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2026.09.16 02:54

AI時代のデータ戦略、鍵を握るのは「量」ではなく「質」

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今日の企業は膨大なデータを扱っており、これまでは「あらゆるデータを収集し、アルゴリズムに解析させる」という考え方が一般的だった。しかし、その考え方は変わりつつあると筆者は考えている。

ビジネスオーナーである私たちは、さまざまな情報源からのデータに溢れている。オンラインマーケティングキャンペーンによる顧客データ、ウェブ上の競合他社調査、自社のPOSシステムから得られる売上データなどだ。しかし、それらのデータは、理解し、意味を見出し、洞察を導き出すことができて初めて価値を持つ。現在では、単に大量のデータを消費することだけでなく、データの正確性、構造、そしてユーザビリティ(使いやすさ)に焦点が移りつつある。これはAI時代において特に重要であり、データ管理における品質管理を怠れば、バッドデータ(質の悪いデータ)が気づかないうちに利益を蝕むことになりかねないからだ。

「バッドデータ」の定義

「バッドデータ」が指すものは多岐にわたる。不完全なデータ、古いデータ、重複したデータ、矛盾したデータ、あるいは単に誤ったデータなどだ。200人の最高マーケティング責任者(CMO)を対象としたアドベリティ(Adverity)の2025年の調査によると、CMOは自らのチームがマーケティングの意思決定に使用しているデータの約45%が不完全、不正確、あるいは古いものであると考えていることが明らかになった。

大半の企業がバッドデータに埋もれているとしても、それはおそらく企業のせいではない。前述したように、あらゆる方向からデータが流入してくるからだ。しかしそれは、すべての企業がバッドデータに対処するための戦略を必要としていることを意味している。

バッドデータが業績を破壊する仕組み

2016年、ハーバード・ビジネス・レビュー(Harvard Business Review)は、バッドデータにより米国経済全体で年間3.1兆ドル(約481兆円)の損失が発生していると報じた。それから10年が経ち、米国経済全体に関する最新のデータは見当たらないが、ガートナー(Gartner Inc.)は2020年、質の低いデータによって、企業が平均して年間1290万ドル(約20億円)のコストを被っていることを明らかにした。

ハーバード・ビジネス・レビューの調査によれば、収益の損失は、従業員が不完全なデータを探し、検証し、クレンジングするために費やす時間という形で生じ得る。しかし、さらに深刻な事態を招くこともある。

2022年、ユニティ・ソフトウェア(Unity Software)は、破損したトレーニングデータが広告ターゲットアルゴリズムに混入したことで、株価が37%急落し、1億1000万ドル(約171億円)の減収を被った。同年、信用情報機関のエクイファックス(Equifax)は、データの検証不備により数百万件の消費者記録の信用スコアを誤って算出し、多額の費用がかかる一連の集団訴訟に発展した。また、2024年には米連邦準備制度理事会(FRB)が、取引データの取得が不完全であったとして、金融サービス大手のJPモルガン・チェース(JPMorgan Chase)に3億5000万ドル(約543億円)の制裁金を科した。これらの事例から得られる教訓は、意思決定や生産プロセスにバッドデータが深く入り込むほど、代償が大きくなるということだ。

この現象は、ソフトウェア開発の分野において、ジョージ・ラボビッツ(George Labovitz)とユー・サン・チャン(Yu Sang Chang)が提唱した「1-10-100の法則(コストルール)」という考え方に一致する。その仕組みはこうだ。プロジェクトの開発段階で問題が発生した場合、その対策費用は1ドル(約1万未満円)で済むかもしれない。テスト段階で問題が見つかった場合、そのコストは10ドル(約1万未満円)に上がる可能性がある。そして、本番(プロダクション)段階になるまで問題が見つからなかった場合、修正には100ドル(約1万円)のコストがかかるかもしれない。同じ基本原則がバッドデータにも当てはまる。

バッドデータが検出されない期間が長くなるほど、被害は複雑化し、雪だるま式に膨らんでいく。例えば、不正確な顧客データを検証して修正することには、時間とリソースが必要になる。しかし、そのバッドデータをマーケティング戦略、在庫管理の決定、あるいは生産プロセスに反映させてしまった場合の損失に比べれば、そのコストは微々たるものだ。バッドデータによるコストは、企業がその発見と修正にいかに能動的(プロアクティブ)に取り組むかによって大きく異なってくる。

AI時代において品質管理がさらに重要になる理由

AIツールは企業の間で広く普及しており、多くのリーダーがこれまで以上に幅広い業務をAIツールに委ねるようになっている。しかし、AIツールがこれらのタスクをどれだけ上手く実行できるかは、いかに適切にトレーニング(学習)させるかにかかっている。そして、AIモデルのトレーニングにおいて、データの品質こそがすべてだ。

AIツールは即座に結果を出すように設計されている。これが可能になるのは、「スピード」と「正確さ」の2つが組み合わさったときだけだ。AIシステムがバッドデータでトレーニングされると、そのスピードは、不正確さ、無関係さ、あるいは予測精度の低下と表裏一体になってしまう。最悪の場合、これはビジネスにおける重大なリスクになりかねず、あるいは単純にAI導入プロジェクトが失敗する原因となる。ガートナー(Gartner Inc.)は、企業は「AI対応データ(AI-ready data)」に裏付けられていないAIプロジェクトの60%を断念することになると予測している。

リーダーが取るべき対策

私たちは、「アルゴリズムがあらゆる作業を行ってくれる」という考え方から脱却する必要がある。アルゴリズムの最適化ではなく、「データの最適化」を考えるのだ。今後、企業レベルでは、データをクレンジング(洗浄)し、キュレート(整理)し、タグを付け、構造化することへの関心が高まり、それによってチームが導き出すインサイト(知見)がより有意義なものになるだろうと予測される。

データの「量」から「質」へと焦点をシフトするために、企業が取り組めるいくつかのステップを紹介する。

  • 整理する:ファイルを迅速に検索できるよう、適切にインデックス化され、ラベル付けされ、見つけやすいデータベースを構築する。
  • クレンジングする:データを検証し、重複を取り除き、エラーを特定して修正する。
  • 標準化する:すべてのデータプラットフォームでアクセス可能かつ一貫性のある標準フォーマットにデータを統合する。

このデータをマーケティングの意思決定に使うにせよ、次回の在庫発注に使うにせよ、あるいは社内のAIプロジェクトのトレーニングに使うにせよ、基本的なポイントは同じだ。そこから得られる成果は、使用するデータの質に左右される。まずは優れたクリーンなデータから始めることで、自ずと結果はついてくるだろう。

forbes.com 原文

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