リーダーシップ

2026.09.18 23:06

L&Dのコスト削減指令、多くのリーダーが陥る本末転倒なアプローチ

Adobe Stock

Adobe Stock

CFO(最高財務責任者)からコスト削減目標を提示されたとき、多くのL&D(人材開発)リーダーの頭に浮かぶのはただ一つ、すなわち「人員削減」だ。これは最も手っ取り早い手段であり、財務部門がスプレッドシート上で確認するのも容易である。しかし、私の経験上、これは中期的に見て最も高くつく手段でもある。

その計算が成り立つことは滅多にない。SHRM(米社会人材マネジメント協会)によると、従業員1人を交代させるコストは年収の50%から200%に上る。また、新規採用者が本来の生産性に達するまでに3カ月から8カ月かかることもあり、削減された業務処理能力は1年の大半が過ぎるまで回復しない可能性がある。問題は財務面だけではない。ITリーダー1000人を対象とした調査では、3分の2が離職による組織的知識の喪失に懸念を示し、半数近くがその結果として生産性が低下すると指摘している。

私はこの数年、企業のL&Dチーム向けの業務ソフトウェアを構築してきた。そのため、彼らが実際にどのように時間を使っているのか、つまり運営委員会向けの報告資料ではなく、システム上で実際に何が動いているのかを明確に見ることができる。最近そのデータを分析したところ、多くのチームがまだ手をつけていない3つのコスト削減手段が浮かび上がった。これらはすべて、CFOが信頼を置く基準に照らしても十分に効果的であり、かつ1人の人員も削減する必要がないものだ。

1. バックログが把握しきれないほど膨らんでいないか?

L&Dにおいて最もコストがかかるプロジェクトは、そもそも開始すべきではなかったプロジェクト、すなわちビジネス成果との明確な関連性が記録されていない業務である。私が分析したデータセットでは、優先順位が割り当てられていない進行中プロジェクトの割合が、わずか1四半期で約23%から34%に上昇した。その一方で、案件数は高止まりしているにもかかわらず承認率は低下しており、仕分け処理が追いつかないままバックログ(未処理案件)が積み上がっている実態が明らかになった。

その解決策にコストはかからない。あらゆる要望に対して、それがどのようなビジネス目標に紐づいているのか、それを見送った場合に何が起きるのか、そして誰がその成果に責任を持つのかを明確にするのだ。これらの問いに答えられないものは、プロジェクト計画ではなく待機リストに回す。既存のプログラムに一切影響を与えないため、これは最も容易に正当化できる削減手段である。

2. その「効率性の向上」は、単なる報告上の問題ではないか?

経営陣がコスト削減の手段を模索するとき、予算を超過したプログラムを洗い出そうとするのはごく自然な衝動だ。それも無理はない。2022年後半に実施されたCFO600人を対象とした調査では、半数近くが自社の支出データに対する実質的な可視性を欠いていると認めている。そのため、本当の非効率が潜んでいる場所ではないとしても、警告の赤ランプが点滅している箇所に真っ先に目を向けてしまうのだ。

だが、当社のデータは異なる現実を示している。同時期に、記録された実労働時間が事前の見積もりを下回ったタスクの割合は、約63%から78%に急増した。一見すると効率性が飛躍的に向上したかのように思えるが、実際はタスク完了の間際になって時間追跡のルールが形骸化し、作業は終わったものの時間が記録されていない可能性が高い。

これは重要な問題だ。不完全なデータに基づく「効率化」のストーリーを信じたCFOが、後にその乖離に気づいたとき、L&D部門の信頼性は失墜してしまうからだ。時間記録の規律それ自体を一つの指標として扱い、外部に報告する前に「予算内」とされるタスクをスポットチェックすべきだ。これは追加の予算を要求するよりも低コストで済む解決策であり、将来的に必要となるデータの信頼性を守ることにつながる。

3. 新規採用を申請する前に、業務を再配分できるか?

第3の手段は、人材の流出、すなわち採用コストに現れる。当社のデータでは、L&Dの業務時間を記録しているアクティブな人数が前四半期比で約12%減少した一方で、総労働時間は横ばいだった。1人あたりの平均タスク負荷は約2倍に増加し、最も多忙な上位10%の担当者が担う業務量は、全体の半分から3分の2近くにまで跳ね上がった。

その一方で、L&Dに求められる業務はより高度なスキルを要する領域へと移行しつつある。L&Dリーダー600人を対象とした調査では、この部門が戦略的ドライバーとして見なされるケースが増えており、データに基づく意思決定が最優先事項となっている。より少ない人数でより戦略的な業務をこなすというのは、本来あるべきコスト削減の姿とは真逆である。

新たな求人を出す前に、不釣り合いな負担を抱えている人物を特定し、業務を再配分すべきだ。もしそのうちの1人でも離職した場合の補充採用コストをシミュレーションしてみるとよい。それこそが、取締役会に対して最も説得力を持つ説明資料になるはずだ。

何が本当に障壁となっているのか?

これらの手段はいずれも、技術的に難しいものではない。リーダーたちの足を引っ張る要因はデータの不足ではなく、通常は以下の3つのうちのいずれかである。

1つ目は「タイミング」だ。削減要求は、本来行うべき監査を尽くす猶予もないほどの急な納期で突きつけられる。そのため、リーダーたちは最も迅速に実行できる人員削減に安易に頼ってしまう。その解決策は、優先順位の追跡、時間記録の徹底、業務負荷の偏りを平時から継続的にモニタリングしておくことだ。そうすれば、削減指令が下ったときには、監査作業の半分はすでに終わっている状態になる。

2つ目は「抵抗」だ。しかも、あからさまな反対意見という形をとることは稀である。多くの場合、抵抗の最大の原因は異論ではなく、メンバーに対して「なぜその変更が必要なのか」という明確な理由が説明されていないことにある。L&Dチームにおいて、データが自分たちに不利に使われるかもしれないとメンバーが察知すると、労働時間を正直に記録することを嫌がるようになる。削減指令が下ってから慌ててこれらの管理手法を導入するリーダーは、せいぜい形ばかりの遵守しか得られない。危機が訪れる前にこうした習慣を築き上げているリーダーこそが、真の協力を得ることができるのだ。

3つ目は「政治的要因」である。優先順位の曖昧なバックログや特定の個人への業務集中を浮き彫りにすることは、他のリーダーたち(ときには同じ会議室にいる人物)が下した決定に言及することを意味する。これに対する特効薬はない。個人的な議論ではなく、客観的なデータを提示し、ともすれば感情的になりがちな対話を数字に基づいて進めるしかない。

人員削減が一切正当化されないというわけではない

要求される削減幅が、これらの手段だけで吸収できる範囲を超えることもある。それは失敗ではなく、正当な結論だ。

変化するのは、誰が主導権を握って対話を進めるかという点だ。バックログの規模、記録時間と実際の作業時間の乖離、そして業務負荷の集中度をあらかじめ把握しているリーダーは、守りの姿勢で交渉に臨む必要がない。また、この変化は予算サイクルが過ぎた後も持続する。継続的にモニタリングを行うことで、これらの一連の取り組みは一時的な防衛策ではなく、年間を通じてこの部門を動かす強力な運営指針となるのだ。

私がこれまで見てきた中で、L&Dリーダーが行う最も有用なことは、提示された数字にただ反論することではない。より小さく、より十分に裏付けられた自分たちの数字を提示し、その背後にある仕事をCFOに見せることだ。

forbes.com 原文

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事