歩いていて、後ろに人がついてきたら右に曲がる。またついてきたら、また曲がる。そうしているうちに結局元に戻っている。トレンドもカルチャーもそういうサイクルですし、後を追うより前を歩くクリエイターが強いんじゃないかなと思います」
そのなかでNIGOは日本のストリートカルチャーを「アメリカ文化の横取りカルチャー」と表現する。無論、ポジティブな意味だ。「例えばジーンズはアメリカのカルチャーですが、今では日本のものになっている。先人たちがアメリカのヴィンテージを買い付け、それを僕らが買って影響を受けた。ただのジーンズをすごく分析して、バリエーションをつくり、細分化していく。努力というか、いい意味でのオタクですよね。それが日本のストリートカルチャーなのかなと思います」。
そんなNIGOが今関心を寄せているのは、日本を貫く「縦」の感性だ。現在、ロンドンのデザインミュージアムで開催中の「NIGO: From Japan with Love」(~10月4日)。展示は少年時代の部屋の再現から始まり、最後に茶室へとたどり着く。「実家は畳でしたが、僕はそれが嫌でわざわざ絨毯を敷いていました。でも大人になって海外でも仕事をするようになり、今はお茶や陶芸で日本のものを愛するようになった。日本は美の視点が独特。その感性を服にも出していければ面白い。今は畳が落ち着きます」
お茶と陶芸を始めて10年以上。ただし、そこで得たものをすぐにクリエイションにもち込むわけではない。まず型を学び、自分のなかに蓄積してから崩していくのがNIGO流だ。
「型無しは、型を知らずにやること。型破りは、型を知ったうえで破ること。日本文化も10年以上学んでから応用していく。学びきるまでは表に出さないんです」
過去を学び、自分なりの表現へと変えていく。NIGOのものづくりにはその姿勢が通底している。では10年後のために、今新たに学び始めたものはあるのか。最後にそう問うと、「今はあまりない。日本文化が自分の最終地点という気がしています。知識はだいぶ蓄積されてきているので、あとはどのタイミングで、どの引き出しを開けるかですね」。
その引き出しから何が出てくるのか。NIGOのクリエイションは、まだ進化の途上にある。

ニゴー◎クリエイティブディレクター。1993年に「A BATHING APE」を立ち上げ、2010年に「HUMAN MADE」を始動。21年からフランスLVMH傘下の「KENZO」アーティスティックディレクターに。現在はファミリーマートやサイバーエージェントのクリエイティブディレクターも務める。


