リーダーシップ

2026.09.18 09:59

なぜ大企業は「データの基本」を押さえられないのか

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失敗を望んでAIエージェントを導入する者はいない。しかし、企業のAI競争が3年目に入った今、その失敗が大規模に発生している。

MITメディアラボの「プロジェクトNANDA(Project NANDA)」によると、企業が生成AIに投じた資金は総額300億ドル(約4兆6500億円)から400億ドル(約6兆2000億円)に上る。しかし、重要なデータの多くは依然として、メインフレームやレガシーデータベース、何年も前に誰かが作成したスプレッドシート、PDF、そして相互連携を想定して設計されていないアプリケーションの中に閉じ込められている。3つの事業部門に「アクティブ顧客」の定義を尋ねれば、3通りの異なる答えが返ってくるだろう。データの所有権が明確であることはめったになく、特定のフィールドがなぜそのような形式になっているのかを理解している唯一の担当者は、数年後に定年退職を控えている。

こうした状況は、何も新しいことではない。新しいのは、人間とは異なり、AIはそうした不備を大目に見てはくれないという点だ。

同じ2025年のMITレポートは、生成AIのパイロットのうち実際に測定可能な価値を生み出しているのは約5%にすぎないと明らかにした。ほぼすべてのケースで原因は、脆弱なデータワークフロー、欠落したコンテキスト、そしてビジネスの実運用に沿って構築されていないシステムに帰着する。

アナリストはこれまで、不完全なデータを何とか処理してきた。誰かが数値の異常に気づき、問題が発生する前に修正してきた。しかし、AIエージェントにはそのような直感はない。AIエージェントは請求の承認、案件の振り分け、人々の生活に影響を与える意思決定を行うが、その根底にあるデータが不完全である場合、自信満々に誤った判断を下す。AIが脆弱なデータ基盤を修復することはない。それどころか、その欠陥がもたらす影響を拡大させることになる。

データの取り込みこそが今なお最大の難関

従来のETL(データの抽出・変換・書き出し)は、より単純な世界を想定して構築されていた。データソースが文書化され安定している場合は機能するが、そうでない場合は破綻する。例えば、フォーマットが予告なく変更されたり、フィールド名が他社のシステムに由来していたりして、自社の誰もそれを制御できないような場合だ。

「最も難しい作業は統合の前段階で発生する。レガシーシステムや外部システムからデータを取り出し、ビジネスで使える形にすることだ」と、アデプティア(Adeptia)のチーフ・プロダクト・オフィサー(CPO)であるティム・ボンドは語る。「独自フォーマット、文書化されていないフィールド、誰が書いたのか思い出せないマクロ入りのスプレッドシート、余白に手書きメモが残るPDF。ある雇用主の加入者ファイルをクレンジングするだけで、いまだに多くの現場で15〜20時間かかっている」

退職年金プランの導入プロセスを見れば、この問題がいかに急速に収益上の問題へと発展するかが分かる。プロバイダーを変更するということは、以前の記録管理者、給与システム、HRIS(人事情報システム)プラットフォーム、そして時にはブローカーからデータを取り出し、本番稼働前にすべての不一致を解消することを意味する。5000万ドル(約77億5000万円)規模のプランの場合、稼働が1カ月遅れるごとに、約4万ドル(約620万円)の手数料収入が先送りされることになる。

規制の厳しい業界ほどリスクは大きい

そこではリスクがコンプライアンスリスク、法的リスク、そしてより大きな金銭的影響にまで及ぶ。業界アナリストは、企業データの80〜90%が非構造化データだと推定する。団体健康保険はその典型例である。

加入者ファイルはセル結合、6つほどのタブ、カスタムマクロ、そして二度と同じレンダリングにならないPDFとともに届く。扶養家族の資格が誤ってマッピングされたり、発効日が抜け落ちたりすれば、それは請求の却下、コンプライアンス違反フラグ、あるいは支払われるべきでなかった小切手を意味する。

