筆者はずっと資本市場で仕事をしてきた者である。そこで学んだのは、株式市場は人々が何を望んでいるかを、コモディティー(商品)市場は世界の経済活動を支えるモノに何が起こっているのかを教えてくれる、ということだ。
ドローン(無人機)をめぐる話で最も重要な数字は防衛銘柄の株価ではない──。こう言うと、読者は意外に思うかもしれない。でもどうか、ぜひ最後まで聞いていただきたい。
ブルームバーグのデータによると、2週間ほど前、欧州のガスオイル(軽油)と北海ブレント原油の価格差は1バレル約94ドルをつけた。欧州のガスオイルは世界の大半の地域でディーゼル燃料や暖房油の価格の指標になるものだ。精製マージンにあたるこの価格差は通常、12~18ドルぐらいであり、ロシアがウクライナに全面侵攻し、欧州が燃料の確保に奔走した2022年のエネルギー危機の最悪期でも71ドル程度だった。
足元ではそれをかなり上回っている。また、当時の水準を超えた状態は今年3月下旬から続いている。
これは産油国のカルテルが減産した結果でもなければ、メキシコ湾岸の施設がハリケーンの被害を受けた影響でもない。安価なドローンが、原油をディーゼル燃料などに精製する設備を組織的に破壊し続けてきたことが大きな要因だ。こうした設備を再建するには、爆破するよりもはるかに長い時間がかかる。
2万ドルのドローンに5ドルで対処する新兵器
小型のFPV(一人称視点)攻撃ドローンは、500ドル(約7万7000円)ぐらいからせいぜい数千ドルで製作できる。イランで設計された自爆ドローン「シャヘド136」も、1機あたり数万ドル程度だ。一方、従来の迎撃ミサイルは1発あたり百万ドル単位のコストがかかる。
このコスト比が持続可能なものではないのは明らかだ。2万ドル(約310万円)の兵器を破壊するのに400万ドル(約6億2000万円)も費やしているようでは、いくら命中精度が高くても、戦争が終わる頃には財政的に立ち行かなくなっているだろう。
こうした点をよく理解しているのがウクライナだ。現在、ウクライナはドローンを月に数十万機も生産している。そして、戦場での即席の工夫として始まったこの兵器は、いまでは西側諸国の防衛調達を方向づける課題になっている。



