その答えは、当然ながら「両方」である。
大半の財務指標において、マイクロソフトは完璧に整備された機械のように稼働している。昨年の純利益は219億ドルを記録し、売上高に対する利益率は28%という驚異的な高さを示した。マイクロソフトのブランドは、コカ・コーラやキリスト教と同じくらい広く普及している。ウィンドウズとオフィスのシリーズは、それぞれ世界中で10億人以上のユーザーをもつ。
しかし、マイクロソフトの成長率は、2000年代半ばの年15%から、現在ではわずか6%程度へと減速している。この10年間に投入した野心的な新製品、たとえば検索エンジンのBing、ウィンドウズ フォン、サーフェス・タブレットなどは、莫大な費用をかけた割にわずかなシェアしか獲得できなかった。
シリコンバレーには、マイクロソフトはもはやイノベーションを起こせないという見方がある。マイクロソフトの取締役たち自身も、バルマー体制下の企業文化があまりに傲慢で内向きになったと懸念していた。その閉鎖的な体質が、米ワシントン州レドモンドに拠点を置く同社を、グーグルやアップル、アマゾンといった機敏なライバルに対抗しにくくしていた。
内部の候補者がこうした混乱を収拾することは珍しい。過去10年間にわたってマイクロソフトの欠陥を許容してきた人物が、突然新鮮な目で自社を見つめ直し、「もうたくさんだ!」と宣言するなどあり得るだろうか。
威嚇を捨て、傾聴を流儀に
ところが、就任から100日が経過した現在、ナデラは「反バルマー」の立場を明確に確立した。広報担当者はそのような路線否定を認めていないものの、机を叩くような威嚇的な態度は消え去り、穏やかな好奇心が新たな流儀となった。
従来のビジネスモデルの根幹は見直されている。巨額の商機をものにする話や財務目標の達成に関する話題は減り、新たなユーザーを大量に獲得するために利益を再投資することへと重点が移った。今年後半に予定されているウォール街のアナリスト向け終日説明会が開かれれば、ナデラにとって重要な節目となる。その際の見出しはおそらくこうなるだろう。「成長エンジンを再び加速させるため、短期的な収益に関して私に猶予を与えてほしい」。
ナデラの変革計画の1つは、自らの見解を公表する前に、社内の問題を正すことである。バルマーは格好のコメントを提供してくれるCEOだったが、多くの場合、結果よりも言葉が先行していた。現在のナデラは、主要な取材対応を避け、顧客、パートナー、従業員、株主に集中している。
しかし、テクノロジー大手のCEO(ヒューレット・パッカードのメグ・ホイットマンなど)から1990年代の昔の同僚に至るまで、24人を超える「サティア研究者」に話を聞くと、新しいリーダーの人となりと今後の方向性について明確な全体像を描き出すことができる。まず、適切な製品を市場に投入するナデラの直感について見てみよう。ワークデイの会長アニール・ブスリはこう語る。
「彼は技術的に非常に鋭敏です。イノベーターでもあります。どれほど優れたアイデアであっても、最初は巨大なビジネスに見えるわけではないことを、彼は熟知しています」
対面会議でのナデラが重視するのは、今月末の契約に汲々とする営業的な発想ではない。3〜5年後の世界がどう変わるかを見据える、技術者としての探究心だ。彼の思考は、マイクロソフトの宣伝文句に囚われていない。その宣伝への過信こそが、かつてバルマーをつまずかせた要因だった。今年のフォーブス「ミダス・リスト」でトップに輝いたセコイア・キャピタルのベンチャー投資家、ジム・ゲッツにナデラの印象を尋ねると、会話を一気に飾らない本音が飛び交うものへと変わる。ゲッツはこう語る。
「サティアは、いっさい言い訳をしません。側近を連れず、一人で会いに来ますよ。私たちが世界の動向をどう見ているのかを知りたがっています。彼は私がこれまで会ったマイクロソフトの幹部の中で、最も自己批判ができる人物です。同時に、彼は極めて優秀なソフトウェア戦略家でもあります」


