5%という数字との不都合な比較
現在、S&P500の構成銘柄は平均して予想収益の約19倍で取引されており、これは5%強の益回りに相当する。私はこれを国債の利回りと機械的に比較するつもりはない。債券は固定されたリターンを支払うだけだが、優良なビジネスは収益を伸ばし、時間とともにその価値を大きく高めることができるからだ。しかし、債券が業績の下方修正を発表したり、買収に過剰な資金を投じたり、競争優位性が従来の見立てよりも小さかったと突然気づいたりすることもない。
編注:益回りは、1株当たり利益を株価で割った比率で、株価収益率(PER。株価 ÷ 1株当たり利益)の逆数にあたる。株価に対して企業が1年間にどれだけの利益を上げているかを示す。株価が予想利益の19倍であれば、益回りはその逆数の約5.3%となる。PERが上がると益回りは下がり、PERが下がると益回りは上がるという反対向きの動きをするのもこの関係から来ている
現在のバリュエーションの水準は、投資家が国債市場が提供する利回りをわずかに上回る程度の初期的な益回りのために、企業を所有することに伴うあらゆる不確実性を受け入れていることを意味する。追加のリターンは企業の「成長」からもたらされる必要があるが、市場はすでにその成長をかなりの程度まで織り込んでしまっている。
投資家は、自分が「賞賛する企業」と「所有すべき株式」を混同しがちだ。この2つはまったく異なる。素晴らしいビジネスを展開する企業であっても、投資家が初期の段階で過剰な成功を織り込んで高い対価を支払ってしまったために、期待外れのリターンに終わるケースを私は見てきた。売上高が伸び、利益が増加したにもかかわらず、株価は下落する。しかし、そこに不可解な点は何もない。事業はしっかりと業績を上げたが、バリュエーションが現実的な水準に戻っただけのことだ。
5%という利回りは、遠い将来の利益の現在価値を下げるため、こうしたバリュエーションの修正をより厳しいものにする。成長株投資が終わったわけではない。長年にわたり高い割合でキャッシュフローを複利で増やせる企業であれば、依然として固定利付債のリターンを上回ることは可能だ。しかし、その株価は、経営陣が四半期決算でつまずいたり、新たな競合が現れたり、顧客の熱狂が冷めたりする可能性を許容できる水準でなければならない。
ある一定のバリュエーションに達すると、単にビジネスが好調だというだけでは十分ではなくなる。すべての条件が完璧に揃う必要が出てくるのである。


