構造化意思決定は、生成AIと組み合わせることで価値が高まる
構造化意思決定では、出力候補と、その中からどの結果を返すかを決める条件を事前に設定する。JevのようなAIモデルは、こうした用途に利用できる。
例えば企業が、顧客から受けた返品申請を認めるか自動判定したいとする。この例では顧客がツールと直接やり取りし、返品に必要な情報を伝える。ツールは事前に定めた「はい」か「いいえ」で結果を返す。結果に付く確率は顧客には見せず、顧客が異議を唱えた場合に対応する担当者だけが確認できるようにもできる。
構造化意思決定という発想はエキスパートシステムに通じる
AI分野に長く携わってきた人なら、回答候補や条件を事前に定めて結果を出す方式に見覚えがあるだろう。かつて広く研究されたエキスパートシステムである。知識ベースシステムやルールベースシステムとも呼ばれ、確率を含むルールを使い、あらかじめ定めた条件に基づいて結果を出す仕組みとして普及が期待された。
エキスパートシステムはやがて、柔軟性に欠け、開発も難しいとみなされて支持を失った。私は以前から、生成AIやLLMと組み合わせる形でエキスパートシステムが復活すると予測してきた。こうした組み合わせは、ハイブリッドAIやニューロシンボリックAIと呼ばれる。
生成AIとルールベースを組み合わせることがAIの将来像になる
私は今回のJev発表を心強く感じている。AIの将来がハイブリッドAIにあることを示す新たな兆候だからだ。生成AIや人工ニューラルネットワークに代表されるサブシンボリックAIと、ルールに基づくシンボリックAIを慎重に組み合わせることが、AIの将来像になると強く考えている。
同時に、今回の発表を巡って構造化意思決定を担うAIモデルの意味が取り違えられ、別の概念と混同されていることには落胆している。リンゴはリンゴ、オレンジはオレンジとして、別物をきちんと区別すべきだ。
企業は問題に合ったAIを組み合わせる必要がある
企業が考えるべきなのは、直面する問題にどの道具が最も適しているかである。一般的な生成AIで処理できる課題もある。だが、出力候補や条件を事前に定められる種類の意思決定が中心なら、ドライバーが必要な場面で金づちを使おうとしている可能性がある。
生成AIと構造化意思決定ツールを組み合わせれば、生成AIの利点を残しながら、構造化意思決定の利点も得られる。すべてを一般的な生成AIだけに無理に押し込めば、それは失敗を招くレシピになる。
最後に、ベンジャミン・フランクリンは人間を「道具を作る動物」と表現したことで知られる。重要なのは、仕事に合った道具を選ぶことだ。AIをどう使うかも含め、選んだ道具が本当に適切なのか、確信を持てるところまで確かめるべきである。


