資産運用

2026.09.17 09:37

集中投資で築いた富を守る──破滅リスクを回避する実践的フレームワーク

Adobe Stock

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ほとんどの莫大な富は、集中によって築かれる。分散投資は、富を創出する手段ではなく、多くの場合、富を維持するための手段である。

分散投資によってもかなりの富を生み出すことはできるが、世代を超えるほどの富のほとんどは、公開企業か非公開企業かを問わず、自身のキャリアや企業所有における集中的な努力によって築かれる。本稿では、この現象が生じる主な理由を検証し、集中した富に伴うリスクを考察するための堅牢なフレームワークを提示する。

集中的なキャリア

本稿ではビジネスの所有権の集中に焦点を当てるが、集中的なキャリアを歩むケースは、通常、株式所有の集中と交差する。以下では簡単にするため、「株式所有」という言葉で公開株と非公開の所有権の両方を指すものとする。キャリアの過程で企業のトップに上り詰める企業役員を考えてみよう。これには通常、自社の所有権を付与されるか、あるいは購入することが含まれる。企業と役員の双方が成功すれば、この所有権は他の資産と比較して、集中した富となる可能性が高い。さらに、多額の所得が役員としての雇用に集中することになる。

集中保有の数学

ウォーレン(・バフェット)とチャーリー(・マンガー)の見事な投資パフォーマンスの要素はシンプルだ。(a)まずまずの成績を残した多くの投資案件、(b)多額の投資を行い何十年も保有し続けた、比較的少数の大勝した銘柄、および(c)比較的少数の大敗した銘柄である。ハワード・マークス(ウォーレン・バフェットとチャーリー・マンガーについて)

ここで、株式投資の数学について考えてみよう。比較的分散されたポートフォリオから始めたとしても、投資が成功したときの数学的帰結として、きわめて収益性の高い少数の保有銘柄が生まれることになる。ウォーレン・バフェットやチャーリー・マンガーの例に限らず、株式市場の歴史的なリターンを分析しても、同様の結論に至る。

1926年から2023年までの米国株2万9078銘柄のリターンを検証したヘンドリック・ベッセンバインダーの最近の論文によると、全銘柄の半分以上、正確には51.6%が、累積リターンがマイナスだった。1928年から現在まで、S&P 500が年率約10%近いリターンを上げているにもかかわらず、なぜこれほど多くの敗者銘柄が存在するのだろうか。

複雑な回答としては、株式リターンには強い右裾が長い歪み(ポジティブ・スキューネス)があるからだ。しかし、長期的なプラスの複利リターンの簡単な例を示せば、より理解しやすいだろう。1株100ドル(約1万円)で取引されているわずか2銘柄のポートフォリオを想定する。最初の銘柄は年率9.8%で成長し、もう1つの銘柄は30年間にわたり年率9.8%で下落する。一方の銘柄の損失が他方の利益を相殺するため、この期間中にポートフォリオ全体は停滞すると考えるかもしれないが、複利リターンは私たちの直感が間違っていることを証明している。成長した銘柄の指数関数的なリターンは、敗者銘柄の損失を上回る。このポートフォリオの価値は1657ドル(約25万円)にまで成長し、これは年率7.3%のリターンに相当する。つまり、S&P 500のなかで最も高いパフォーマンスを上げた銘柄が、時間の経過とともに敗者銘柄の損失を十分に補って余りあるのである。

magic of compound interest

株式市場の数学:複利の魔力

Glenview Trust

この数学的法則に従うと、きわめて成功した少数の投資がポートフォリオを支配するようになる。一部の投資家にとっての最近の例はエヌビディア(NVDA)だ。ベッセンバインダーによれば、2023年末時点で、エヌビディアは「少なくとも20年間のリターンデータを持つ銘柄のなかで最も高い年率複利リターン」を誇り、その数値は実に33.38%に達していた。2023年末から2026年8月末までの年率リターンは75%となっており、彼の研究時点からパフォーマンスはさらに向上している。

税金と集中保有

「何もしない投資(Sit on your ass investing)」をすることだ。ブローカーに支払う手数料が減り、くだらない話を聞くことも少なくなる。そして、それがうまくいけば、税制によって毎年1%、2%、あるいは3%の追加リターンが得られる。チャーリー・マンガー

