アインシュタインが予測した重力波観測へ ESAが探査機を打ち上げ

Photo by Keystone-France/Gamma-Keystone via Getty Images

ESA(欧州宇宙機関)は、アインシュタインが予測した重力波の観測に向けて、世界初の科学的実験に着手した。4.5億ドルを投じた試験的調査である。

12月3日、フランス領ギアナのクールーにあるフランス国立宇宙センターのロケット発射基地からVEGAロケットに搭載された宇宙探査機LISA パスファインダーが打ち上げられた。探査機は金とプラチナでできた立方体を積んでおり、これを自由落下させることで100年前に発表された一般相対性理論でアインシュタインが予測した重力波の観測を試みる予定だ。

一般相対性理論では、巨大な物体が宇宙を高速で移動する際、時空に波動が発生するとされている。しかし、その振幅が非常に小さいことから、未だ科学者によって観測されたことはない。

その大きさは、何百万キロの移動に対して10億分の数十ミリとされており、観測には非常に高精度の計測機器が必要となる。

LISAパスファインダーは、ある重力波観測方法を実施する。重力以外の力が一切作用しない状態で、金とプラチナでできた全く同じ立方体を2つ自由落下させるというものだ。反射して2つの間を往復するレーザービームを利用した複雑なシステムで立方体の相対的な位置をモニターすることで、10億分の1ミリという精度でどれだけ真の自由落下に近いのかを解明する。

この調査は宇宙空間における将来的な調査の基盤を築く取り組みであり、今後地球上における重力波解明の研究を補足するものとなる。

VEGAロケットは12月3日午前4時4分(グリジッジ標準時)に発射、LISAパスファインダーはその約7分後に無事低地球軌道に乗り移った。ロケットから分離された同探査機は、10週間かけて地球から150万キロメートルほどの距離にあるL1という安定した地点まで6噴射でたどり着く予定だ。

到着したら、探査機は立方体を自由落下させ、小さな姿勢制御ロケットを使用して、落下する立方体が重力以外の力の影響を受けることを防止するために、自分の位置が落下物の真上となるように調整する。

「重力波は天文学者にとって最先端の領域です。私たちは宇宙を肉眼で見える光の世界として何千年も見上げきて、100年前くらいからやっと電磁スペクトルという次元で見るようになりました」とESAのサイエンス・ロボティック探査部門長アラバロ・ギメネツ・カニャーテ氏は発表文書で述べている。

「しかし、今回アインシュタインが100年前に予測したことをLISAパスファインダーで検証することで、宇宙を全く新しい視点で捉えるための道筋を作り始めたことになります」

LISAパスファインダーが今後6カ月の任務を成功裏に終えることができれば、科学者たちは将来的に重力波の観測が可能な宇宙観測衛星の建設を検討することもできるようになるだろう。

ESAのLISAパスファインダープロジェクトに参加している科学者ポール・マクナマラは「地球上で何年もかけて研究を発展させ、実験を行ってきました。今後、宇宙でしか行うことのできない本源的な実験が可能になるのを楽しみにしています」と述べた。

「数週間内に、宇宙空間における重力の特性を理解するための探求がスタートします。そこで手ごたえを得ることができれば、将来的には重力波研究のための本格的な宇宙観測衛星の製作を検討することができるようになるでしょう」

編集 = Forbes JAPAN 編集部

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