生成AIの影響が大きい職種では若年層の雇用減が目立つ
若手の学習機会だけでなく、採用そのものが減る可能性を示す雇用データもある。米スタンフォード大学デジタル経済研究所が2026年8月に更新した調査では、生成AIの影響を最も受けやすい職種で働く22~25歳の雇用に変化がみられた。その雇用水準は、AIの影響が小さい同年代と同じ推移をたどった場合に比べて19%低かった。
生成AIの影響を受けやすい同じ職種でも、経験を積んだ労働者には同程度の落ち込みはみられなかった。同研究所は、若年層の雇用減は在職者の解雇が原因ではなく、企業が若者の新規採用を減らしたことが主因だと分析している。雇用減は、AIが人の仕事を補う形で使われる職場ではなく、人の作業を自動化する形で使われる職場に集中していた。
米ダラス連邦準備銀行も2026年1月の分析で、若年層に同様の傾向があると報告した。AIの影響を受けやすい職種で雇用減が確認されたのは若年層だけだった。主な要因は、労働市場の外にいた人が、AIの影響を受けやすい職種へ新たに入るケースの減少だった。
若手アナリストを2年かけて育てる制度を支える経済的な前提が変わる
若年層の雇用減を投資銀行に当てはめると、問題は採用人数だけでは済まない。若手を実務で育てる仕組みそのものにも影響する。モデルが十分な根拠を備えたピッチブックを数分で作れるなら、2年間のアナリスト育成制度を支えてきた経済的な前提は変わる。
銀行はこれまで、新卒者に給与を払って同じピッチブックを作らせてきた。上司の監督を受けながら時間をかけて作業を経験させ、その過程で仕事を学ばせてきた。ピッチブックを自分で作る経験自体が、若手を育成する仕組みの一部だった。
銀行は若手の仕事を再設計するか、採用人数を減らすか
AIが若手の定型業務を減らすとしても、アナリスト職そのものがなくなるとは限らない。問われるのは、残る仕事をどう組み替えるかだ。若手バンカーは資料作成に使う時間を減らし、AIモデルの出力確認や、分析の前提に無理がないかを厳しく検証する仕事により多くの時間を使う可能性がある。
これまで上級職が中心だった顧客との協議にも、若手が参加するようになるかもしれない。銀行が実際に若手の職務を再設計するのか、それとも職務を変えずに採用人数を減らすのかが重要になる。
数値を自分で扱う経験まで失わせるべきではない
金融機関などにAIを提供する英国企業GaiaLensの最高経営責任者(CEO)セブ・カークも、若手が数値を自分で扱う経験の重要性を指摘している。カークは金融情報サイトMoneywiseのインタビューで、午前2時に提案資料の体裁を整える作業だけで判断力を身に付けた人はいないと述べた。自分で数値を扱うからこそ、数値の誤りに気付けるとも指摘した。
OpenAIは、数値を扱う作業をこなすツールを作った。金融業界が、これまで数値を扱ってきた人々の仕事と採用をどう変えるのか。記事公開後に行われる最初の採用サイクルで、その方向性が明らかになる。


