低コスト化で、これまで採算が合わなかった通話も自動化対象に
価格設定の魅力も大きい。顧客とAIが10分間休みなく会話した場合、グーグルの試算では約0.23ドル(約36円)、1時間なら1.38ドル(約218円)かかる。同じ10分間で比べると、OpenAIの音声モデルGPT-Live-1は、公表料金の1分0.05ドル(約8円)を基にして少なくとも0.50ドル(約79円)かかる。米国のカスタマーサービス担当者は、2025年の時給中央値21.53ドル(約3402円)で換算すると、賃金だけで約3.59ドル(約567円)だ。この比較では、グーグルのAIにかかる費用は担当者へ支払う賃金の約15分の1になる。
低価格化は価格競争だけでなく、自動化需要そのものを広げる
グーグルとOpenAIがともに1分数セントで提供している状況だけを見れば、単純な価格競争にも見える。だが、テクノロジー業界では、価格低下が市場そのものを拡大してきた例がある。最も分かりやすい例は、一般的なコンピューターチップだ。価格が数セントまで下がるにつれ、自動車や家電をはじめ、電気を使うほぼあらゆる製品に組み込まれ、半導体産業は大きく成長した。
グーグルが1回の通話から得る収入はセント単位にすぎない。この事業の採算は、自動化する価値がある通話がどれだけ増えるかにかかっている。最も伸びる余地が大きいのは、人が対応すると費用が高く、企業が十分に対応できていない通話だ。担当者に時間がなくて実施できないフォローアップ電話や、営業時間外のため留守番電話につながって終わる通話が該当する。
企業向け音声AIの競争が拡大、Geminiは他社サービスにも組み込める
グーグルはOpenAIやアマゾンに加え、AIを電話システムへ接続する企業とも競争している。Genesys、NiCE、Five9など既存のコンタクトセンターソフトウェア企業も、企業が通話、従業員、顧客情報を管理するために使うソフトウェアへAIを追加している。
グーグル自身が電話対応システム全体を提供しなくても、他社が提供するコールセンター向けソフトウェアや電話サービスにGeminiを組み込み、会話や情報検索、各種手続きを処理するAI部分を担うことができる。
投資家にとっての要点は、AIを使って自動化できる企業業務が増えれば、この分野の市場も拡大する可能性があることだ。Gemini 3.8 Liveにより、AIエージェントの用途は、質問への回答だけでなく、顧客対応、日程調整、技術サポートといった日常的な企業業務まで広がる可能性がある。より多くの業務を低コストで自動化できるようにすることで、グーグルはAIエージェントの活用範囲をチャットボット以外の実務へ広げている。これは重要な進展だ。


