──nomaのレネ・レゼピシェフが以前話していた「毎日同じことを繰り返すことで、エネルギーや創造性が少しずつ消耗していく」という言葉を思い出します。同時に、それがレストランという存在の宿命でもありますが。
まさにその通りです。伝統的にレストランは毎週営業し続けるものでした。だからこそ、私たちは今問い直しています。「このレベルのファインダイニングは、本当に年中無休で営業し続ける必要があるのだろうか?」と。
ありがたいことに、本日も52席に対して1200人ものキャンセル待ちがいる恵まれた環境にあります。だからこそ、自分たちの立場から一歩踏み出し、「従来のモデルを変えられるか?」と自ら実験してみるべきだと考えています。

──シェフがメンターと仰くフェラン・アドリア氏(エル・ブジ創始者)も、店を数カ月閉店してラボで料理の研究やコンサルティング等を行い、チームをアクティブに保ちながら給与を支払っていました。こういった決断では、経済面以外に、刺激や情熱を求めるスタッフのモチベーションをどう維持するかが課題になりそうです。
まず、全員を雇用し続け、通常通り給与も支払います。チーム全員がここに残ります。そうなると、28人のスタッフに5カ月間、意味のある面白い仕事をしてもらう必要があります。そこで「サービスとは何か」「フロント・オブ・ハウスとはどうあるべきか」「サービスチームの理想像とは何か」という根幹から問い直したいと考えています。従来のあり方を刷新し、スタッフを育て教育するための新たなシステムを作る機会にするのです。
この休業期間中には、心理学やリーダーシップの講座、マスタークラスなど多様な教育プログラムを導入します。たとえば日本の「炭火焼肉 なかはら」の中原健太郎シェフに来てもらって彼の思考法を学んだり、外部から新しいインスピレーションを持ち込んだりして、次のシーズンへと繋げます。
昨日チームにこの方針を伝えたところ、みんな非常に興奮していました。通常の営業下では、研究や学習に深い時間を割くことができません。これまでは指示されたタスクを実行する形でしたが、これからは自分自身でテーマを深く掘り下げる時間が生まれます。
──これは毎年実施されるわけですよね。学び続けるのが得意な人ばかりではない可能性もありますし、フィールドワークのようなアクティブな活動も含まれるのでしょうか。
実は、チームがどう反応するか少し不安でした。「お客様と直接接することができないなら参加したくない」というスタッフが出るかもしれないと思っておりました。しかし今のところ、全員がとても喜んでいます。
5カ月間ずっとパソコンの前に座らせるようなことはしません。生産者や農家、デザイナーなどと協力し、実際に外へ出て多様な人と会い、体験するフィールドワークを数多く取り入れる予定です。


