優れた成果を上げるリーダーが、知識不足によって苦境に立たされることは滅多にない。より本質的な課題は、能力があることが前提とされ、専門性がしっかりと確立された段階で表面化する。それこそがまさに、これまでの実績を築き上げてきた知識そのものが、誰にも気づかれずに静かに牙をむき始める瞬間なのだ。キャリアを重ねるにつれて専門性は蓄積されていくが、それと同時に、その専門性が形成された当時の状況への執着もまた強まっていく。変化が加速する時代において、その執着は特に重大な結果をもたらしかねない。自分が知っていることと、実際に手放す必要があることとの間のギャップこそが、現代における極めて重大なリーダーシップの課題となる傾向がある。
だからこそ、「アンラーニング(学習棄却)」は、未来に通用するリーダーシップにとって最も重要なスキルのひとつとなる。アンラーニングとは、リーダーが自らの知識を点検し、何が依然として有用であるかを見極め、新しい知識や行動を定着させるための十分なスペースを作り出すことだ。バージニア・S・リーは20年以上前にこの力学を研究し、事前の知識が新しい学習を妨げる可能性があり、「アンラーニングによって新しい学習が定着する」と主張した。彼女の研究はまた、不確実性に直面するリーダーにとって重要な課題も浮き彫りにしている。それは、プレッシャーにさらされると、新しい学習内容が、古く確立されたパターンに取って代わられてしまうということだ。そのパターンが深く定着しているほど、なじみのあるやり方を「今でも有効な手法」と誤解しやすくなる。リーダーにとって、変化とは単に新しいアイデアに触れること以上のものを意味する。それは、古いやり方へのこだわりを、意図的に緩めることを求めているのだ。
アンラーニングはリーダーの規律である
アンラーニングは時に、知識を忘れることや、現在のリーダーシップの地位を築く原動力となった専門性を捨てることと誤解される。リーダーシップにおいてより有用な解釈は、「意図的な再評価」だ。つまり、意思決定に影響を与え続けている前提や習慣、プロセス、アイデンティティを特定し、それらが現在率いている環境において依然として適切であるかを検証することである。リーはさらに、学習を事前知識によって形成されるプロセスと表現し、新しい経験が既存の知識構造に適合しなくなったときに、その構造がどのように修正されるかを説明している。リーダーシップにおいて、この葛藤は極めて重要だ。手放すのが最も難しい習慣とは、往々にして、かつて非常にうまく機能していたものだからである。
「コンシャス・リーダーシップ・パートナーズ(Conscious Leadership Partners)」のCEOであり、「The Unlearning Advantage™」の創設者でもあるカロリーナ・カロは、インタビューの中で、リーダーシップのアイデンティティという観点からこのパターンについて説明した。彼女はリーダーシップのアイデンティティをマッピングする活動の中で、「アウトプットによる価値(Worth Through Output)」と呼ばれるものを特定した。これは、リーダーの価値は、彼らが生み出し、解決し、成果を出したことによって測定されるという信念である。このパターンにおけるアイデンティティのひとつが「エキスパート」だ。これは、自らの価値観が「答えを持っている人物」であることと結びついているリーダーを指す。カロは、このようなリーダーは非常に有能で役立つ存在と見なされるかもしれないが、そのパターンは意図せずして依存的なチームを作り出し、主体的精神やアカウンタビリティを低下させ、イノベーションを阻害する可能性があると警告している。
この違いは、優れた成果を上げるリーダーたちに重要な問いを投げかける。自分の価値を確立するのに役立ったまさにその行動が、他者が生み出せる価値を制限し始めたらどうなるだろうか。アンラーニングは、リーダーにその問いへ答える手段を与えてくれる。
アンラーニングは極めて人間的なプロセスである
自らの学びの進化は、極めて人間的な現象だ。新しい情報が得られれば、考えを変えることができる。環境が変われば、新しい行動を身につける。成長に伴って不要になった信念を手放し、プレッシャーによってなじみのあるやり方が安全だと感じられれば、時に古い考え方に引き戻されることもある。リーダーはこうした進化を自らの人間性の一部として受け入れるが、リーダーシップの実践においては歴史的に、リーダー自身の人間性が顧みられる余地はほとんど残されてこなかった。
リーダーはしばしば、確信を持ち、自信を維持し、次に何が起こるか分からなくても主導権を握っていることを示すよう求められる。しかし、リーダーシップにおける「脆さ(脆弱性)」に関する研究は、特に不確実性の高い環境において、そうした期待に疑問を投げかけている。エイミー・エドモンドソンとトマス・チャモロ=プレミュジックはハーバード・ビジネス・レビュー誌の中で、リーダーシップにおける脆弱性、特に限界を認め、軌道修正を進んで受け入れる姿勢は、見せかけの確信よりも強力な強みになると主張している。アンラーニングには、まさにその人間性が必要なのだ。考えを変えることが、過去の決定の背後にあった知性を否定するものではないと理解しなければならない。アプローチを修正することは、それを構築するのに役立った専門性を無効にすることではない。リーダーとしての成熟とは、当時の情報、経験、状況において最善の決断を下したことを認めつつ、今、異なる決断を下すことを自分自身に許可することなのである。
アンラーニングの文化を育む