税金もまた大きな影響を及ぼし、ファミリーの資産に巨大な保有銘柄が形成されるもう一つの理由となっている。株式の含み益は、政府からの無利子融資のようなものである。したがって、内国歳入庁(IRS)に納税すべき利益の取り分を、資産を複利で増やすために長く活用できればできるほど、投資家にとって有利になる。

長期的な利益であっても、課税口座で勝ち組投資から撤退する(売却する)際には大きなハードルとなる。結論として、長期的に優れていると期待される企業を保有する合理的な投資家は、複利の力を享受し、税引後の資産を最大化するために、短期的なアンダーパフォーマンスを喜んで容認すべきである。

今回のフレームワークを扱った記事の範囲を超えるが、大幅に値上がりした投資の税金による目減りに対処する方法はいくつか存在する。

集中保有のリスク

私たちにとってのリスクとは、1)資本の永久的な損失のリスク、または2)不十分なリターンのリスクである。チャーリー・マンガー

ここまでは集中した富のメリットに焦点を当ててきたが、それにはリスクも伴う。アンティ・ペタジストによる研究は、集中した株式ポジションの長期的なパフォーマンスを検証しており、そのようなポジションはアンダーパフォーマンスに陥りやすく、ポートフォリオのリスクを高める傾向があると指摘している。

分散されていない集中ポートフォリオを検証する場合、起こり得る結果のリスクを評価するには、中央値リターンに主眼を置くべきである。個別米国株の10年間の中央値リターンは、市場全体に対してマイナス7.9%、年率換算でマイナス0.82%だった。興味深いことに、過去5年間で上位20%のパフォーマンスを上げた銘柄の、その後の10年間の中央値の相対リターンは、マイナス17.8%(年率換算でマイナス1.94%)という悲惨なものだった。どちらの場合も平均リターンがプラスになっているのは、驚異的なパフォーマンスを上げる極めて一部の銘柄が、分散されたポートフォリオ全体のリターンを支配しているからである。

ポートフォリオのボラティリティと集中保有

ペタジストは、単一銘柄の保有比率が最大10%までのポートフォリオのリターン・ボラティリティは、分散ポートフォリオとほとんど変わらないことを発見した。彼は、ボラティリティの上昇が意味を持ち始めるのは、個別銘柄の比率が10〜20%に達したときだと指摘している。単一銘柄の比率が30%以上に達すると、ボラティリティを抑制する上で分散投資はほとんど役に立たなくなる。

学者や一部の実務家は株式リスクをボラティリティと定義しているが、これは数あるリスク指標の1つにすぎない。ボラティリティは株価が時間の経過とともにどれだけ変動するかを測定するものであり、売却する必要がある場合や、その価格変動に不快感を覚える場合にのみ意味を持つ。ボラティリティがリスクの尺度として一般的に使用されるのは、単にそれが容易に測定できるからにすぎない。

破滅のリスク

第1のルールは、複利が効果を発揮するのに十分な期間を生き残ることである。

集中した富を持つファミリーは、主に2つのリスクに焦点を当てるべきだ。

  • 破滅のリスク:集中した富が、資産とファミリーのライフスタイルを崩壊させるほど大きな永久的損失を被る可能性。
  • 不十分なリターンのリスク:リターンが低すぎて、ファミリーのライフスタイルや目標を支えるために必要な購買力を維持できなくなるリスク。

期待リターンの最大化を目標にすべきだと考える人もいるかもしれないが、1956年にジョン・ケリー・ジュニアが開発したケリー基準は、破滅のリスクを冒さずに資産の長期的な複利成長率を最大化することに焦点を当てるよう教えている。基本的なケリー公式は、破滅リスクを排除しつつ成長を最適化するものの、ファミリーで実践するには大きすぎるドローダウン(資産減少)を許容してしまう。さらに、これは確率が既知のギャンブル向けに開発されたものであるため、事業への投資はさらに別の複雑な要素を加えることになる。それでも、集中した富を扱う際に何に注目すべきかを決定するための優れたフレームワークを提供している。

集中した富のフレームワーク

必要のないものを手に入れるために、すでに持っている必要なものを危険にさらすのは正気の沙汰ではないと、私たち2人とも考えている。ウォーレン・バフェット

数学の話を脇に置くと、集中した富について考えるためのシンプルなフレームワークは、投資の上昇余地(アップサイド)と、破滅リスクや不十分なリターンといったリスクとのバランスを取るための、実用的かつ洞察に満ちた方法を提供してくれる。

