カルチャー

2026.09.29 13:30

150億円ファンドで地域再生 アマン出身の起業家が仕掛ける新時代のまちづくり

岡 雄大|Staple 代表取締役/GOOD SOIL代表取締役

岡 雄大|Staple 代表取締役/GOOD SOIL代表取締役

Forbes JAPAN 2026年11月号は、文化の力で世界を駆ける「カルチャープレナー」たちを特集。文化やクリエイティブ領域の活動によって新ビジネスを展開し、豊かな世界を実現しようと試みる文化起業家を30人選出する企画で、今回で4回目となる。今年注目したのは、優れた作品や商品を生み出すだけでなく、流通や人材育成、地域との関係まで含め、文化が続いていくための基盤をつくろうとする実践だ。アニメやゲーム、工芸、食、地域開発など領域を越えて、文化を次の創造へと循環させる挑戦を紹介する。

ホテルを起点に人と資本を呼び込み、地域に新たな循環を生み出す岡雄大は、日本中の失われゆく土地の営みを未来へ残すべく奮闘する。


「友達や家族をつくるような感覚で、町と関係を築く。僕らがやっていることは、本当にそれに尽きる気がします」

岡雄大が率いるStapleは、現在、全国8地域でホテルを起点とした地域開発を手がけている。目指すのは、人口減少で失われゆく文化を未来につなぐこと。インバウンドや都市部から人やアイデアを呼び込み、その土地の営みや文化、人の力が再び循環し始める。そんな変化を各地で生み出そうとしている。

広島・瀬戸田では、港周辺に残る複数の古い建物を再生し、ホテルや飲食店、ワークスペースなどを面的に展開。マラソン大会や映画祭も手がけ、人が訪れ、滞在する理由を増やしている。山口・長門湯本では、廃業した老舗旅館を再生し、宿泊客が温泉街へ繰り出す流れを創出。北海道・函館では、ホテルを核とした大規模開発が進行中だ。

ただ、Stapleが「次はこの町」と狙いを定めることはほとんどない。金融機関や自治体、地元の人に呼ばれて足を運び、そこに一次産業を軸にした生活文化が残っているか、自然と人の営みが共存しているか、そして、未来をともにつくりたいと思える人がいるかを見る。「平たく言うと、『バイブス一緒だな』『友達になれそうだね』と思える人がいると、一気にスパークするんです」。

その先にあるのは、観光地をつくることではなく、その土地に根づく生活そのものを残すことだ。

「人口減少と都市化が進むと、固有の生活文化は均質なものへと置き換わっていく。それを逆転させ、その地域ならではの生活を取り戻したいんです」

経済資本、文化資本、自然資本を良いスパイラルに乗せ直す──。まず旅の目的地となるホテルをつくり、そこを中心に「徒歩20分の円」を描く。実際に歩きながら「ここに何があったらいいだろう」と町の未来を考える。ひとつの場所を真摯につくると、地元から「これもどう?」「一緒にやらない?」と声がかかり、「向こう10年分ぐらい」の仕事が自然と生まれるという。

効率だけを考えれば遠回りかもしれないが、その「蛇行」を許容するには、資本の辛抱強さが必要だと岡はいう。それを支えるのが5つの事業領域だ。

「僕らは収益源をすごく分散しているんです。不動産ファンド、デベロッパーとしての開発、設計・デザイン、ホテルや飲食店の運営、それから地域の祭りやイベント。大きく5つの領域があります」

通常は別会社が担う機能を束ね、それぞれに収益を生むことで、地域にかかわり続けることができる。

「友達になったらずっと友達でいるし、仲がいいときも悪いときも家族は家族。文化資本や社会資本が詰まった町や不動産を扱うなら、同じような関係性であるべきだと思うんです。仕事が終われば去るのではなく、かかわり続ける。それが地域からの信頼にもつながっていると思います」

次ページ > 非合理だけど美しいもの

文=松﨑美和子 写真=若原瑞昌

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事