保険会社の移行作業でも、同様の弱点が浮き彫りになる。移行には通常60〜90日を要し、その大半がマッピングとテストに費やされる。なぜなら、ある保険会社がフィールドを「EE_DOB」と呼ぶ一方で、別の保険会社は「BirthDate」と呼び、過去の請求データが同じ構造になっていることはほとんどないからだ。すべての不一致は手作業で調整される。AIがより多くのシステムから、より頻繁にデータを取得するようになるにつれ、この負債の解消にかかるコストはさらに膨らんでいく。

「リアルタイム」も信頼がなければ意味がない

「誰もがリアルタイムデータを今すぐに欲しがるが、そのデータがどこから来たのか、あるいはそのデータに基づいた自律的な判断を信頼できるのかが分からなければ、ほとんど価値はない」とボンドは付け加える。「エージェントは、データにアクセスできるか、データが最新か、2つのデータが食い違ったときにどちらのシステムを優先するか、そしてそもそもその意思決定を下す権限が自身にあるのかを知る必要がある。そのために、統治されたデータ辞書や真のセマンティックレイヤーが必要となるのだ。共通の定義がなければ、エージェントは渡されたクエリに組み込まれた不確かな定義のまま動作してしまう」

品質チェックは、データがシステムに入ってきた瞬間に開始されなければならない。プロセスが実行されたこと、出力が期待通りの形式であること、そして数値がビジネスの論理に整合していることを確認する必要がある。データ系統(データリネージ)も重要だ。エージェントは、不確実な回答にフラグを立てたり、処理を人間に引き継いだりするために、データがどこから来て、どれほど新しいものであるかを十分に把握できなければならない。

これは周辺的な懸念ではない。筆者の会社であるプロスパー・インサイト&アナリティクス(Prosper Insights & Analytics)の最近の調査によれば、経営幹部と事業主のほぼ40%がAIに関する最大の懸念事項の1つとして「人間による監督の欠如」を挙げており、これは同じ回答をした一般消費者の40.4%とほぼ同水準である。監督への懸念は、小切手にサインをする側の人々の間で最も強い。

ETLをAI時代に対応させる

企業に必要なのは、さらなるポイントソリューションではない。ガバナンスと制御を犠牲にせずに現実世界の多様性を扱える、統合基盤である。

インテリジェントETLとは、AIによるパイプライン設計と業界知識の組み込みを、決定論的な実行と組み合わせることを意味する。AIが得意なこと、すなわちスキーマ検出、フィールドマッピング、検証の高速化はAIに任せる。ワークフローは予測可能に保ち、何が起きたかを追跡・再現・説明できるようにする。

前述のプロスパー・インサイト&アナリティクスの調査によると、完全に自律的なシステムに意思決定を委ねることが優れたアイデアだと考えているのは、経営幹部やビジネスオーナーの間でもわずか33%強にとどまる。また、約3分の1は明確に否定し、残りの3分の1は確信が持てないと回答している。信頼は、プロンプトの改善によって得られるものではない。その根底にあるデータに確かな保証が持てるときに初めて得られるものだ。

これらはすべて、一度限りの対策で済むものではない。ビジネスの変化に伴い、継続的な所有権の確立、可観測性(オブザーバビリティ)、系統の管理、ガバナンス、および定義の維持が必要となる。新たなユースケースが登場するたびに、データ基盤が試される。堅牢なシステムは、同じ修正を繰り返すことなく、調整を行うたびに改善されていく。

まず何から始めるべきか。自動化を導入する前に定義について合意形成を図ること、問題が発生した後ではなくデータ取り込み時に入力品質をチェックすること、そしてエージェントがいつ処理を止めて人間に確認すべきかを判断できるほど正確に、データ系統を把握することだ。基本を正しく理解している企業は、導入をより迅速に行い、より早く収益を認識し、より長く顧客を維持することができる。

forbes.com 原文

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