マーケティング

2026.09.17 08:13

人間らしさを取り戻す空間こそが、新たなラグジュアリー

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富裕層は、プライバシー、保護された景観、そして大切な人々との時間に投資している。バージニア州のブルーリッジ山脈にあるプリムランドでは、自然は付加的なアメニティではなく、それ自体が価値なのだ。

ラグジュアリーは常に「アクセス権」を販売してきた。それが最高の客室であれ、最も希少なオブジェであれ、他の誰も確保できないレストランのテーブルであれ。

今日、最も価値あるもののいくつかは、かつて私たちが当たり前と思っていたものになっている。静寂、夜の暗さ、遮られることのない眺望、子どもたちが駆け回れる空間、そしてスクリーンに絶えず中断されない他者との時間だ。

こうした変化は、消費者が旅行する場所、購入するもの、そして、自宅を構える場所の選択にまで影響を及ぼし始めている。これは美しいものや素晴らしいサービスを拒絶しているのではない。それらも依然として重要だが、今や新たなフィルターが存在する。すなわち、「これはすでに混雑している生活にさらなるノイズを加えるのか、それともそれを静めるのに役立つのか」という問いだ。

言い換えれば、ラグジュアリーへの消費は2つに分かれ始めている。日常生活をストレスフリーにするための資金と、あえて適切な「摩擦(フリクション)」を生活に戻すために費やされる資金だ。

数値データはこの変化の規模を物語っている。世界のウェルネス経済は2024年に6.8兆ドル(約1050兆円)に達したと、グローバル・ウェルネス・インスティテュートは発表している。ウェルネス不動産はその中で最も急成長している分野であり、2019年から2024年の間に年平均19.5%のペースで拡大した。ウェルビーイングが、単なる一時しのぎのトリートメントスパで過ごす週末をはるかに超え、人々が暮らしたいと望む場所や、そこで築きたいと願う人生にまで影響を及ぼしているのは明らかだ。

人生を豊かにする「体験」へとシフトするラグジュアリー消費

プリムランドは、バージニア州ブルーリッジ山脈の1万2000エーカーにおよぶ大自然の中に位置している。故ディディエ・プリマが1970年代に取得し、約50年間にわたり一族のリトリートとして使われてきた広大で美しい土地だ。

この敷地内には現在、スパ、ハイランド・ゴルフコース、充実したアウトドア体験を備えた「ザ・ロッジ・アット・プリムランド、オーベルジュ・コレクション」がある。そして今回初めて、プリムランドのストーリーは住宅所有へと拡大している。

プリムランドのオーベルジュ・レジデンスは、ハート・ハワートンが設計した、家具付きの3〜5寝室の住宅わずか25棟で構成されている。また、数マイルに及ぶ山頂の尾根に沿って26区画の「エステート」宅地も用意されている。これらの敷地面積は2エーカーから5エーカー弱で、価格は120万ドル(約1億8600万円)からとなっている。

プリムランドに自身の家族のための家を建てているケビン・プリマは、購入者が手に入れているのは個々の区画よりもはるかに大きなものだと話す。

「プリムランドで家を購入する際、単にその家の下にある土地を買っているわけではありません」と、彼は説明する。「ある意味で、周囲にあるすべての体験を購入しているのです。景色、森、トレイル、静寂、出会う人々、そして、周囲の自然環境が今後も守られていくという安心感を買っているのです」

「希少性」は、ラグジュアリーにおいておなじみの手法だ。それは購買意欲を煽り、憧れを高め、プレミアムな価格設定を維持するために使われる。しかし、プリマの説明はもっと地に足がついている。

「私は希少性を販売戦略だとは考えていません」と彼は語る。「希少性は、スチュワードシップ(管理責任)の結果として生じるものなのです。プリムランドを特別なものにしている要素を守るために、建設数を減らす必要があるのなら、そうするまでです」

