経営・戦略

2026.09.20 09:00

「顧客価値」重視のコストコ、「株主価値」重視のIBM その明暗

Jammer Gene - stock.adobe.com

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1985年、当時Costco(コストコ)の最高執行責任者(COO)だったクレイグ・ジェリネックは、共同創業者のジム・シネガルに対し、同社が1.50ドル(約233円)のホットドッグとドリンクのセットで赤字を出していると伝え、値上げを求めた。シネガルの返答は冗談ではなく、経営上の鉄則だった。

「あのホットドッグを値上げしたら、タダじゃおかないぞ。何とかしろ」

ジェリネックは何とかした。コストコは製造を内製化し、コストを削減し、顧客への約束はそのまま維持した。このセットは1985年以来、1.50ドル(日本のコストコフードコートでは税込180円)を維持している。

長年にわたり、これと同じ優先順位が適用されてきた。商品のマークアップ(値付けの上乗せ幅)には一般に15%程度という厳格な上限を設け、低い離職率と高いサービス水準を維持する賃金と福利厚生を提供し、顧客がリピートし続けて初めて企業に利益をもたらす会員制度を導入している。シネガルが定めた優先順位は明確だった。法を守る、顧客を大切にする、従業員を大切にする、サプライヤーを尊重する、そしてその上で初めて株主に報いる、という順序だ。

コストコは今や世界最大級の小売業者の1社となった。長期の株主リターンは米国株式市場の株価指数「S&P500」を大きく上回る。利益は顧客への制約に従った結果として生まれた。それは出発点の目的ではなかった。

収益ロードマップ

一方、テック大手IBMは、CEOのサム・パルミサーノの下、正反対の道を選んだ。IBMの2010年および2015年の収益ロードマップは、一定の期日までに1株当たり利益(EPS)を倍増させることを同社の最優先事項とした。顧客の姿はほとんど描かれていなかった。

その後の10年間で、IBMは自社株買いに1000億ドル(約15兆5000億円)超を投じた。多くの場合、それは設備投資と研究開発費を合わせた額を上回っていた。自社株買いは発行済み株式数を減らすため、売上高が伸びなくてもEPSは上昇し得る。役員報酬はこれらの目標に連動していた。顧客に対して何かを取りこぼしても、ペナルティはなかった。

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