限られた情報で意思決定する力
──第1回大会に出場し、2位に選ばれました。当時、どのように予測モデルを構築したのですか。
一次情報と二次情報の両方を活用しました。企業から直接得られる情報としては、経営陣が開示する様々な財務報告データを確認しました。二次情報としては、比較対象となる他社の情報やニュース記事を数多く調べました。
幸運だったのは、ちょうど生成AIが一般に広く普及する前の時代だったこと。ChatGPTに入力すれば済むという状況ではなく、自分自身でその企業にとって何が重要なのかを考え抜く必要がありました。
一番苦労したのは言語です。外国人として日本語を理解することが、間違いなく一番大変でした。日本企業に特有だと思うのですが、英語で得られる情報がある一方で、日本語でしか得られない情報もあります。すべてのデータを活用するには、両方の言語をきちんと使いこなす必要がありました。
もうひとつの壁は、不完全な情報しかない状況で判断を下さなければならないことでした。これまでの仕事では、比較的多くの情報提供を受けられる環境にいました。投資銀行でクライアントを担当していれば、アドバイザーとして情報を快く提供してもらえましたし、プライベート・エクイティ・ファームとして企業に直接関わっていれば、投資判断に必要な情報は幅広く得られました。しかし、この大会では、限られた情報の中で意思決定をすることを学ばなければなりませんでした。
──大会は数字を当てることだけでなく、その予測にどうやってたどり着いたのかというプロセスも重視しています。この経験は、その後のキャリアにどう活きていますか。
プロセスを理解することが重要だと思うのは、単に数字を当てるだけなら誰でも運良く正解できるかもしれないからです。しかし、その数字にどうやってたどり着いたかを理解していることこそ、成功を再現できるかどうかの鍵になります。
そして最も成功している投資家というのは、それを非常に長い期間にわたって続けられる人たちです。ですから、大会や勉強会を通じて、そうした良い習慣が身についたと思いますし、正しいプロセスとは何かを理解する助けになったと思います。
また、プロとしての経験を重ねるにつれて、金融にはより人間的な側面があることに気づくようになりました。情報はどこかに存在していても、それを引き出すには適切な人に話を聞く必要がある。これは完全な情報がない状況だからこそ、気づくことができたことだと思います。


