IFA 2026:AIは身体を、ハードウェアは頭脳を獲得する
今週、IFAベルリンが開幕するにあたり、ある避けては通れない疑問が浮かび上がってくる。大手家電メーカーは、私たちが望むように、人間と同じように家の中でAIに「家事をこなさせる」ことが本当にできるのだろうか。
数字を見る限り、業界はそれが大規模に実現すると見込んでいる。
MarketsandMarketsは、世界のスマートホーム市場を今年は約2307億6000万ドル(約35兆9000億円)と推定し、2032年までに4502億ドル(約70兆1000億円)に達すると予測している。欧州だけでも、2030年までに約247億4000万ドル(約3兆8500億円)から361億2000万ドル(約5兆6200億円)に成長する見込みだ。変化しているのは、業界が「スマート」という言葉に期待する意味である。
IEEE(電気電子学会)の最近のグローバル調査によると、技術者の96%が、人間のわずかな監視だけでタスクを実行できるシステムであるエージェンティックAI(自律型AI)が2026年にかけて加速し続けると予想しており、半数以上が1年以内に日常の家事のスケジュール管理をAIが引き受けるようになると予測している。
これらのデータを総合すると、一つのパターンが浮かび上がる。スマートホームは「制御」から「協調」へと移行しつつある。つまり、リモートでスイッチを切り替えるアプリから、何を行うべきかをシステム自体が判断するシステムへの移行だ。この変化によって、どのプレイヤーが勝者となるかが変わってくる。
地味だが強力な優位性
長年、ソフトウェアがメディアを席巻したように、AIネイティブの企業が物理的な世界を急速に、そして外部から席巻し、既存企業は追いつくのに必死になるだろうと想定されていた。しかし、世界最大級の家電メーカーに成長した中国企業のハイアール(Haier)は、それとは異なる、より直感に反することが起きていることを示唆している。
ハイアール・スマートホーム(Haier Smart Home)の2025年の世界売上高は約380億ユーロに達し、約200の市場に進出、10億世帯以上の顧客を抱えている。これはまさに家電メーカーのプロフィールだ。しかし、欧州CEOのニール・タンストール(Neil Tunstall)は、次のフェーズは何かの販売数を増やすことではないと主張する。「それらの製品を取り巻くより大きな価値を創造し、時間をかけて人々の信頼を獲得することです」と彼は言う。
この再定義は、家庭でAIを展開することを本当に難しくしている要素を浮き彫りにする。それはAIモデルそのものではなく、その下にあるすべて——10年分の洗濯サイクルに耐えるセンサー、大量生産で数セント単位に収めた組込みコンピューティング、サプライチェーンとサービス網、火曜日の午後11時に人が実際にどう食洗機を使うかについて蓄積された知見——である。AIネイティブの新興企業はこれらをゼロから構築せねばならない。ハイアールにはすでにそれがある。あとはそれに思考を教え込むだけだ。
タンストールはこれを「3層の賭け」と呼んでいる。製品におけるインテリジェンス、エコシステム全体におけるインテリジェンス、そして研究開発からカスタマーケアに至るバリューチェーン全体で機能するAIだ。ハイアールは5年間で約130億ユーロをこれに投じる計画である。地味な投資ではあるが、より持続的なものとなる可能性が高い。
気にならなくなるインテリジェンス
同社の洗濯機「Vision 15」を例に挙げてみよう。この製品は、内蔵カメラと9つのセンサーを使用して、生地の種類、バランス、水温、泡立ち、衣類が絡まっていないかなど、投入された洗濯物の状態を読み取る。そして、洗剤の量、ドラムの動き、サイクル設定を自動で調整する。
「価値は、カメラやアルゴリズムそのものにあるのではありません」とタンストールは言う。価値があるのは、より適切な衣類ケア、水と洗剤のより精密な使用、そしてミスの減少である。AIが意味を持つのは、その技術が日常の体験の中に「ほとんど消え去る」ときだと彼は付け加える。
これは、より多くのダッシュボード、より多くの通知、より多くの注意を引くアプリといった、逆の本能に基づいて構築されてきた過去10年間のスマートホーム・マーケティングに対する、有益な軌道修正である。タンストールが描くインテリジェンスとは、ユーザーが決断を下す必要をなくすことで、存在すら気にならなくなるものだ。
新たな接続性はオーケストレーションである
現在、より難しい問題は家電をオンラインにつなぐことではない。それは何年も前に誰もが解決したことだ。難しいのは、協調作業の負担を消費者に押し戻すことなく、家電同士を連携させることである。ハイアールの答えは、ハイアール、キャンディ(Candy)、フーバー(Hoover)のデバイスを接続するプラットフォーム「hOn」だ。欧州でのアクティブユーザー数は前年比約40%増の1200万人以上に成長している。
