職場でのAIツール利用を従業員に期待する管理職が増えるなか、管理職自身のAI利用が部下にどのような影響を及ぼしているかについては、当人たちが十分に認識していない可能性がある。Omni Calculatorによる2026年の調査は、AIを使って自らの業務をこなす管理職への警鐘となるはずだ。この調査では、AIを利用する管理職が、部下からの信頼や信認を大きく損なうリスクに直面していることが明らかになった。
管理職のAI利用が従業員に発するシグナル
2026年の調査は、医療、教育、金融、テクノロジーなど各業界で、現在雇用され上司の下で働く成人913人を対象に実施された。実施主体のOmni Calculatorは、専門家がレビューした3900種以上の計算ツールを提供するウェブ・モバイルプラットフォームで、上司がAIを使って業務を遂行することについて従業員がどう感じているかを解明しようとした。
驚くべきことではないが、従業員の68%は、上司からのAI支援によるメッセージは、AIを使わずに書かれたメッセージよりも「人間味に欠ける」と感じていた。管理職が気づいていないかもしれないのは、AIの利用が自らの能力評価にも影響するという点だ。
従業員の4割超(42%)が、AIに頼る上司を「能力が低い」と見ていると回答した。3分の1超(36%)は、上司のAI利用を知ったことで、その上司の判断への信頼が下がったと答えた。
「『人間味に欠ける』という反応も痛手かもしれないが、『能力が低い』と見なされることは管理職にとって懸念すべきだ。なぜなら、それはそもそも人々がその人に従う理由に関わるからだ」と、Omni Calculatorのリサーチライター、レイハネ・マンスーリ博士はメールで述べた。
AIを利用する管理職は、特にZ世代の部下からの信頼を失うリスクが高い。Z世代はAIに最も親しんだ世代であるにもかかわらず、管理職のAI利用に対して最も批判的なのだ。Z世代の労働者のうち76%が上司のAI支援コミュニケーションを「人間味に欠ける」と見なし、58%がAIを使う上司を「能力が低い」と捉え、51%がAIを使ったという理由で上司への信頼を下げている。
「Z世代はChatGPTなどを十分に使いこなしており、何ができて何ができないかを熟知している。だからAIが書いた戦略メモや人事評価は、感心すべきものとして受け取られない。むしろ『自分でもプロンプトを打てば書けた』と受け止められる」とマンスーリは指摘する。「年配の労働者なら上司のAI利用を先進的だと解釈するかもしれないが、Z世代はむしろ『手を抜いている』と読み取りやすい」
Omni Calculatorが労働者921人を対象に行った別の2026年の調査でも、同僚のAI利用に対する従業員の見方について同様の結果が得られている。その調査によれば、従業員の51%は、洗練されたAI生成コンテンツよりも、同僚が自分で書いたと分かる多少ぎこちないメールを受け取る方を好んでいる。同僚から受け取ったメールがAI支援によるものだと感じたとき、30%は送り主に対して「配慮に欠ける」と非難し、19%はAIを使わずに書かれた場合と比べて書き手への敬意を下げると回答した。
Z世代の労働者は同僚のAI利用に対しても最も批判的だ。Z世代のうち61%が個人的なコミュニケーションを好むと答え、31%がAI生成のメールを送る同僚への敬意を下げると回答している。Z世代がAIで書かれたメールを同僚の「配慮不足」に結びつける割合は、X世代の2倍(44%対22%)に達する。
全体として、従業員は同僚よりも上司のAI利用に対してより批判的であるようだ。同僚がAIで書いたメールを送った場合に敬意を失うと答えたのは19%だったのに対し、上司のAI利用は51%の従業員の信頼低下を招いた。
「チームが上司に権限を委ねるのは、この人には難しい判断を下すだけの判断力があるという信念に基づいている」とマンスーリは述べる。「意思決定や分析がチャットボットから得られたものであるように見えると、その信念は打撃を受け、部下は上司が実際に何をもたらしているのか(その存在意義)を疑問に思い始める」
従業員は上司のAI利用を見抜けると考えている
調査対象の従業員のうち52%は、上司のメッセージがAIで書かれたものかどうか判別できると答えた。40%は「たいてい」または「時々」上司のAI支援コミュニケーションを見抜けると答え、12%は「常に」上司のAI利用が分かると回答した。
管理職によるAI利用は当たり前になりつつある。従業員の半数超(52%)が、過去1年間に上司からAI支援による回答、決定、フィードバックを受け取ったことがあると答えている。このうち12%は、上司からAI生成のコミュニケーションを週に複数回受け取ると回答した。
これらの結果は、管理職本人のAI利用に関する自己申告とも一致しており、管理職の利用は従業員の利用を上回っている。仕事上のコミュニケーションを書く、書き直す、磨き上げるためにAIツールを1日に複数回使うと答えた労働者は22%にとどまる一方、管理職の36%は同程度の頻度でAIを使っていることを認めている。
従業員はどうやって上司がコミュニケーションにAIを使ったと判断しているのか。最大の手がかりは、労働者の45%によれば、メッセージが上司本人の語り口に聞こえないことだという。
労働者の4割は、コミュニケーションの汎用的あるいはロボット的な口調から上司のAI利用を見抜けると答えた。曖昧または当たり前のアドバイスが含まれている場合(16%)や、人間にしか分からない文脈が抜け落ちている場合(16%)にも、上司のメールをAIによるものと判断する。過剰に長いメールもAI利用のサインとなり得る。労働者の15%は、メールが長すぎる場合、上司がAIを使ったと推測すると答えた。
管理職は間違った業務にAIを使っているのか
管理職はさまざまな業務にAIを活用している。AIへの外注として最も多かったのはプロジェクトやワークフローの計画で、従業員の35%が上司がそれにAIを使っていると答えた。また32%は、日々のチャットメッセージやメールにAIを使っていると回答した。
一部の管理職は、AIを直接的な人事管理にも用いている。調査対象の従業員のうち27%が、上司が人事評価やフィードバックの作成にAIを使ったと答えた。また、業務関連の質問への回答(20%)、対立や機微な問題の解決(13%)、コーチングやキャリアアドバイスの提供(12%)にもAIを利用した上司がいると報告されている。
管理職のAI利用は戦略的意思決定の領域にまで及んでいる。従業員の4分の1(26%)は、上司が戦略や目標の設定にAIを用いたと答え、18%は職場の意思決定にAIを頼ったと回答した。
管理職はAI利用を効率的と見なしているかもしれないが、労働者はしばしば同じ判断を「責任回避」と受け止める。従業員の半数(50%)が、上司は本来自ら対処すべきだと考える決定や質問への回答にAIを使ったことがあると答えている。
「ワークフローの計画にAIを使うことはロジスティクス上の問題であり、手順を整理するツールはそこに適している」とマンスーリは述べた。「しかし、人事評価を書いたり対立を解決したりするために使うのは別の話だ。そうしたものは管理職が責任を負うべき判断であり、それを外部委託することは、自分の将来を形作る人物が、自分で十分に考え抜こうとしなかったと従業員に伝えることになる」
マンスーリの見方では、「プロジェクトの計画や日常のメッセージは、人々が最初にAIに手を伸ばす自然な領域だ」が、人事評価の作成や戦略の設定といった業務は「管理職の業務のなかで最も委任すべきでないものに含まれる」という。管理職への彼女の助言は、「AIを補助業務にとどめること。四半期の要約や下書きの作成はAIに任せてもよいが、評価そのものやそれを伝える対話は、管理職自身から発せられるべきだ」というものだ。



