経営・戦略

2026.09.18 10:04

プロダクトは「くさび」、データこそがビジネスの本質だ

Adobe Stock

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私は長年、アーリーステージのソフトウェア企業を精査してきた。最初は投資家として、どの案件を投資委員会に上げるべきかを判断し、現在は創業者の資金調達を支援するアドバイザーとしてだ。

その過程のどこかで、私は創業者に「あなたのプロダクトは何をするのか」と尋ねるのをやめ、別の問いを投げかけるようになった。「そのプロダクトを動かすことで、他の誰にも見えない何が見えるようになるのか」だ。

堀(モート)はソフトウェアではない

この問いは、見かけ以上に重要である。ほとんどのバーティカルソフトウェアは、他のソフトウェアと同じように評価される。投資家はシート数、ネット・レベニュー・リテンション、そして一般的なSaaS(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)の指標を見る。しかし私の見方では、カテゴリーから想定される価値をはるかに上回る企業は、プロダクトそのものによって価値を持つことはまれだ。価値の源泉は、プロダクトが稼働する過程で静かに蓄積していくもの、すなわち、他社が同じ方法では構築できない独自データの集合体にある。

トレリス(Trellis)はその明確な例だと思う。同社は訴訟弁護士向けのリサーチツールを構築し、州の公判裁判所の記録、訴訟日程(ドケット)の履歴、提出書面、そして複数の事件における相手方弁護士の行動パターンにアクセスできるようにした。州裁判所には、連邦裁判所の電子記録公開システム(PACER)に相当する一元的な仕組みが存在しない。数千に及ぶ郡が、共通の標準規格を持たずに、それぞれ独自のシステムを運用しているからだ。

トレリスは、45州、3000以上の裁判所にまたがるデータを集約し、構造化するという地道な作業を行った。それこそが堀である。再現が本当に難しいのは、ソフトウェアが必ずしも巧妙だからではない。誰も、何年もかけてその華やかではない集約作業をしてこなかったからだ。

結果の大きさを実際に決定するのは、ここからである。そのデータが元々の訴訟弁護士向けサブスクリプションを支えるだけなら、市場規模は存在する訴訟弁護士の数に制約される。しかし同じ構造化された裁判データは、訴訟リスクの価格設定を行う保険会社、案件を審査する訴訟ファイナンス事業者、判決結果を予測しようとする企業にとって、実際に極めて高い価値を持つ。

プロダクトが事業のすべてだったわけではない。プロダクトはデータ資産を構築する正当性を与える楔だったのであり、そのデータ資産の価値は、プロダクトが当初誰のためにつくられたのかとはまったく別次元の話である。

AIはデータの堀を消し去らない

いま議論が向かっているところを考えれば、この点は率直に述べる価値がある。多くの人がこれを「SaaSの終焉」と呼び、完成した仕事を販売するAIエージェントが、シート単位で販売されるソフトウェアに取って代わると主張している。私はその議論は標的を誤っていると思う。脆弱なのはインターフェースであって、基盤となる資産ではない。そしてこの2つは常に混同されている。

むしろ、この潮流は先に述べた点を弱めるのではなく、いっそう強める。インターフェースがコモディティ化し、どの基盤モデル上でも安価に立ち上げられ、潤沢な資金を持つ競合が数カ月で模倣できるようになったとき、その下にあるデータだけが、なおコピーできないものとして残る。

背後に独自データを持たないAIエージェントは、薄いSaaSダッシュボードとまったく同じように代替可能である。SaaSの終焉を生き残る企業は、最良のエージェントを持つ企業ではない。エージェントが実際に正しく機能するために必要なデータを保有している企業である。

コスター(CoStar)は、同じパターンが完全に成熟した例だと私は見ている。1987年に創業した同社の当初のプロダクトは、オフィスビルを追跡し、その情報をフロッピーディスクで顧客に提供するものだった。同社の優位性を実際に築いたのは、より地味な作業である。研究員が毎年現地に派遣され、建物を直接調査し、写真を撮影した。データベースが、掲載情報の主張ではなく、現場で実際に起きていることを反映するようにするためだ。

約40年後のいまも、アナリストはその結果として生まれた事業を、掲載情報の会社というより、階層化されたデータとワークフローのプラットフォームだと評している。トラフィックだけで勝つサイトよりも代替されにくいのは、不動産の専門家がその基盤データを中心に日々のワークフローを組み立ててきたからだ。プロダクトは何世代も前に変化した。しかしデータはその間ずっと複利的に蓄積され、いまでは出発点だったフロッピーディスク製品をはるかに超えるものを支えている。

自分が本当に構築しているものを知る

私はアーリーステージ企業を見るとき、このことを常に考えている。バーティカルソフトウェアの創業者も、その答えを出せる段階になるずっと前から、同じ問いを自らに投げかけるべきだ。自社のプロダクトは毎日、他の誰も観察できない何を観察しているのか。その観察は、断片化した裁判所記録を集約することが難しいのと同じように、構造的に模倣困難なのか。それとも、潤沢な資金を持つ競合が本気になれば1年で再現できるものなのか。そして決定的に重要なのは、そのデータに、自社のプロダクトを聞いたこともなく、今後も知ることのない買い手にとっての価値があるのか、という点である。

最後の問いへの答えが「ノー」なら、おそらく優れたソフトウェア事業を持っているということだ。それは十分に良い結果である。答えが「イエス」なら、あなたはソフトウェアを超えるものを持っている可能性がある。その場合、現在の顧客が求める機能を追加するだけでなく、そのデータ資産を守り、拡張することを中心にロードマップを組む価値がある。この2つの目標は、創業者が想像する以上に同じエンジニアリング時間を奪い合う。そして多くのチームは、声の大きい顧客要望を優先する。

これを正しく理解している企業は、それを大々的に宣言しない。狭い顧客層に向けて焦点を絞ったプロダクトを出し続け、その下でデータを静かに複利的に蓄積させる。そしてある日、そのデータは、最初のツールをつくった誰もが想像していた以上の価値を持つようになる。

私が最もよく目にする過ちは、創業者がデータ収集に失敗することではない。すでに自分たちが保有しているデータが、それを収集するためにつくったプロダクトよりも、まったく別の買い手にとって高い価値を持つのではないかと、立ち止まって問わないことだ。それは、資金調達の場で、自分たち以上にその問題を考えてきた投資家の前で答えを迫られるずっと前に、しっかり答えておくべき問いである。

forbes.com 原文

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