Forbes JAPAN 2026年11月号の第2特集は、日本発で世界を驚かす共創プロジェクトに光を当てる「Xtrepreneur AWARD 2026」。4回目の今回は応募要件から大企業の参画を外した。これまで以上に多彩な顔ぶれから、6つの共創プロジェクトを選出した。組織のレガシー(資産)をかけ合わせ、一社単独では生み出せない大きなインパクトを創出する共創物語に迫る。
デジタルクラフツマンシップ賞を受賞した、計算解析と熟練加工技術による次世代自動車構造の共創プロジェクトだ。東大発の設計企業と群馬の試作メーカーが取り組む循環型開発とは。テクノロジーと職人の相性の良さが、固定化したものづくりの世界を変える。
2026年5月、パシフィコ横浜「人とくるまのテクノロジー展」。Nature Architectsと浅野が共同制作した試作品が、自動車メーカーや大手サプライヤーの目を引いた。ひとつは、衝突時に乗員を守る部品「クラッシュボックス」。通常は直方体の筒だが、表面は折り紙を思わせるダイヤモンドパターンや、曲線がうねる「チューリング」パターンで成形され、衝撃のエネルギー吸収性能を高めている。もうひとつは、バンパーとクラッシュボックスを一体化したプレス構造体。耐衝突性能を維持したまま部品点数を減らし、軽量化を追求したこれまでにないものだ。
展示会から遡ること5年。東京大学発スタートアップのNature Architectsと、群馬の試作開発メーカー・浅野は、関東経済産業局の紹介で顔を合わせた。当時の浅野は、売り上げの約9割を1社の自動車メーカーに依存しており、「自社だけでは生み出せない技術や発想を持つパートナーとの協業を模索していた」と社長の浅野圭祐は振り返る。一方のNature Architectsはメタマテリアルと折紙工学を基盤とする設計を手がけていたが、アルゴリズムで革新的な構造を設計できてもそれを現実の「かたち」にする製造技術を持たなかった。社長の須藤海は言う。「パズルが合うように、お互いを補完する能力を持っていた。ミッシングピースだった」。
ピースがはまり、協業が本格化したのは24年。活況なEV開発を背景に衝突安全構造の刷新が迫られるなか、「あるべき未来の設計」を示そうとした須藤は、計算上は高い性能が出ても、そもそも作れるのか?という、ものづくりの壁に突き当たった。そこで浅野の出番だ。
なぜ浅野なのか──。国内に数ある試作メーカーの多くが、金型設計や単品製作など約9つある工程の一つを切り取って事業とするのに対し、浅野は設計から自動車一台分の組み付けまでを社内で完結し、量産の成立性の検証まで開発段階で提案できる。前例のない構造でも「やってみましょう」から始める職人の姿勢を、須藤は「まず難色を示す企業が少なくない中、その姿勢が違う」と評する。高度な設計と、それを形にする職人。片方だけでは革新は図面のまま止まるのだ。



