Anthropic(アンソロピック)の「Claude Code」がソフトウェア開発に革命をもたらしたように、AIによって半導体設計に革命を起こそうとしている半導体設計スタートアップが数社存在する。仕様書の入力だけでAIが完全な半導体を設計できる時代は、もうすぐそこまで来ているのだろうか。Cognichipによる「AI Chip Intelligence(ACI)」の発表によって、私たちはその方向に大きく一歩踏み出した。
エージェンティックAIや大規模言語モデル(LLM)を使用する代わりに、Cognichipは独自のアプローチを採用し、物理法則に基づくAIモデルを開発して半導体設計の各工程を自動化した。詳細は、先に米カリフォルニア州サンタクララで開催される「AI Infra Summit」で発表された。
この新しいアプローチはどれほど優れているのだろうか。半導体メーカー、ルネサス エレクトロニクスのエンジニアリング部門バイスプレジデントであるマノハール・ボンメナは、「CognichipのACIは、現代の設計環境にAIを導入するための最も包括的なアプローチの1つであり、まさに『半導体の言葉を話す』システムだ」と述べている。初期の成果では、半導体設計が約100倍高速化され、低消費電力化、高性能化、および半導体コストの削減が実現している。
同社は、Mayfield Fund、Lux Capital、FPV Ventures、Seligman Ventures、SBIインベストメント、およびCandou Venturesから、累計で9300万ドル(約144億円)の資金を調達している。詳細を見ていこう。
Cognichip ACIフルスタック設計システム
現在、ほとんどの半導体設計AIツールは、物理レイアウトツールのような強化学習に基づいているか、膨大なテキストデータと比較的少量の半導体設計データでトレーニングされた大規模言語モデル(LLM)のラッパー(既存のシステムを包み込んで操作性を高めるプログラム)である。
半導体設計に特化してトレーニングされたモデルが登場していなかった理由の1つは、そのようなモデルのトレーニングに利用できるデータが不足しているためだ。半導体設計の詳細は極秘事項として厳重に守られているため、ニューラルネットワークを十分にトレーニングするのに必要な公開データが単に存在しない。Cognichipは戦略的な賭けに出て、自社の設計チームの経験と合成データに基づいて基盤モデルを構築し、半導体分野におけるデータ不足という課題に真っ向から取り組んだ。
LLMにエージェンティックAIを被せるよりも優れたソリューションが業界に必要だと確信した同社は、経験豊富なエンジニアを半導体設計プロジェクトに配属することで、データ問題を解決した。さらに、AIサイエンティストのチームを編成してAIモデルのトレーニング用合成データを作成し、このアプローチを補完した。
同社によると、この「物理法則を組み込んだ(physics-informed)」アプローチは、言語データでトレーニングされたモデルを使用するよりも、優れたコスト効率の高い結果をもたらすという。このアプローチは、Anthropicが「Wikipedia」ではなく「GitHub」などのソフトウェアリポジトリでClaude Codeモデルをトレーニングしたアプローチに似ている。



