サクセッションプランニング(後継者育成計画)、AIリーダーシップ、エグゼクティブ開発は、今日のシニアリーダーにとって最も重要かつ複雑な意思決定の一部だ。しかし、リーダーたちは明確な見通しが立たないまま、増大する複雑さに対応せざるを得なくなっている。
この緊張感は、LHHが発表した2026年版「View from the C-Suite(経営幹部の見解)」レポートにおける一貫したテーマとなっている。2500人以上の経営幹部を対象に調査を実施したところ、不明確な戦略的優先事項と、意思決定における規律の弱さが、リーダーの有効性を制限する最大の要因であることが分かった。人材に関する優先事項の変化も、この緊張感をさらに強めている。2025年には、優秀な人材の獲得がシニアリーダーにとって2番目に高い優先事項であり、引き留め(リテンション)は9位だった。しかし現在では、人材の引き留めが最優先事項となっている。
これらの調査結果を総合すると、リーダーが戦略的な方向性を描き、それに沿って実行するのではなく、状況に追われて対応していることを示唆している。
人材の引き留めが、サクセッションパイプラインの課題に
2025年に離職率が過去最高を記録した後、チームは安定しつつあるようだ。調査対象となったベビーブーマー世代の経営幹部の約58%が、今後3年間は現在の役職を離れる予定はないと回答した。これは経営層の安定にとって朗報だが、短期的な意味に限られる。シニアリーダーが現在のポジションに長く留まるほど、リーダーシップのパイプラインにボトルネックが生じ、次世代を担う人材の開発や昇進の機会が狭まる可能性がある。時間が経つにつれ、それはエンゲージメントを損ない、将来の移行に必要な組織の後継者層の厚みも弱めるおそれがある。
Z世代のリーダーを対象とした調査では、48%が新しい役職を求める主な理由として「キャリアのステップアップ」を挙げた。実際、彼らは自身の成長を加速させる機会があれば、これまでの世代よりも前向きに新しいチャンスを検討する傾向がある。つまり、将来のパイプラインにおいて最も重要な層が、自身の進むべき道が見えない場合、最も容易に流出してしまう可能性があるのだ。
組織は、キャリア後半を迎えたリーダーたちのキャリア戦略管理に積極的に関与する必要がある。個人の勤続意向と組織のニーズをすり合わせ、彼らの次のステップに向けた計画への指針を示すことができる。さらに、シニアの役割を再設計することで、キャリア後半のリーダーたちのエンゲージメントを維持しつつ、次世代リーダーが重要施策を指揮できるだけの余力を生み出すことも可能だ。具体例としては、共同リーダー制度やプロジェクト型のアサインメントなどが挙げられる。効果的なサクセッションプランニングを行うことで、あらゆる段階のリーダーに将来の機会に対する明確な見通しを提供できる。その結果、組織はリーダーシップの継続性を確保し、不測の事態に直面した際にも回復力を発揮できるようになる。
AIに関する優先事項は、AIリーダーシップよりも急速に変化している
AIに関する意思決定の複雑さは、組織がそれを効果的にリードし、統治(ガバナンス)する能力よりも急速に高まっている。経営幹部はAIを導入する自社の能力に自信を失いつつあり、半数近くが、チームにはAIに関して適切な意思決定を行うために必要なスキルや知識が不足していると考えている。
AI能力は、リーダーにとって最重要の育成課題になりつつある。彼らは、データ品質の確保、意思決定へのAI活用、AIソリューションの展開と定着の管理に関する支援を求めている。このギャップを埋めるためには、AIを意思決定、ガバナンス、チェンジマネジメント(変革管理)に組み込み、その導入が測定可能なビジネス成果に結びつくようにする必要がある。
エグゼクティブが「俊敏性」という強みを築くためのサポート方法
AIが育成優先事項の最上位を占める一方で、経営幹部が認識している最大のスキルギャップは、人間的かつ適応的な能力にある。具体的には、戦略的思考と意思決定、創造的な問題解決、チェンジマネジメント、そして心の知能指数(EQ)などだ。これらは、リーダーがAIを単に理解しているか否かだけでなく、どれほど効果的に適用できるかを左右するスキルである。
LHHのコーチング事業であるEzraが発表した最近のレポートでは、AIの能力を人間の強みに変えることに成功している組織に共通する、4つの人間的な差別化要因が特定されている。それは好奇心、洞察力、謙虚さ、つながりだ。以下のように取り組むことで、これらのスキルはあらゆる混乱における適応力の基盤となり得る。
・好奇心:深く追求する。AIが業務そのものをどのように変えるかを探る問いを投げかける。
・洞察力:自らの判断を信頼し、批判的思考を用いてアウトプットを評価・検証する。
・謙虚さ:自分がすべての答えを持っているわけではないと認めることで、学び、適応し、盲点に対処する姿勢が生まれる。
・つながり:進歩は、個々の知見を共有し、そこから学ぶことにかかっている。
Cスイートレポートは、一つのことを明確にしている。エグゼクティブたちは、こうした支援が必要だと分かっているのだ。それがなければ、彼らは次に来るものに備えるのではなく、昨年の課題を追い続けることになる。
課題に備えるために、その正確な形を知る必要はない。リーダーシップの本質はますます、正しい答えを持つことよりも、継続する不確実性を乗り越えるために必要な判断力、適応力、回復力を養うことへとシフトしている。



