ファッション、音楽をはじめ、幅広い領域で独自のカルチャーを築き続けてきたNIGO。そのクリエイティブを、いかに持続するビジネスへとつなげているのか。
鍵を握るのは、過去を徹底して学び、新たな価値へと変えていく力だ。
*「NIGO」は登録商標です。本記事では可読性を考慮し、登録商標を示す「®」表記を省略しています。
夏になると、NIGOが必ずやることがある。何万点にも及ぶヴィンテージコレクションの日干しだ。普段は倉庫に収蔵されているアイテムを、丁寧に外に運び出す。午前10時から始めて、1時間干したら前後を入れ替えてまた日光に晒していく。
「手がかかるので大変です。でも、すべて自分がいいと思って買ったものだから、愛着があって捨てられない。並べてみると、アメリカンカルチャーのものだったり、日本の明治・大正文化のものだったり。好きで買っていただけですが、気づいたら文化が集まっていた、みたいな。手を抜けないです」
コレクションは普段、空調管理された倉庫でテーマごとに管理され、いつでも手に取って鑑賞できる。ただ、その目的はアイテムを愛でることだけではない。NIGOにとって、コレクションはクリエイティブのアイデアの源泉でもあるのだ。
HUMAN MADEは NIGOが2010年に立ち上げたライフスタイルブランドだ。そのコンセプトは“The Future Is In The Past”(未来は過去にある)。
「このブランドを始めたとき、すべてのアイテムが過去の段階ですでに出来上がっていることに気づきました。例えばジャケットの基本のかたちは1950年代にはもう完成している。今も残るディテールもあれば、面白いのに消えたものもある。それはなぜだろうと古着を見ながら考え、デザインに生かします。でも、過去をそのままもってきたら当たり前にしかならない。過去のものをいかに先のものとして蘇らせるか。そのヒントをコレクションから得ています」
HUMAN MADEの売上高は142億7,300万円(2026年1月期)。直近3期の売上高年平均成長率30%だ。アパレル大手でも0~10%台が多いなかで、その好調ぶりがよくわかる。
なぜヴィンテージから着想を得た「未来」がファッション愛好家たちに支持されているのか。HUMAN MADE代表取締役CEOの松沼礼は次のように分析する。
「人の手を介したモノとして存在していることが大きいのではないでしょうか。AIはオンライン上にある過去の情報をもとに生成します。しかし、NIGOさんがアーカイブしているヴィンテージのようにデジタル化されないものはたくさん残っていて、AIはそこからは何も生み出せない。ヒューマンタッチなものづくりができていることに魅力を感じていただいていると考えています」
注目したいのは、営業利益率32%、ROE33%と、高い収益性を維持したまま売り上げを伸ばしていることだ。




