ビールパーティーまでの長い道のり
初期のオクトーバーフェストは、今日のそれを知る人が見れば戸惑うであろうほど、まるで様相の異なる催しだった。
結婚式の翌年に行われた競馬では、バイエルン地方の農業品評会が併設開催された。1818年には会場に初めてメリーゴーラウンドやブランコが登場し、現在のオクトーバーフェストでビールと共に楽しめる移動遊園地の礎が築かれた。
代名詞といっていいビールテントが登場するのは、かなり後年になってからだ。19世紀を通して、ビールは簡素な屋台で提供されることがほとんどだった。人出が増えるにつれて醸造所が関与を深めるようになり、徐々に大きなホールやテントでビールが提供される形へと発展していったのだ。
20世紀を迎える頃には、ビアホールはオクトーバーフェストに欠かせない存在になりつつあった。今日では間違いなく、オクトーバーフェストといえばビアホールである。
いまやオクトーバーフェストのビールテントは、最大級のものになると一度に数千人を収容できるほど巨大だ。ぎっしりと詰めかけた人混みの中、伝統衣装に身を包んだ給仕係が驚くほどたくさんの特大ジョッキを軽々と運んでいる。
祭りの端緒となった競馬はどうなったのかといえば、すっかり姿を消してしまった。
ビール自体も今とは違った
オクトーバーフェストのビールは、ドイツのラガービールと聞いて想像するものとは少し違う。
琥珀色をした南ドイツのラガーは「メルツェン(Märzen)」といい、伝統的に3月に仕込んで夏の間じっくり低温熟成させたものだ。オクトーバーフェストも長年、このメルツェンと密接に結びついていた。今でも多くの人がオクトーバーフェストでビールを注文する際に思い浮かべるのはメルツェンだろう。
だが、実際に本場ミュンヘンのビール祭りを訪れてみると、ジョッキに入っているのは基本的にそれとは異なるビールだ。
現代のオクトーバーフェストで提供されるビールは、通常「フェストビール」と呼ばれる。色が薄く、キレのあるラガーで、特大ジョッキで何杯でも飲める軽い口当たりが特徴。危険なほど飲みやすいビールなのだ。
また、オクトーバーフェスト用のビールを醸造している醸造所だからといって、会場でどんなビールを提供してもいいわけではない。ヴィースンで提供できるのは、ミュンヘンで醸造され、祭りの要件を満たしたビールだけである。
このため、オクトーバーフェストの公式ビールを提供できるのはミュンヘンにある6つの醸造所、アウグスティーナー、ハッカー・プショル、ホフブロイ・ミュンヘン、レーベンブロイ、パウラーナー、シュパーテンのみと決まっている。
これらのビールは伝統的に「マース(Maß)」と呼ばれる1リットル入りの巨大ジョッキで提供される。飲みすぎないようペース配分には気をつけよう。


