を生むことになる。
組織図には「プロダクトマネージャー」と書かれた単一の箱が残るかもしれない。だが、その下で機能するバーベル型の運営モデルは、はるかに意図的に設計されるべきだ。



