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2026.09.18 10:30

AI開発の減速は「安全対策か競争戦略か」、アンソロピックの提案を読み解く

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自主的な減速は、資金力のある先行企業ほど有利に働く

競合各社が自主的に開発速度を制限すれば、市場全体の技術進歩の速度を企業同士で決める「緩やかなカルテル」のように機能する。安全対策を理由に、新規参入のハードルを引き上げる効果も生じる。

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その影響を受けやすいのが、先行企業との差を縮めているオープンウェイトモデルの開発組織や中国のAI企業だ。中国のアリババはQwenを展開し、DeepSeek(ディープシーク)も新モデルを速いペースで公開している。DeepSeekは2026年9月、モデルの学習済みパラメーターである「重み」を誰でもダウンロードできるモデルを公開した。

こうした追随企業が安全基準を満たしながら最先端水準を維持するには、計算資源、データ、安全対策にかかる費用を負担し続けなければならない。資金力のある大手ほどこうした費用を負担しやすいため、自主的な減速は先行企業よりも追随企業に重い負担を課すことになる。

アモデイはさらに、後発企業が低コストで先行企業との差を縮める手段にも規制を求めている。論考では米政府に対し、「権威主義国の企業による無許可の蒸留を厳しく取り締まる」よう要請した。

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蒸留とは、高性能モデルの回答を使って、より低コストのモデルを訓練する手法だ。アモデイは、蒸留によって「後発企業は、自前で同等のAIを開発する場合のごく一部の費用で差を縮められる」としている。

開発減速に加えて蒸留も制限されれば、先行企業は自社のリードを維持しやすくなる。競合を無謀な存在として描きながら優位を固定できるため、筆者はこれを「倫理的な言葉をまとった参入障壁づくり」とみている。

アモデイによると、規制を求めるアンソロピックの姿勢は「誇張、『破滅論』、規制の取り込み」と批判されてきた。「規制の取り込み」とは、企業が自社を守る方向へ規則づくりに影響を及ぼしているとの批判を指す。アモデイは次のように反論する。

「私たちは速度より慎重さを、利益より分別を優先しようとしてきた」。

減速案の背景は、巨額の企業価値とIPOか

筆者が減速案を競争戦略として見るもう1つの理由が、OpenAIとアンソロピックの巨額の企業価値だ。OpenAIは2026年3月、企業価値8520億ドル(約132兆600億円)で資金を調達した。アンソロピックの一部投資家は、同社が上場すれば企業価値は2兆ドル(約310兆円)に達する可能性があるとみている。これほど高い企業価値を正当化するには、実際に利益を生み出す必要がある。

アンソロピックがIPO(新規株式公開)に向けた投資家への説明を本格化させるのは、早くても2026年10月中旬とみられる。アルトマンは米誌『Fortune』に、OpenAIが2026年中に上場する可能性は低いと述べた。

ウォール・ストリート・ジャーナルが報じた社内推計によると、OpenAIの黒字化は早くても2030年になる。アンソロピックが投資家に示した調整後営業利益の黒字実績も、暫定値で、会計監査を受けていない1四半期分にとどまる。両社とも安定して利益を上げた実績はまだない。

こうした状況では、最先端開発の減速はIPOを控える企業にとって、投資家に示す成長シナリオと高い企業価値を守る効果を持つ。投資家が求めるのは利益への道筋であり、モデルを次々に公開して値下げ競争を激化させる展開ではない。

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