経営・戦略

2026.09.15 16:46

優秀な人材が去るとき、収益はすでに漏れ始めている

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ビジネスの動きがかつてないほど加速している。AIや新しい働き方、新鮮な視点などは、チームがアイデアを検証し、より迅速に実行するための要因のほんの一部にすぎない。そうした進歩には確かな価値がある。しかし、スピードとスマートな仕事ぶりだけでは、持続可能な成長は生まれない。

持続可能な成長とは、適切な人材が定着し、より優れたシステムを構築できるようビジネスを支援することで実現するものだ。ここで、私はすべての従業員を引き留めるべきだと言っているわけではない。いかなる犠牲を払ってでも定着させることだけが戦略ではない。優先すべきは、その判断力と経験によって、長期にわたりパフォーマンスを強化し続けられる人材を維持することだ。

そのとき初めて、従業員の定着は単なる人事指標ではなく、成長戦略となる。

「オペレーティングシステム」が機能するとき、従業員は定着する

私の経験上、優秀な従業員が辞めるのは、福利厚生が一つ足りないからではない。仕事が必要以上に困難になったときに、彼らは去っていく。説明もなく優先順位が変わるとき。日常的な決定に複数の承認が必要なとき。一時的なプレッシャーが永続的なものになり、業務負荷が高い状態が続くとき。あるいは、マネージャーが問題を認識していながら解決できないときだ。

ギャラップ社によると、自主退職した人の42%が、自身の離職は防ぐことができたと答えている。この数字は、対抗条件(カウンターオファー)の不足ではなく、リーダーシップによる対応の遅れを示していると私は考える。あまりにも多くの企業が、何カ月も前から警告サインが出ていたにもかかわらず、従業員が辞表を提出して初めて、対処可能な問題に取り組み始めるのだ。

その段階になってから昇給を提示しても、退職告知期間が延びることはあっても、組織に対する見方が変わることはほとんどない。それよりも、従業員の定着率は、職務設計や働き方、評価、そして日々の業務環境によって形成されることの方が多いと私は実感している。

従業員の定着が収益を守る

顧客関係管理(CRM)システムに案件が表示されているからといって、それだけで収益が保護されるわけではない。そのアカウントを理解し、対話を前に進め、何が原因で取引が失速するかを察知する「人」が依然として必要なのだ。

経験豊富な従業員は、見込み客がなぜパイプラインに入ったのか、どの質問が未解決のままなのか、実質的な最終決定権を持つのが誰なのかを把握している。その従業員が去ると、案件は別の担当者に再割り当てされるかもしれないが、その背景(コンテキスト)が明確に引き継がれることは稀である。新しい担当者は、企業がすでに保有していた情報を学び直しながら、信頼関係を再構築しなければならない。その過程で詳細が見落とされ、同じようなフォローアップが繰り返され、顧客は「この会社は本当に自社のことを理解しているのだろうか」と不信感を抱くようになる。

私は、顧客と直接接する優秀な従業員を、収益を支えるインフラの一部だと考えている。彼らを繋ぎ止めることは、業務の混乱を減らし、企業がすでにコストをかけて創出した機会を守ることに繋がる。

離職はコンバージョンを低下させる

離職による財務上の影響は、従業員の最終出社日から始まるわけではない。多くの場合、その数カ月前から始まっているのだ。

その兆候は、まず小さなシグナルとして現れる。レスポンスの遅れ、キャンペーンの遅延、一貫性のないコミュニケーション、そして進捗が止まってしまった案件などだ。

コンバージョン率が低下する頃には、根本的な問題が四半期全体にわたってパフォーマンスに影響を及ぼしていた可能性がある。離職率は、人事だけの独立した指標ではない。それは「収益の漏出(リーク)」を示す早期警戒指標なのだ。

その人物が去ると、マネージャーは採用やオンボーディングへと意識を向けざるを得なくなる。残された従業員の業務負荷は増加し、現在進行中の案件へのフォーカスが薄れてしまう。

