Forbes JAPAN 2026年11月号は、文化の力で世界を駆ける「カルチャープレナー」たちを特集。文化やクリエイティブ領域の活動によって新ビジネスを展開し、豊かな世界を実現しようと試みる文化起業家を30人選出する企画で、今回で4回目となる。今年注目したのは、優れた作品や商品を生み出すだけでなく、流通や人材育成、地域との関係まで含め、文化が続いていくための基盤をつくろうとする実践だ。アニメやゲーム、工芸、食、地域開発など領域を越えて、文化を次の創造へと循環させる挑戦を紹介する。
「こんまり」こと近藤麻理恵と、プロデューサーの川原卓巳。「ときめき」という感性を軸にした片づけメソッドを事業化し、世界へ広げてきたふたりが語った、感性を価値に変える方法とは。
──2023年におふたりが『Forbes JAPAN』の表紙を飾ってから3年がたちました。どんな変化がありましたか。
近藤麻理恵(以下、近藤):「片づけ」や「こんまりメソッド」の領域を超えて、日本の感性や文化そのものを伝えてほしいと海外の方から声をかけていただく機会がすごく増えました。昨年イギリスの出版社からのオファーで刊行した『Letter From Japan』では、私が考える日本の感性を「愛でる」「きわめる」「気遣う」「味わう」「清める」「調和させる」という6つに分けて紹介しています。
川原卓巳(以下、川原):大きく変わったのは、AIやロボットの進化です。文章も動画も音声も、誰もが「正解らしいもの」を簡単につくれるようになった。だからこそ、人間にしか生み出せない価値とは何かを、あらためて考えるようになりました。そこで確信を強めているのが、「ときめき」という、簡単には再現できない感性や感覚にこそ、人間らしさが宿っているのではないかということです。麻理恵さんは片づけを突き詰めるなかで、「これを基準に選ぶとうまくいく」とたどり着いた。これはある種の真理だったんじゃないかと思うんです。
そこで今、IQ(知能指数)やEQ(心の知能指数)に続く「TQ=Tokimeki Quotient」という考え方を世界に発信しようとしています。「ときめき」の感度を磨くことは、自分で選び、決める力を磨くことでもある。誰かが決めた正解ではなく、自分で選んだものを自分で正解にしていく。そうした判断力や意思決定力が、ますます重要になると思っています。
近藤:片づけって、そもそも数字では割り切れないんですよね。「3年間使っていないから捨てましょう」という話ではない。
思い出の品でも、ずっと大切なモノもあれば、あるとき「もうこの役割は終わった」と気づくこともある。一つひとつのモノと向き合い、自分の感性で選んでいくしかないんです。片づけを終えた方が、人間関係や仕事など、人生のさまざまな場面で決断や行動を変えていくのは、自分なりの「ときめきの感度」が磨かれたからだと思っています。



