テクノロジー

2026.09.18 12:00

米中による量子技術競争の現在地──米国は商用基盤、中国は量子通信網で優位を築く

stock.adobe.com

stock.adobe.com

量子コンピューティングと暗号技術で強い商用基盤を持つ米国と、国家規模の量子通信網で先行する中国の競争は、単純な投資額の比較では捉えにくくなっている。競争の焦点は、量子チップ、誤り訂正、ソフトウェア、通信網、耐量子暗号標準、製造・供給網、人材、顧客までを一体で築けるかへ移った。米国と中国は、異なる分野でそれぞれ優位を形成している。

2019年から変わった米中量子競争の軸

2019年10月のForbes記事では、米国と中国が「世界で最も重要な技術競争」を繰り広げていると論じた。当時の構図は比較的単純だった。中国は技術的な自立を目指す国家量子戦略を始動させたばかりで、習近平国家主席の下、2030年までの大きな成果を目指して数十億ドル(数千億円)規模の量子コンピューティング計画が進められていた。

米国ではすでに、5年間で12億ドル(約1860億円)の支出を認める国家量子イニシアチブ法が成立していた。著者は当時、この資金では中国の取り組みに対抗するには足りないと考えていた。2019年に米国が量子コンピューティングで先行していた主因は、IBM、グーグル、マイクロソフトによる多額の投資だった。

(注:著者が所属するMoor Insights & Strategyは、多くのテクノロジー企業に助言などのサービスを提供している。本記事で取り上げる企業ではグーグル、IBM、マイクロソフトが含まれる。また、Atom Computing、D-Wave、GlobalFoundries、IonQ、Quantinuum、Rigetti Computingとは過去に有償の取引関係があった。)

当時、中国が米国を上回っていた唯一の技術分野は量子通信だった。テキサス大学の理論計算機科学者スコット・アーロンソンは、中国が量子通信に多額を投じたのに対し、米国は量子計算での大きな優位を維持する道を選んだためだと説明した。グーグルは2019年10月、古典コンピューターなら数千年かかるとされた問題を200秒で解き、特定の計算で量子コンピューターが古典コンピューターを圧倒する「量子超越性」を達成したと発表していた。著者は当時、中国がこの成果に短期間で追いつく可能性は低いとみていた。

著者が2019年の記事で最も懸念していたのは、量子技術の競争が数カ月ではなく数十年に及ぶため、米政府による長期の追加資金が必要になることだった。長期的な資金投入が必要だという見通しは的中したが、競争の軸は大きく変わった。勝敗を分けるのは投資額そのものではなく、ハードウェアから誤り訂正、ソフトウェア、製造、顧客までをつないだ実用的な商用基盤をどちらが築けるかになった。競争軸の変化により、小規模な新興企業にも参入機会が生まれ、複数社が有力企業へ成長した。

次ページ > 2026年の米国の量子分野:商用量子計算と耐量子暗号標準で先行

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事