経営・戦略

2026.09.18 09:53

不確実な状況下の事業開発、トレーディングから学べること

Adobe Stock

Adobe Stock

トレーディングにおいて、確実なことなど滅多にない。不完全な情報、変化し続ける状況、そして決して完全にはコントロールできない結果の中で、意思決定を下さなければならない。時間の経過とともに、私はこれと全く同じ現実が事業開発(ビジネスデベロップメント)にも当てはまることに気づいた。

成約間近に見えた見込み客が、突如として姿を消す。取るに足らないと思われた提携が、大きな変革をもたらす。有望に思えた案件に何週間も注力したものの、成果が出ないこともある。

したがって目標は、不確実性を排除することではない。不確実性があっても高い成果を出せるプロセスを構築することだ。

ポートフォリオマネージャーおよびトレーダーとしての私の仕事を通じて、いくつかの原則が確固たるものとなった。それらの原則は、市場から事業開発へと驚くほど見事に置き換えることができる。

予測ではなく、確率で考える

事業開発において最も陥りやすい過ちの一つは、相手の関心を頭の中で「確実なもの」に変換してしまうことだ。

前向きな商談は「契約予定」となり、口頭での合意は「売上見込み」となる。そして、有望な紹介案件は、実際には何も起きていないにもかかわらず「成約済み」のように扱われてしまう。

市場は、そのような甘い考えをすぐに容赦なく罰する。事業開発における罰はもっと遅れてやってくるかもしれないが、その原則は同じだ。

「この案件は成約するか?」と問いかけるのではなく、「今日時点で把握している情報に基づくと、この案件が進展する確率はどのくらいか?」と問いかける方が賢明であると私は考えている。

このわずかな意識の変化が、より良い意思決定を促す。相手の反応の速さ、緊急度、意思決定権の有無、予算、社内の合意形成、そして次の具体的なアクションといった、客観的に観察可能なシグナルに基づいて案件を評価できるようになるからだ。

パイプラインが示すべきは「可能性」であり、「約束」ではない。

資本を守るように、時間を守る

資本には限りがある。注意力も同じだ。

トレーディングにおける最も重要な規律の一つは、リソースを「どこに」配分するかだけでなく、「どれだけ」配分するかを決めることだ。同じ考え方が事業開発にも当てはまる。

すべての見込み客に同じだけの時間を割く価値があるわけではない。ある相手が軽い関心を示しつつも、具体的な次のステップに進むことを何度も避ける場合、その案件に多大なリソースを投入し続けることは、高くつく可能性がある。そのコストは、フォローアップに費やした時間だけではない。その時間に進めることができたはずの、他の案件という機会損失も含まれるのだ。

私は、時間配分を「ポジションサイジング(投資規模の決定)」とほぼ同じように考えるようにしている。

相手の関与が深く、確信度の高い案件には、より多くの時間を費やすべきだ。一方で、初期段階の案件や不確実な案件に対しては、追加の情報が得られるまで投資を小さく抑えるべきである。

これは、見込み客をあまりにも早く見捨てるという意味ではない。確証が得られるにつれて、コミットメントを段階的に増やしていくべきだということだ。

アップサイドを追い求める前に、ダウンサイドを定義する

事業開発は、どうしてもアップサイド(売上、パートナーシップ、販売網、拡大、成長など)に目を奪われがちだ。

しかし、最も重要な問いの一部は、機会がうまくいかなかった場合に何が起きるかに関わる。

その案件を追いかけるために、何時間を費やす覚悟があるか。どのようなリソースが必要になるか。後から覆すのが困難な譲歩をしていないか。特定の顧客、パートナー、またはチャネルに依存しすぎていないか。

ダウンサイドを考慮することは、組織の野心を削ぐものではない。むしろ私の経験上、境界線が明確になるため、野心的な意思決定を下しやすくなる。

大きな案件に着手する前に、時間、資金、業務上の複雑さ、そして評判において、何をリスクにさらす用意があるかを確定させる。

優れた案件とは、魅力的なアップサイドをもたらす一方で、万が一好ましくない結果に終わったとしても、組織に壊滅的な打撃を与えないものであるべきだ。

案件に感情移入するのを避ける

トレーディングにおいて、現実に起きていることの評価をやめ、「こうなってほしい」という自身の希望を擁護し始めたとき、事態は危険なものとなる。

事業開発でも、これと全く同じ問題が起こり得る。

いったん特定の関係に多大な時間を投資してしまうと、そこから手を引くことが難しくなる。これまでの努力を無駄にしたくないという思いから、遅延を正当化し、危険信号を無視し、あるいはさらに多くのリソースを配分してしまう。

しかし、過去に費やした努力は、見込みの薄い案件を追いかけ続ける理由にはならない。

私は、重要な案件については定期的に、初めてその案件を目にするかのように評価し直すことが有益だと考えている。「今日得られている情報を知った上で、私は今でもこの案件を同じ熱量で追いかけるだろうか」と。

もし答えが「ノー」であれば、軌道修正が必要だ。

案件のポートフォリオを構築する

おそらく、最も重要な教訓は「分散」だ。これは必ずしも投資の意味だけでなく、組織が成長にアプローチする方法における分散を指す。

単一の見込み客、一社だけの戦略的パートナー、あるいは一つの販売チャネルに過度に依存することは、脆弱性を生み出す。成長をもたらす独立した経路が複数存在して初めて、事業開発はより強固なものとなる。

それは、大規模で戦略的な案件を開拓する一方で、より小規模な提携を進め、既存顧客との関係を強化し、インバウンド需要に向けた新たなチャネルを創出することを意味するかもしれない。

目的は、あらゆる案件を手当たり次第に追いかけることではない。すべての成否が、たった一つの結果に依存するような成長戦略を構築しないようにすることだ。

事業開発は「関係性の構築」を重視する分野として描かれることが多く、確かに関係性が重要であることは間違いない。しかし、そうした関係性の土台にあるのは「意思決定プロセス」だ。

私がこれまで見てきた極めて優秀な実務家は、単に案件を創出するのが上手なだけではない。彼らは案件を的確に評価し、リソースを賢く配分し、そして客観的な状況が変わったときには、きっぱりと手を引くことができるのだ。

あらゆる結果をコントロールすることはできない。しかし、結果が出る前に下す「意思決定の質」をコントロールすることはできる。


Forbes Business Development Councilは、営業および事業開発の幹部を対象とした招待制コミュニティである。入会要件を満たしているか確認する


forbes.com 原文

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事