経営・戦略

2026.09.18 22:57

レイオフはAI戦略ではない 長く存続する企業はいかに人材のレジリエンスを築くか

Adobe Stock

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パンデミック期間中、ある大手航空グループは、AIに直面する多くの企業が思い当たるであろう問題に見舞われた。多くの従業員が、少なくとも従来と同じ規模では、採用時に想定されていた業務を遂行できなくなったのだ。パイロットは運航できず、客室乗務員が担当する便数も大幅に減少した。目の前の圧力はコスト削減だったが、同時に同グループは需要が戻ったときに何が起きるかも考えなければならなかった。

筆者は、影響を受けた従業員に対しキャリアプロファイリング、研修、組織内での異動機会を提供する社内の「ワークフォース・モビリティ(人材流動性)・プログラム」を通じて、この課題を目の当たりにした。その取り組みは、「現在の職種名を超えて、この人たちには何ができるのか」というシンプルな問いから始まった。

この問いに答える過程で、パイロットの分析的な意思決定力から、客室乗務員の顧客対応力やプレッシャー下での判断力まで、他部署でも活かせる能力(ポータブルスキル)が明らかになった。社内プログラムのデータによれば、1378人の参加者が組織内の別の職務に移り、再配置率は87%と報告されている。

他の組織がこの結果を再現できると決めつけるべきではないが、この経験は、企業が自社の従業員を「現在の職位」以上の存在として理解したときに、どのような選択肢が広がるかを示している。

AIは、同じ意思決定をより速いスピードで迫っている

パンデミックは急激なショックだった。AIは同じ問題を、より緩やかだが、潜在的にはより大きな形で生み出している。組織が職務を再設計する前にタスクは変化し、スキルは多くの企業が代替能力を育成するより速く陳腐化している。

世界経済フォーラム(WEF)は、2025年から2030年にかけて労働者の既存スキルの39%が変化するか、時代遅れになると推計している。また、雇用主の63%がすでに、スキルギャップを変革の大きな障壁とみなしているとも報告している。そのため、企業は同時に2つの圧力に直面している。今すぐAIによるコスト削減効果を実現することと、今後3〜5年で必要となる能力を構築することだ。

レイオフは即時かつ測定可能なコスト削減をもたらすため、経営陣がAI投資のリターンを示す圧力を受けているときには魅力的に映る。時には必要なこともある。企業はもはや価値を生まない仕事を温存すべきではなく、すべての従業員が将来の職務に移れるわけでも、移りたいわけでもない。

問題は、何が失われるのかを理解しないまま、誰を削減するかを決めることにある。職位は能力を示す指標として不十分だ。あるポジションをなくすことは、業務知識、顧客との関係、判断力、そして後になって企業が採用し直し、再構築しなければならないスキルを失うことにもなり得る。

ここでの教訓は、自動化を避けることではない。スピード、品質、コストが改善されるのであれば、企業はAIを活用すべきだ。しかし、人員削減を「AI戦略が機能している証拠」として扱うべきではない。

長く存続する企業には、「ワークフォース・レジリエンス(組織の適応力)」が必要だ。それは、テクノロジー、顧客需要、ビジネスモデルが変化するなかで、能力を育て、移動させ、補完する力である。

誰を削減するかを決める前に、将来のビジネスに何が必要かを知る

リーダーは、大ざっぱな人員削減目標を設定するのではなく、将来の業務がどうなるかという点から始めるべきだ。AIがどのタスクを担うのか、職務がどう変わるのか、どの人的能力の価値が高まるのかを特定する必要がある。

ほとんどの職務は、異なる種類の仕事の組み合わせで成り立っている。AIは定型業務を取り除くかもしれないが、専門領域の知識、判断力、関係構築力、説明責任の必要性は残る。職務の一部を自動化したからといって、その職務全体が不要になるとは限らない。

「ワークフォース・レジリエンス」の監査で答えるべき3つの問い

1. 将来の組織にはどのような能力が必要か

将来のオペレーティングモデルを、具体的な能力と現実的な熟達度の水準に落とし込む。これにより、AI投資と、人がなお遂行する必要のある仕事との結びつきが明確になる。

2. どの能力がすでに存在しているか

肩書にとらわれず、実証済みの能力と学習ポテンシャルを区別しながら、将来のフレームワークに従って従業員のマッピングを行う。これにより、価値ある能力がどこに隠れているか、そして真のギャップがどこに残っているかが明らかになる。

3. 誰が異動可能で、誰がそれを望んでいるか

技術的な適合性は、持続可能な再配置の一要素にすぎない。キャリア上の関心、働き方の好み、動機づけは、異動が定着するかどうかに影響する。リーダーは、その人物が将来の職務を遂行できるかどうかだけでなく、その職務が本人にとって納得できるものかどうかも理解する必要がある。

これらの問いは、退職判断を下した後ではなく、大規模な組織再編の前に答えを出しておくべきだ。また、事業戦略やテクノロジーが変化すれば、一度きりのスキル棚卸しはすぐに陳腐化するため、定期的に見直す必要がある。

現状をマッピングし、真のコストを比較する

能力(ケイパビリティ)のマッピングは、最初から網羅的な作業として始める必要はない。既存の職務記述書(ジョブディスクリプション)、履歴書、人事記録などから初期的な全体像を把握し、エビデンスが不十分な場合や重要な決定を下す場合に、対象を絞った評価を行えばよい。

事業上の比較も率直でなければならない。再配置のコストを、退職金、採用、オンボーディング、生産性が立ち上がるまでの時間、組織知の喪失と比較する必要がある。また、その人が新しい職務で成功する確率も考慮すべきだ。

このプロセスが常に社内での解決策を生むわけではない。場合によっては、外部採用や人員削減の方がよい選択であり続ける。この種のワークフォースインテリジェンスの目的は、どんな犠牲を払っても再配置を正当化することではない。どこで能力を構築または移動できるのか、どこで本当に外部から獲得する必要があるのかを示すことにある。

これこそが「組織のレジリエンス」の真の価値である

ワークフォース・レジリエンスは、単に従業員を守ることだけを意味しない。自社の能力を可視化し、移動できる企業は、人材を新たな製品や市場へ振り向け、本来なら社外に流出していた知識を保持し、解雇と採用を繰り返す費用を減らすことができる。

AIは、この10年に企業が直面する最後のディスラプションではない。長く存続する組織も、レイオフを含む困難な決断を今後も下すことになる。彼らの強みは、なぜ削減が必要なのか、どの能力を守らなければならないのか、そして従業員が次にどこで貢献できるのかを理解していることから生まれる。

それが、短期的なコスト目標を達成するためにAIを使うことと、繰り返される変化の中でも利益を上げ続けられる企業を築くことの違いである。

forbes.com 原文

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