エネルギー管理は最も明確な検証事例だ。各家庭にすべての家電製品の消費電力を監視させるのではなく、インテリジェントなシステムが、リアルタイムのエネルギー供給状況と家庭の優先順位に合わせ、洗濯や冷却などの稼働タイミングを静かにコントロールする。「その恩恵は単なるリモートコントロールではありません。人々の生活を複雑にすることなく、よりインテリジェントで持続可能なエネルギー利用を実現することです」とタンストールは指摘する。勝利とは、チェックすべき新しい画面が増えることではなく、考えるべきことが一つ減ることなのだ。
かつてはロボティクスとは無縁だった見本市で、洗濯機や冷蔵庫の隣にロボットが姿を現し始めたのもそのためだ。ハイアールはすでに、ヒューマノイドロボットや清掃ロボット、コンパニオンロボット、そして身体的支援のための外骨格を展開している。タンストールの整理はシンプルだ。AIはシステムに環境を解釈させ、ロボティクスはそのインテリジェンスが環境内で行動することを可能にする。
AIが意味を持つためにはハードウェアに入り込む必要があるというこの考え方は、投資データにも表れている。MarketsandMarketsは、より狭義の「フィジカルAI(物理的AI)」セグメントの市場規模を今年は15億ドル(約2340億円)とし、2032年までに年率約47%で成長して152億4000万ドル(約2兆3700億円)に達すると予測している。バークレイズ(Barclays)の調査レポート「AI Gets Physical」では、現在のヒューマノイドロボット市場を20億ドル(約3110億円)から30億ドル(約4670億円)と評価し、10年以内に400億ドル(約6兆2300億円)に達する余地があると指摘している。これらはまだ家電分野では、少なくとも大規模には起きていない。しかし、それはハイアールが製品レベルで乗っているのと同じ波である。ソフトウェアは動くことを学び、ハードウェアは考えることを学んでいる。
より多くの創造、より多くの可能性、そしてチャンピオンの舞台へ
このビジョンは、イノベーションを通じて日々の暮らしをよりシンプルで効率的にし、人々にさらなる可能性をもたらすという、ハイアールのより広範なマニフェスト「More Creation, More Possibilities(より多くの創造、より多くの可能性)」を反映したものだ。IFA 2026において、同社は「Home of Intelligent Possibilities(インテリジェントな可能性の家)」というスローガンのもと、接続された家電が状況を感知し、文脈を理解し、習慣を学習し、適応する様子を披露している。これにより、家は単なるデバイスの集合体から、バックグラウンドで静かに機能する協調システムへと変貌を遂げる。
この同じ野心は、リビングルームを超えて広がっている。2027/2028シーズンから2030/2031シーズンまで、ハイアールはUEFAチャンピオンズリーグのグローバルパートナーとなり、同社のグローバルスポーツ戦略と「Play with the Number Ones」プラットフォームにおける次の大きな一歩を踏み出す。このパートナーシップは、ピッチ上での卓越性の追求と、パフォーマンス、イノベーション、そしてより良い日常体験に焦点を当てるブランド姿勢を結びつけるものであり、王者の精神を消費者の日常生活により身近に届ける注目度の高い方法となる。
まだ誰も合格していない真のテスト
これらすべてが何かを保証するわけではない。スマートホーム企業には、シンプルさを約束しながらその逆を提供してきた長い歴史がある。タンストールは、単に便利なエコシステム(多くの製品に一つのインターフェースを提供するもの)と、真に革新的なエコシステム(「文脈を理解し、リソースを協調させ、適切に行動しながらも、ユーザーがコントロールできるようにするもの」)との間に、明確な一線を画している。この境界線は双方向で維持されなければならないと彼は主張する。「インテリジェントなホームは、人間のコントロールと自律性を高めるべきであり、それを低下させるべきではない」
業界はどのモデルが勝利するかをまだ決定していない。しかし、市場データと、ハイアールがどこに資金を投じているかというタンストール自身の説明を照らし合わせると、一つの事実を無視することは困難だ。すなわち、次世代の覇権を握るテクノロジー企業は、一見するとAI企業には全く見えないかもしれないということだ。その中には、ハードウェアに頭脳を与える方法を解き明かし、それを隠しておく規律を備えた、今と変わらぬ家電メーカーの姿をした企業が含まれているかもしれない。



