時に、解決策を見つけるということは、問題についてより深く知ることを意味する。これは、生態系や地球の健康をめぐる課題に直面した際によく当てはまる。生物界においては、非常に多くの事象が相互に関連し合っているため、新たな発見が複雑になることが多いと覚えておくと役立つ。
最近開催された「Planet Action(プラネット・アクション)」のイベント(免責事項:筆者は毎年このイベントの開催を支援している)で、生態系を救うために私たちがなすべきこととミツバチの事例について語ったノア・ウィルソン=リッチの証言を紹介しよう。
「私たちはミツバチを救うためにできる限りのことをした」とウィルソン=リッチは切り出した。「屋上を巣箱でいっぱいにし、庭に植物を植え、地元のハチミツを購入した。蜂群崩壊症候群(CCD)に関するインフォグラフィックを共有した。その結果、米国におけるミツバチの巣箱の数は史上最高を記録した。これでミッション完了、そうだろうか? いや、違う。私たちは生態学的災害を引き起こし、5770億ドル(約89兆5000億円)の生態学的時限爆弾の導火線に火をつけてしまったのだ」
なぜこのようなことが起きたのか。ウィルソン=リッチは、私たちには十分な文脈がなかったのだと主張する。重大な事実の1つは、ハチには1種類だけでなく、非常に多くの異なる種が存在するということだ。
「ハチには2万の種が存在する」と、彼はその数字を強調した。「2万種だ。そしてそれは、世界中の授粉媒介者(ポリネーター)のわずか10%にすぎない。現在、私たちがよく知るセイヨウミツバチは、非常によく管理された1つの種にすぎないのだ」
ウィルソン=リッチは、次のような思考実験を提案した。
「もし私が今、観客席に向かって『最前列の皆さん、すべての資源をあなたたちに提供します。すべての食べ物も差し上げましょう。残りの皆さんは自力で何とかしてください』と言ったと想像してほしい」と彼は付け加えた。「それが、私たちがミツバチに対して行ったことだ。私たちはすべての資源をセイヨウミツバチに与えてしまった。すべての屋上を彼らに提供した。できる限りのことをした。それにもかかわらず、私たちが変えようとしていたシステムを完全に理解するためのデータや測定、テクノロジーへとそれを結びつけることをしなかった。そして現在、セイヨウミツバチは他の授粉媒介者との資源獲得競争に勝ち、その結果、他の授粉媒介者の食べ物が減少している。彼らは病気さえ広めてしまっているのだ」
生物多様性を軽視する社会に対する、ある著述家たちの恐ろしい予測を引用しながら、ウィルソン=リッチは「ミツバチを救え(Save the Bees)」運動の失敗について語った。
「私たちは街頭に出た。これ以上ないほどの集団行動を起こした。できる限りのことをした。しかし、自分たちが何をしているのかを理解するために、それをデータやテクノロジーに結びつけることはしなかった」
頭文字が示すもの
ウィルソン=リッチは、「Learn(学ぶ)」「Adapt(適応する)」「Be better(より良く行動する)」を意味する「LAB」という略語を気に入っていると明かした。
「もちろん、Beeは『ミツバチ(Bee)』と同じスペルだ」と彼は付け加えた。
生物多様性のための設計図
ウィルソン=リッチは、さらなる頭韻を踏みながら、種の多様性の喪失に関連する最も深刻な問題の一部を回避するための、確実なフレームワークの必要性を訴えた。
「私たちには、測定可能なデータと、テクノロジー主導による大規模な生物多様性のアクションが必要だ」と彼は語った。
その関連手法について、次のように続けた。
「まず基準となる測定値(ベースライン)をとり、次にどのようなデータを確認したいか、生物多様性をどれだけ改善したいかという目標を設定する。そしてプロセスに沿って測定を行い、それらをテストし、私たちの行動がもたらす影響を評価するのだ」
科学的分析が示す真実
さらに詳しい説明の中で、ウィルソン=リッチは、より広い視点から授粉媒介者のシステムを捉えた。
「授粉媒介システムを理解する手段として環境DNAに目を向けると、右側に示されているように、健全な地域のハチは自生植物(在来種)を好んで食べていることがわかる。自生植物の豊かさは、ハチの健康増進に最も密接に関連している要因だ。そして、ハチの健康状態が平均を下回る地域では、自生植物の多様性が乏しいことがわかる」と彼は説明した。
彼によると、米国では過去1年間だけで、ミツバチの巣箱の3分の2が失われたという。
「3年前、私たちは生存する数よりも失われる巣箱の数の方が多いという臨界点(ティッピングポイント)を越えた」と彼は述べた。「米国で3分の2の巣箱が死滅しているとすれば、これは私たちが変えようとしているシステムについて何を物語っているのだろうか。屋上に巣箱を置いたからもう安心、というわけではない。測定を行う必要がある。他の種にも目を向け、より良い行動をとらなければならない」
ウィルソン=リッチは、このような取り組みのメリットを次のように説明した。
「企業の投資対効果(ROI)を促進するデータから、生物多様性には多大なメリットがあることがわかっている。オフィスから自然を眺める労働者は、創造性が45%向上し、従業員の病欠が15日減少し、生産性が30%以上向上することがわかっている。これは時に、バイオフィリックデザイン(生命愛を重視した設計)と呼ばれる」
また、不動産価値にとってもメリットがあると彼は指摘した。
「不動産価値に目を向けると、生物多様性や、屋根の寿命を2〜3倍に延ばす緑化屋根によって、資産価値が上昇することがわかっている」とウィルソン=リッチは言う。「LEED認証をはじめとする認証が建物に価値を付加することも明らかだ。これらは望ましい不動産となり、不動産業界、デベロッパー、個人の住宅所有者、そして賃借人のビジネスケースを支援することになる。家族のために屋上でニンジンを育てたいと思わない人がいるだろうか。私たちはこれを実現でき、それはビジネスを後押しするのだ」
企業の取り組み
プレゼンテーションの中で、ウィルソン=リッチは、フェンウェイ・ファームズや「VCs for Bees」と呼ばれるプログラム、ブランド提携された森林を保有する不動産など、ポジティブな影響を与え得るさまざまな小規模ビジネスプロジェクトに言及した。これらすべてが、環境の価値がより十分に認められる世界に向けて、私たちを備えさせるものだと彼は示唆した。
「体験を向上させるためにテクノロジーを加えることで、企業として、また住宅所有者としてさらに前進し、夜間の照明を減らしたり、屋上緑化を施したり、芝生を牧草地(メドウ)に変えたりして、それらの目標を将来に向けて設定することができる」と彼は語った。「私たちはこれをミツバチのためだけにやっているのではない。彼らを確実に未来へと連れていくために行っているのだ」
これは、AIを正しい方法で導入しようとする際に、私たちが何を学ぶべきかを示す好例だと思う。今後の展開に注目してほしい。