経験豊富な従業員が「案件あたりの収益」を高める

ビジネスを理解している従業員は、目の前の売上以上の価値を案件に見出すことが多い。

彼らは、どのようなときに追加のサービスが顧客の利益になるか、どのアカウントに拡大の余地があるか、そして標準的な提案をいつ調整すべきかを熟知している。また、真の商機と、リターンを生まないであろう無駄な動きを区別することもできる。

そうした判断力は、顧客や製品、そして過去の実績に繰り返し触れることで養われる。経験の浅い従業員は、目の前の売上は達成できても、その周辺にあるより大きな機会を見落としてしまうかもしれない。

経験は効率性だけでなく、意思決定の質をも向上させる。成長はリード(見込み客)を増やすことだけに依存することはできない。ビジネスは、すでに手元にある機会を育成することにも長けていなければならない。

真の損失は「稼働能力」の喪失

従業員を補填すれば人数は元に戻るが、稼働能力がすぐに元に戻るわけではない。

新入社員が製品、社内システム、チームの力学、顧客の期待を理解するには時間がかかる。その間、経験豊富な従業員はサポートを提供し、業務をレビューし、防ぐことのできたミスを修正することになる。

このサイクルが繰り返されると、組織に残った人々は、同じ役割をゼロから再構築することに週の多くの時間を費やすことになる。

収益の成長には、需要に応じて行動できる能力が必要だ。企業が案件を創出し続けられたとしても、それらをコンバージョンさせ、サービスとして提供するために必要な能力を失ってしまっては意味がない。

従業員の定着がマーケティング効率を向上させる

マーケティングの成果は、アクセス数やリード数、顧客獲得コストなどで測定されることが多い。これらの数字も重要だが、その費用が収益に結びつくかどうかを決めるのは、それらを処理するチームである。

メンバーが固定されたセールスチームや顧客対応チームは、キャンペーンの意図を理解している。彼らはリードの質のパターンを認識し、なぜ特定の見込み客がコンバージョンに至り、他は至らないのかを説明できる。彼らのフィードバックにより、マーケティングチームは単にアクションを生み出すだけのチャネルと、商業的に価値のある機会を生み出すチャネルとを区別できるようになる。

離職が頻繁に起こると、このフィードバックループが弱まる。新入社員は、キャンペーンが不適切なターゲットを引き寄せているのか、それともセールスプロセスが適切なターゲットをコンバージョンさせることに失敗しているのかを判断するための背景知識を持っていない可能性がある。

その洞察がなければ、リーダーは広告費などを増やすことで解決しようとするかもしれない。しかし、引合(需要)を増やしても、実行力の弱さは解決しない。それは、対応に苦慮しているシステムにさらに多くの案件を送り込むだけにすぎない。

従業員が定着すれば、さらなる需要創出のために追加のコストを投じる前に、既存のマーケティング投資からより多くの価値を引き出すことができる。

適切な人材を引き留める

すべての離職が同じ商業的コストをもたらすわけではない。一部の離職は、パフォーマンスの強化、スキルの向上、および新しい思考プロセスをもたらす機会となる。目的は、特に変革の時期において、組織のナレッジやビジネス上の関係性に大きな影響を与え、成長を実質的に左右する従業員の喪失を減らすことだ。

リーダーは、どの従業員がコンバージョンを向上させ、優れたアイデアをチーム全体が活用できるプロセスへと落とし込んでいるかを把握しておく必要がある。彼らの価値は、彼らが去り、業務のスピードが落ち始めるまで、見過ごされがちである。

新入社員は古い前提に疑問を投げかけてくれる存在であり、私はそれを歓迎する。しかし、そこから利益(リターン)を得られるのは、有益な変化を組織に定着させられる人材を維持しているからこそだ。これこそが、従業員の定着が単なる人事の取り組みではなく、収益戦略となる所以である。

forbes.com 原文

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