資産を、目標に基づいた「バケツ(分類)」に分けて考えてみよう。選択肢は無限にあるが、最も一般的なバケツをいくつか挙げてみる。

  • ライフスタイル:現在の生活様式を維持するために必要な資産。
  • 大志(アスピレーショナル):さらなる高みの富を築くことを目指した投資。
  • レガシー:次世代に残すための資産。
  • 慈善活動:慈善目的の資産。

バフェットの言葉が示す通り、最も重要なバケツはライフスタイルだ。集中した富を持つファミリーや個人にとって、希望するライフスタイルを維持するために十分な分散資産を確保することは極めて重要である。これは、予想される最大資産への最適化を行わないことを意味する場合がある。むしろ、資産の最大化とダウンサイド・リスク(下落リスク)とのバランスを取ることに、重要な焦点を当てることになる。あのウォーレン・バフェットでさえ、バークシャー・ハサウェイ(BRK/A、BRK/B)の株式保有分以外に資産を保有している。2024年、バフェットは約1270億ドル(約19兆7000億円)の純資産の99.5%がバークシャー・ハサウェイ株であり、集中保有する株式の外部に約6億ドル(約930億円)を残していると述べた。彼は大半の人間よりはるかに大きな規模で動いているが、6億ドル(約930億円)は残りの人生のライフスタイルを支えるために十分すぎるほどの額であるはずだ。

このフレームワークの素晴らしい点は、ライフスタイルのバケツに資金が手当てされれば、集中保有している資産を精神的に、大志、レガシー、慈善活動のバケツに分類できることだ。これらのバケツであれば、破滅リスクがファミリーの財務の健全性に致命的な打撃を与えることはない。当然ながら、資産が増えるにつれて、あるいは目標が進化するにつれて、資産をバケツ間で移動させることもできる。集中保有資産は、大志やレガシーの目標の一部とみなすことができる。

表現こそ異なるものの、集中した富のための投資フレームワークに関するメイヤー・スタットマンの最近の説得力ある学術論文は、筆者がこのテーマについて書くきっかけとなったもので、一読の価値がある。

簡略化したケーススタディ:集中した富のフレームワーク

事業の価値が純資産に占める割合が支配的になるにつれて、非公開企業のオーナーは、事業からキャッシュを引き出して、リスクを軽減するための十分な分散されたライフスタイル資産を確立することに注力する一方で、集中保有している事業の上昇余地のすべて、あるいは大半を維持することができる。同様に、自社株への集中リスクを抱える公開企業の役員も、分散されたライフスタイル資金の確立を模索することができる。一部の役員にとって自社株の売却は現実的ではないため、「余剰」の給与収入をその分散されたライフスタイル資産の基盤構築に振り向けることができる。上述の通り、集中している保有株式の一部を売却(流動化)する場合は、この分散投資を実行するために税制上優遇されたいくつかの方法を利用できる場合がある。

ライフスタイルのバケツが確立されれば、大志となる資産やファミリーの次世代へレガシーを残すことなど、他の目標への道が開かれる。さらに、大志のバケツであれば、ライフスタイルの資金調達には適さない投資手段への投資が可能になる。例えば、ベンチャーキャピタル投資のように、成功の確率は低いが非対称に巨大な上昇余地がある投資は、大志のバケツにおいては合理的であるが、ライフスタイルを維持するためには非合理的である。

結論

世代を超えるほどの富は、通常、キャリアと投資の集中を通じて生み出され、勝ち組銘柄を存分に走らせ、負け組銘柄を長期間かけて売却することで複利効果を活用し、それによって税引後の資産を複利で増やすことで形成される。それにもかかわらず、ファミリーは成功した集中ポジションに伴う追加リスクに留意し、それを税金コストと比較考量した上で、事業のファンダメンタル価値やリスクを考慮する必要がある。

投資先の選定と分析は、パズルの一片にすぎない。強固な財務・税務・エステートプランニング(資産承継計画)に、本稿で提示した集中した富のフレームワークを用いた検討を組み合わせることで、ファミリーは、集中した富を達成・維持したいという願望と、単一企業への巨大な投資集中に伴う重大なリスクとのバランスを取ることができるようになる。

forbes.com 原文

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