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2026.09.25 10:45

3Dクローン「失敗できる患者」で変える、世界の医療教育|ミライズウェルメディカルグループ×MEDiDENT×日南

Forbes JAPAN 2026年11月号の第2特集は、事業共創プレイヤーに光を当てる「Xtrepreneur AWARD 2026」。4回目の今回は応募要件から大企業の参画を外した。これまで以上に多彩な顔ぶれから、6つの共創プロジェクトを選出した。組織のレガシー(資産)をかけ合わせ、一社単独では生み出せない大きなインパクトを創出する共創物語に迫る。

今回グランプリに輝いたのが、医工連携による3Dクローンを開発した「失敗できる患者」プロジェクトだ。質感も出血も人間そっくりな超精密3Dクローンモデルを作り出し、医療教育の国際標準を塗り替えにいく挑戦が動き出している。


「できない」を「できる」にする。未来を変えるのがトランスフォーメーション(X)である。最先端の工業技術を有するメーカーと組むことで、医療の「できない」を「できる」に変えていく「医療X」のトップランナーがいる。東京・南青山を中心に医療施設を展開するミライズウェルメディカルグループ(以下、ミライズ)、同社CEOの富田大介が代表を務める医療DXのMEDiDENT、そして試作製造など製品開発支援を手掛ける日南だ。

3社は2025年5月、米スタンフォード大学で、患者ごとの血管や皮膚の色合い・質感、部位の硬さまで再現する「3D CloneModel」のプロトタイプを発表した。最小積層ピッチ0.02mmの高精細3Dプリント技術で皮膚の色調や形状を精緻に表現し、世界の医療関係者を驚かせた。

現在は3Dクローンの切開時に模擬血液が流出する「バイオニック血管構造付きシート」を試作し、メスを入れた際の出血や抵抗感まで人体に近づける検証を進めている。目指すのは、患者に一切のリスクを負わせることなく、実践に近い手技を何度でも反復できる「失敗できる患者」だ。さらに体温の再現や手術データによる技能評価まで視野に入れ、模型を超えた医療教育基盤へ進化させようとしている。

なぜここまでのハイレベルな開発にこだわるのか。

その原点には、ミライズを率いる富田の徹底した探究心がある。

矯正歯科と顎変形症治療、二つの専門資格を持つ富田は、多くの難症例と向き合い、臨床の現場で「凄腕」と評されてきた人物だ。だが、その腕を誇ったことはない。むしろ、腕に依存する医療のあり方そのものを変えようとしてきた。患者の負担をできる限り抑えながら、治療の精度と再現性をいかに高めるか。富田は臨床現場で、この問いを一貫して追い続けてきた。

富田が語るのは、自分の技術ではなく、技術の「伝え方」のほうだ。「矯正も外科も、精度は計画と検証の積み重ねで上げられます。ただ、実際に組織に触れたときの硬さや手応えだけは、言葉やデータでは若い医療者に渡しきれない。その最後の部分を、どうすれば再現できるかたちで伝えられるのか。それをずっと考えてきました」

矯正歯科の道を選んだのも、その延長線上にある。「マイナスをゼロに戻すだけでなく、咬合や口腔機能の改善を通じて、患者さんが思い描く人生を叶えることを支える。矯正は未来志向の医療なのです」(富田)

富田は診療工程そのものを見直し、患者の負担軽減と治療の精度、医療者の技能向上を同時に追求してきた。18年5月、ミライズ矯正歯科南青山を開院。その後、総合歯科・口腔外科・再生医療へ診療体制を拡充し、コロナ禍以前からZoomを導入、VR/AR/MRの「XR」やソニーとの「空間再現ディスプレイ」導入も進めてきた。XRシフトで医療の「見える化」を先導してきたミライズだが、どれだけ精緻にできても越えられない壁があった。それが「触る」ことだ。切削時の抵抗、組織の滑り、出血といった触覚的な反応は画面やXRのなかでは再現できない。熟練医がもつ「手術時の指先の感触」を、どうすれば次世代へ再現可能なかたちで渡せるのか。その答えを、富田は医療の外に探すことになる。

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文=橋本卓典

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