経済・社会

2026.09.21 12:00

すべての企業が影響を受ける、AI冷戦の始まり

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2026年の今、AIとビジネスの将来を左右する決定は、取締役会や研究所の外側、つまり世界の政治権力が動く場で下されることが増えている。

この10年ほどの間に、戦略上の転換が起きてきた。世界各国の政府が、エネルギーや産業、防衛と並ぶ国家の重要インフラとしてAIを扱い始めたのである。

この転換は、あらゆる企業や組織に影響を及ぼす。データの安全をどう守るか、国際的に競争していく力をどこまで保てるか、技術を使うためにいくら払うことになるか。こうした問いの答えが、ブリュッセルやワシントン、北京で下される決定によって決まる度合いを増しているからだ。

では、2026年にAIとビジネス、そして私たちの生活を左右する地政学上の問題のうち、最も差し迫っているものは何か。そして、AIそのものは国際的な力の均衡をどう塗り替えつつあるのか。

重要な要素は3つある。1つは、各国がAI技術の国際取引と輸出に課すようになった管理。2つめは、刻々と変わり続けるAI規制の状況。3つめは、AI主権(AI sovereignty。AIの能力やインフラを他国に委ねず、自国の管理下に置くこと)をめぐる切実な問いである。

この3つが2026年以降の私たちのAI戦略にどう影響するのか、そして地政学の不確実性を前にして打たれ強さを高めるために何ができるのかを見ていこう。

輸出規制は半導体からAIモデルへ、企業は一夜で使用を絶たれる

2026年には、各国政府が競争上・地政学上の優位を作り出すために輸出管理を使うことが、当たり前になった。今年に入ってからも、米商務省産業安全保障局(BIS)が、エヌビディア製でAI処理に使われる最も強力なGPUをめぐる輸出規制を緩めたものの、数カ月のうちに方針を戻した。狙いは、中国のAI開発企業が自前のAIインフラを築くのに必要な半導体を手に入れられないようにし、この分野で米国が優位を保ち続けることにある。

こうした使われ方をしてきたのは、半導体だけではない。6月には、Anthropicがそれまでで最も強力なClaudeのモデルを公開した3日後に、米商務省が外国籍の利用者によるアクセスを一切禁じた。

この一件によって、輸出管理を国際政治の武器として使う動きが、今後はハードウェアと同じくらいソフトウェアにも及ぶことがはっきりした。

その影響は広い範囲に及ぶ。多くの企業が頼っているツールが、自分たちには口を挟む余地のない決定によって使えなくなることもありうるからだ。モデルは一夜にして使えなくなる可能性があり、重要な業務をそれに頼っている企業にとっては致命的な事態になりかねない。

EUの制裁金は米企業に1兆円超、米国は関税と制裁で応じる

規制も、地政学という盤上の駆け引きを構成する要素の1つだ。EUの規制当局は、AI革命の行方に自らの権限と影響力を及ぼそうとして、この2年間で米国のテック企業に70億ドル(約1兆900億円)を超える制裁金を科してきた。これに対しワシントンは、関税をちらつかせ、オンライン上の偽情報対策の取り組みに制裁を科すという形で応じた。そうした取り組みはネット上の言論の自由を検閲しようとするものだというのが、米国側の主張である。

他国頼みを断つ動きが広がり、国家支援のスパコンは44に増加

そして、こうした動きのすべては、AI主権という大きな問題に行き着く。国の大小を問わず、AIの能力とインフラを他国に頼るのではなく自国の管理下に置かなければならない、という意識が強まっている。スタンフォード大学の「AI Index 2026」によれば、その結果として、欧州と中央アジアで国が支援するAI用スーパーコンピューターのクラスター(多数の計算機をつないで1つの大きな計算資源として使う設備群)は、2018年の3カ所から44カ所に増えた。

同レポートはさらに、新たに策定された国家AI戦略の半数以上が新興国のものだったことも示している。AIの能力が国家を成り立たせる要件の1つとみなされ、国際的な影響力を築く上で欠かせないものと考えられるようになってきた、ということだ。

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翻訳=酒匂寛

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