初代iPhoneの発売から2カ月後、スティーブ・ジョブズはiPhoneをベースにしたiPod touch(アイポッドタッチ)を発表した。だが、ユーザーコミュニティを動揺させたのは、iPodとiPhoneを最終的に融合させたこの製品ではなかった。問題となったのは、8GBモデルの価格が599ドル(約9万円)から399ドル(約6万円)へ引き下げられたことだった。
本稿は、スマートフォン時代を決定づけた瞬間を振り返る連載「iPhoneの30日(30 Days of iPhone)」の5日目の記事である。
消費者市場にはiPhoneは高すぎた
新たな市場分野で新製品の軌道修正を迫られるのは、決して珍しいことではない。発売から66日間で、アップルは価格設定とスペックに問題があることを認識するには十分だった。ストレージ容量が4GBの低価格モデルのiPhoneは、実用には到底耐えられないものだった。アップルはスペックを削りすぎていたため、同モデルは廃止されることとなった。また、大容量の8GBモデルの売れ行きも期待通りではなかったため、最も単純な経済的手法である小売価格の引き下げが実施された。
この値下げに対し、アップルのファンコミュニティは激怒した。iPhoneの購入を決め、発売初日に並んでこのスマートフォンを手に入れたアーリーアダプター(初期採用層)たちは、200ドル(約3万円)の値下げによって、自分たちが不当に扱われたと感じたのだ。
iPhoneの値下げでスティーブ・ジョブズは謝罪に追い込まれた
スティーブ・ジョブズは値下げによる影響を認めざるを得なくなり、自身の決定を撤回することはしなかったものの、公開書簡で次のように譲歩の姿勢を示した。
「……iPhoneを値下げするという決定は正しく、技術の道には起伏がつきものであるとはいえ、低価格化によって新たな顧客を積極的に獲得していく一方で、初期にiPhoneを購入してくれた顧客への配慮をもっと徹底する必要がある。初期の顧客は当社を信頼してくれた。このような局面において、私たちは行動をもってその信頼に応えなければならない」
7月時点では高価なニッチ製品と見なされていたかもしれないものは、9月には大衆的な成功を収める製品へと変貌を遂げた。必要だったのは、値下げと、最も熱心なコミュニティメンバーに対する100ドル(約1万円)相当のギフト券の提供だけだった。
本稿は「iPhoneの30日」の5日目の記事である。前回は、iPhone 3Gがどのようにしてアップルに米国市場での支持をもたらしたのかを取り上げた。