これこそが、自然を主役にした次世代のラグジュアリー開発における決定的な試金石となるかもしれない。景観や平穏、プライバシーが商業的価値を持つようになると、それをさらに切り売りしようとする圧力が常に生じる。しかし、建物、車両、ゲストが1つ増えるたびに、その場所を格別なものにしていた本質が少しずつ失われていく可能性があるのだ。

したがって、スチュワードシップとは、パンフレットに美辞麗句を並べる以上の意味を持たなければならない。時には、デベロッパーが「あえて建てない」と決断したその選択の中にこそ、それが見えるべきなのだ。

コミュニティに包まれた我が家

セカンドハウスは、従来、建築デザイン、住所、そして投資価値をアピールして販売されてきた。それらも依然として重要だが、富裕層の買い手は「現地に到着した後に何ができるか」をより重視するようになっている。

その家は家族の生活を楽にしてくれるか? 友人たちは訪問のたびに面倒な段取りをすることなく集まれるか? プライバシーを保ちながらも、もてなし、活動、帰属感を提供してくれるか?

不動産部門ディレクターのジョン・ウォーシングは、購入の意思決定において、こうした問いが非常に大きな役割を果たすようになっていると話す。

「現代のラグジュアリーバイヤーは、特にセカンドハウスを検討する際、空間、プライバシー、自然との深いつながりを最優先しています」と彼は言う。「それは家そのもの以上の価値を求めているということです。高級不動産の購入は、それがもたらす体験や、家族や友人と一生残る思い出をいかに作れるか、という点にシフトしています」

不動産サービス大手サヴィルズの最新のグローバル調査によると、バイヤーはコンシェルジュやハウスキーピング、フィットネス施設といったブランド・レジデンスの実用的なメリットを求めつつも、自分たちのライフスタイルを高めるウェルネスや体験をこれまで以上に重視している。

プリムランドのオーナーは、午前中にハイキングを楽しみ、ゴルフをプレーし、子どもたちを空中アスレチックに連れて行ったり、フライフィッシングに出かけたりすることができる。豊富なダイニングの選択肢に加え、バブアーやラルフローレンなどのプレミアムブランドでのショッピングも楽しめ、そのすべてにオーベルジュならではの安心感に満ちたホスピタリティが行き届いている。

「家はあくまで出発点にすぎません」とプリマは言う。「美しい家なら、どこにでも建てることができます。しかし、その家を取り巻く美しい生活を創り出すことは、はるかに難しいのです」

自身がプリムランドに家を建てるという決断も、建物のスペックではなく、思い出に深く根ざしている。幼少期、彼は父親と一緒にこの土地を散策し、四輪バギーで敷地内を走り回り、崖を掘っては金だと信じて輝く石を探した。今度は、自分の子どもたちにも同じ自然をそれぞれの方法で体験してほしいと願っている。

「最も価値のある家とは、必ずしも最も憧れるような家ではありません」と彼は言う。「それは、家族の物語の一部となる家なのです」

今、なぜ私たちは自然に惹かれるのか

これをテクノロジーからの逃避と呼ぶのは簡単だが、その説明はあまりに単純すぎるように感じられる。

世界各地で遠征を率いるリーダーであり、サバイバルコンサルタント、そしてベストセラー作家でもあるミーガン・ハインは、自然に戻りたいという欲求は、デジタル疲労よりもはるかに古い根源的な何かに語りかけていると考えている。

「私たちが目にしているのは、新しいトレンドというよりも、非常に人間的なものへの回帰なのだと思います」とハインは説明する。

「サバイバルの観点から言えば、私たちの脳は、光や天候の変化、周囲の地形、食物や水がどこから得られるか、何が安全で何に注意すべきかなど、自然界を常に読み取るように進化してきました。現代の生活は驚くべき速さで変化しましたが、私たちの生物学的な身体は追いついていません」

現代の消費者は毎日、膨大な量の情報を処理している。その多くは、即座の反応を求めるように設計されている。メッセージ、通知、ニュースは、私たちが物理的に立っている場所と何の関係があろうとなかろうと、お構いなしに届く。

