心理学においては「ソーシャルバッテリー」という正式な概念はない。だが、人付き合いで疲れる要因については優れた研究が数多くある。そうした研究の大半が示しているのは、どれだけ人と交流するかではなく、人と交流している最中に何をしているか、という点だ。
疲労のかなりの部分は、話している自分自身を意識的に観察することから生じる。また、感じていない温かさを示すことから生じる疲労もある。そして、後にやり取り全体を振り返ったときに現れる疲労もある。
これらは生まれつきの対応能力より対処しやすい問題といえる。なぜなら、会う人の数を減らさなくても条件を少し変えるだけでよく、その効果は積み重なっていく傾向があるからだ。
習慣1:出来事の後だけでなく最中にも「回復の場」を組み込む
人格心理学者ブライアン・リトル氏の「自由特性論」は、大半の人が名前も知らないまま経験してきたことを説明している。これは自分にとって大切な何かのために、普段の自分とは異なる行動を取ることだ。内向的な人がパーティーを主催して一晩中にこやかに振る舞う。物静かな同僚が会議を進行し、しかも見事に仕切るなど。人はこうした行動をすることができるものの、その後に何らかのコストが発生する、というのがリトル氏の主張だ。
リトル氏が勧めているのが「回復の場」だ。これは単に、本来の自分に短時間戻ることであり、イベントが終わるまで我慢するのではなく、その途中に取り入れる時間を意味する。必要でもない物を取りに車まで歩いて行く、あるいは、まだ誰も立ち入ってないキッチンで皿を拭くといった些細なことでいい。
多くの人は逆のことをする。途中で席を外すのは失礼だと思ってずっとその場に留まり、その結果、休日はずっとソファに横たわって前日の疲れを癒やすことになる。
1人で過ごす時間には、不安やいら立ちといった興奮状態を和らげる傾向があるが、その時間を自分で選んだかどうかが大きな違いをもたらす。学術誌『Scientific Reports』に2023年に掲載された研究では、3週間にわたって人々に毎日日記をつけてもらい、1人で過ごす時間が強制されたものではなく、自分の意思で選んだものである場合、その時間がもたらすデメリットは軽減または解消されることが明らかにされている。つまり、適切なタイミングで意図的に取る5分間の方が、完全に疲れ切ってから取る5時間よりも重要である可能性を示唆している。
習慣2:世間話ではなく「本当の会話」をする
多くの人は、深い会話をすると消耗すると思っている。しかし、実際にはそれほどエネルギーを消耗しないと考えるべき十分な理由がある。
世間話をしているときは、常に別のプロセスを並行してこなす必要がある。その話題は無難か、相手が退屈そうではないか、次は誰が話す番か、といったことを気にかけ続けている。会話をしながら、同時にその会話を管理しているのだ。本当の会話で求められるのは、自分の考えを伝えることだけだ。2つのことをこなすのではなく、すべきことは1つに限定されている。