リーダー自身のアンラーニングの能力は、最終的に周囲の人々に対し、心理的安全性があり、自分たちも同様にしてよいというシグナルを送ることになる。もし軌道修正が「失敗」として扱われれば、人々は変更すべき証拠が提示された後も、古いアイデアに固執し続けるだろう。疑問を呈することが「反抗」と解釈されるなら、人々は問い直しや挑戦ではなく、確実性を守ることを学ぶ。リーダーが自分自身の考えを静かに進化させる一方で、周囲のメンバーには最初から正しい答えを出すことを求めているようでは、アンラーニングは組織の自律的な能力にはならず、極めて個人的な実践に留まってしまうだろう。
アンラーニングの文化を育むとは、見直しのプロセスを可視化し、具体的な形にすることを意味する。リーダーとチームは、新しい情報によって考えが変わった瞬間を共有し、当たり前になっていた前提に挑戦するよう促し、チームが「これは以前はうまくいきました。しかし、今回は有効だとは思いません」と言える余地を作ることができる。時間をかけて、変化に伴う社会的リスクが少ない文化を築けば、人々は次のステップを形作るためにより積極的に関わることができるようになる。
リーダーシップにアンラーニングを組み込むための実践法
1. 新しいものを追加する前に、スペースを作る
時間は、組織が真に重視しているものを明確に示す指標の一つだ。リーダーが新たな優先事項をアナウンスし、新しいイニシアチブを導入し、あるいは新たな能力開発を求めたとしても、メンバーのスケジュールが昨日の優先事項に縛られたままであれば、組織は依然として古いシステムのままで動いていることになる。アンラーニングを時間をかけて実践していくには、現在どこに注意が向けられているかを検証し、新しいものを追加する前に、何を削減し、再設計し、あるいは廃止すべきかを特定する必要がある。
たとえば、AIを活用したワークフローを導入するリーダーは、まず、どの会議、承認プロセス、報告構造、あるいは手作業が以前の働き方に合わせて構築されたものかを点検することから始めるだろう。問いは「AIをどこに組み込めるか」というレベルにとどまらず、「かつての環境で必要だったからという理由で、未だに時間を費やしている作業は何か」という大きなものになる。未来に対応できるリーダーは、時間を戦略的リソースとして扱うことで、変化を受け入れる余力を作り出す。「すべてが重要」なままであれば、実際には何ひとつ変わっていないのだ。
2. 過去の前提への資金投入をやめる
予算は往々にして真実を語り、何が優先されているかを明確に示す。組織がイニシアチブやイノベーションについて熱心に語る一方で、資金、技術、専門的学習、組織のキャパシティを、過去の現実に合わせて設計された慣行に割き続けていることは少なくない。アンラーニングが目に見える形になるのは、リーダーが自らのリソース配分について、組織が目指すと公言している方向性と一致しているかどうかを真摯に検証しようとするときだ。
これには、規律ある棚卸しが必要となる。どの投資が有意義な価値を生み出しているから継続しているのか。慣れ親しんでいるから継続しているだけのものはどれか。組織が2〜3年後に必要とする能力のうち、現在過小評価され投資が不足しているものはどれか。リーダーは、思慮深い再配分を目指すべきである。リーダーには、過去の投資が戦略的有用性の終わりに達したことを認識できるだけの知的謙虚さと、次に来るものに向けて能力を構築し始める先見の明の両方が必要なのだ。
3. 専門性を「独占」から「増幅」へシフトする
実績のあるリーダーにとってアンラーニングが最も難しいことの一つは、自分が個人的に提供する答えの数が増えるほど、リーダーとしての価値も高まるという信念だ。カロが提示する「エキスパート」というアイデンティティは、ここで有用な教訓を与えてくれる。専門性がアイデンティティと絡み合うと、リーダーは意図せずして、情報、意思決定、問題解決が常に自分を経由するシステムを作り出してしまう。リーダー自身の能力の高さが、組織のボトルネックになってしまうのだ。未来に対応するリーダーは、人材の配置を変える。意思決定の権限を関連する知識を持つ現場のメンバーに分散させ、現場に近いがゆえに経営陣が到底知り得ない情報を持つ人々から視点を取り入れ、自らの専門知識を組織全体の能力向上(エンパワーメント)に活用する。
他のみんなが当たり前だと思っているプロセスに疑問を投げかける新メンバーは、何か価値あるものを見ているのかもしれない。実施段階に最も近いアソシエイト・ディレクターは、役員会からは見えない制約を理解しているかもしれない。最先端の技術を試している社員は、組織のヒエラルキーをまだ上がってきていない知識を持っているかもしれない。好奇心豊かなリーダーは、自ら変化を体現することで変革を牽引する。彼らは、専門知識が価値を持ち続けながらも、その表現方法を「答えを持っている」ことから「より効果的な解決策が生まれる環境を整える」ことへと進化させるのだ。
変化のスピードに合わせてアンラーニングを行う
リーダーシップ開発のペースは変わった。組織が前世代のテクノロジーを十分に活用し切る前に、新たなテクノロジーが進化を遂げる。過去の前提に基づくポリシーが残ったままで、労働力の期待は変化していく。多くのシステムが処理しきれないスピードで、新しい情報がリーダーに押し寄せる。そのような環境においては、学習する能力が依然として不可欠であると同時に、何を「手放すべきか」を判断する能力も同じくらい重要になる。ここに、アンラーニングが持続的な影響力を維持し、さらにはリーダーとして生き残るための条件となる理由がある。リーダーは、状況が変化したことを認識し、その新たな状況が何を求めているかを再考し、過去の成功を足かせにすることなく対応する能力を強化しなければならない。
あなたが率いる世界は、十分な準備が整うのを待たずに進化し続ける。自分の存在意義は、その変化に迅速に適応し、価値を提供し続けられるかどうかにかかっている。未来を切り拓くリーダーは、自分をここまで導いてくれたものを、それを築いた実績として尊重し、今なお提供できる価値を検証し、次に築くべき未来にそぐわなくなったときには手放すべきであることを理解している。



