OpenAI、金融を皮切りに企業向けChatGPTを業種別に展開
今回の発表は、OpenAIが企業向け事業を拡大する流れの一環でもある。最高財務責任者(CFO)のサラ・フライアーは2026年8月、企業向け事業の売上高が消費者向け事業を上回ったと投資家に説明した。
OpenAIは2026年6月、IPO(新規株式公開)に向けた登録届出書のドラフトを米証券取引委員会(SEC)へ非公開で提出した。ただ、サム・アルトマンCEOは米国時間2026年9月12日、2026年中には上場しないと明言した。IPOの時期は2027年以降に持ち越される見通しだ。
金融分野では競合が先行している。アンソロピック(Anthropic)は2025年に「Claude for Financial Services」を発表した。銀行はソフトウェア企業にとって特に価値の高い顧客で、データにも信頼性にも高い対価を払う。大規模言語モデルが得意とする作業に日々携わる人も、数万人規模で雇っている。
OpenAIにとって、金融は業種別ChatGPTを最初に投入する市場として条件がそろっている。高価なデータを利用し、正確性や信頼性を重視する顧客がいるためだ。AIが得意とする業務に携わる人も多く、AI導入によって仕事がどう変わるかが表れやすい分野でもある。
AIが分析の判断まで行えば、若手バンカーはどこで学ぶのか
金融向けChatGPTが若手の仕事を代替するのかという問いに対し、OpenAIは生産性向上を強調している。CNBCはターリーに、この製品によって若手バンカーの採用を減らせるようになるのかと尋ねた。
ターリーは、人員を置き換える製品ではなく、生産性を高めるツールだと説明した。アナリストは週100時間働いているという。この製品を使えば、同じ人員がより速く、より優れた分析をできるようになるとの見方を示した。その効果は、マイクロソフトのExcelが金融業界にもたらしたものに似ているという。
Excelは計算を速めたが、AIは比較対象を選び相場まで説明する
Excelとの比較には重要な違いがある。Excelは、アナリスト自身が考えた分析をより速く実行するための道具だった。比較対象企業を選ぶことも、どのグラフが重要かを判断することも、相場急落の理由を説明することもなかった。
ChatGPT for Financial Servicesは、比較対象企業の選定や重要なグラフの判断まで行う。相場急落の理由も説明する。若手アナリストが仕事を覚えるために経験してきた作業そのものを、AIが引き受けることになる。
AIに思考を任せれば若手の判断力が育たないとの懸念
若手が実務を通じて学ぶ機会が減ることへの懸念は、金融業界の内部からも出ている。クリス・チャーチマンはゴールドマン・サックスのパートナーで、機関投資家・法人顧客向けデジタルプラットフォーム「Marquee」を率いる。同行のグローバル・バンキング・アンド・マーケッツAI作業部会の共同議長も務めている。
チャーチマンは2026年8月24日配信のポッドキャスト「Exchanges」で、バンカーが考える過程をAIモデルに任せれば「思考力の衰え」を招く恐れがあると警告した。金融の知識の多くは、言葉で教えるだけでは身に付かず、実務を通じて学ぶものだという。AIに考える過程を任せる危険を説明する際には、「GPSへの依存によって人の方向感覚が衰える」という自身の見方を例に挙げた。
ゴールドマン・サックスも、若手がキャリア初期に経験する仕事をどこまで自動化するか結論を出していない。