「自然は脳に、本能的に認識できるものを与えてくれます」とハインは言う。「感覚を呼び覚まし、私たちを『今』に引き戻し、主体性と周囲の世界とのつながりを感じさせてくれるのです」

「人々が探しているのはまさにそれだと思います。必ずしも現代生活からの逃避ではなく、その生活の中でより人間らしくいられる機会なのです」

私にとって、それこそが今回のパラダイムシフトの本質だ。消費者は必ずしも現代生活を手放したいわけではないし、快適さを排除したラグジュアリーを望んでいるわけでもない。彼らはテクノロジーやサービスが素晴らしく機能することを望みつつも、それが体験の主役に躍り出ないことを望んでいる。本能、自発性、そしてお互いのために、いくらかの余白を残しておきたいのだ。

ラグジュアリーなワードローブにも広がる自然の息吹

ラグジュアリー小売でも同様のシフトが見られる。リゾートショップは、どこにでもあるありふれた品揃えを脱却し、その土地の設定と本質的に結びついた製品を選びつつある。プリムランドでは、マウイジムホールダーネス&ボーンなど多くのブランドが、リゾート独自のリゾートコア商品とともに並び、ゲストにパーソナルな思い出の品を提供している。

自然の影響はワードローブにとどまらない。ラグジュアリーなインテリアやフレグランスにも影響を与えており、アメリカ西部からインスピレーションを得たバオバブ・コレクションの「ハロナ」シリーズがその一例だ。手吹きガラスの器にはミネラルブルー、フロストホワイト、アンバー、サフランの色合いが用いられ、フレグランスはローズマリー、シダーウッド、ベチバー、モスをベースに構成されている。

「ブルーワールド」は、広大な空と冷たい砂漠の夜の青を想起させる。「ホワイトワールド」は、塩原、淡い塵、そして冬の光を捉えている。「イエローワールド」は、太陽に温められたキャニオン、枯れ草、そして冬のキャビンの温もりを表現している。キャンドルと特大の「トーテム」ディフューザーとして展開され、コレクションの価格は155ドル(約2万円)から1150ドル(約17万円)となっている。

単なる「おしゃれな背景」を超えて

もちろん、これらすべてにはリスクもある。自然が収益性の高いラグジュアリーのコードになった途端、それを至る所に適用したくなる誘惑に駆られるからだ。

数本の木を植え、散策ルートを作り、アースカラーを取り入れるだけでは、意味のある自然の提案とは言えない。富裕層の消費者はそれほど甘くない。彼らは、自然の景観が尊重されているのか、それとも単に飾り立てられているだけなのか、そして開発が限界容量に達した後も、プライバシーやウェルビーイングという謳い文句が守られているかどうかに気づくはずだ。

ラグジュアリービジネスにとってのチャンスは、自然を単なるもう1つのアメニティに変えることではない。消費者が自然に戻る際、一体何を回復したいと願っているのかを理解することなのだ。

ある人にとって、それはその場所の静寂であり、またある人にとっては冒険や自由、家族との時間かもしれない。それらに共通するのは、再び自分の人生にしっかりと「今存在している」と感じたいという強い願いだ。

プリマは、現代におけるラグジュアリーの定義を「手に入れられるモノではなく、ますますアクセスが困難になっているもの、すなわち空間、静寂、プライバシー、時間、そして本物のつながりなのだ」と表現している。

「すでに美しいものを手に入れている人々にとって」と彼は言う。「もっと深いものへの憧れがあります。家族と一緒に森を歩くこと、友人と火を囲んで座ること、あるいは朝起きたときに最初に聞こえるのが鳥のさえずりであるような場所で目覚めること、といったものです」

ラグジュアリーは今後も、並外れた素晴らしい製品を作り、販売し続けるだろう。しかし、最も人々の心を動かすその約束は、もはや消費者に「より多くのもの」を与えることではないのかもしれない。

それはむしろ、ほんのしばらくの間であっても、彼らに注意力と「自分自身」の感覚を取り戻させてくれるということなのかもしれない。

forbes.com 原文

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