Forbes JAPAN 2026年11月号の第2特集は、日本発で世界を驚かす共創プロジェクトに光を当てる「Xtrepreneur AWARD 2026」。4回目の今回は応募要件から大企業の参画を外した。これまで以上に多彩な顔ぶれから、6つの共創プロジェクトを選出した。組織のレガシー(資産)をかけ合わせ、一社単独では生み出せない大きなインパクトを創出する共創物語に迫る。
エネルギーソリューション賞を受賞したのは、衛星データ×AIで蓄電所用地開発を支援するDeal Techプロジェクトだ。電力需給の安定化を担う系統用蓄電所への注目が急速に高まっている。最大の難関が用地確保だ。互いに未開の領域で出会ったパワーエックスとJAXA発WHEREが新たな市場に挑む。
「業務フローの組み立てが思うように進まず、途方に暮れていました」。蓄電池メーカーとして、電力系統に接続する系統用蓄電所の開発を進めるパワーエックスの高尾渉は、共創前の状況をこう振り返る。
再生可能エネルギーの拡大と電力需要の増加を背景に、需給バランスを調整する系統用蓄電所への注目は急速に高まっている。だが、建設用地の仕入れには膨大なステップと専門的な知見が必須で、パワーエックスにはリソースが足りなかった。そんな時、同僚からの一枚のリーフレットが高尾の目に留まる。何かの縁と思い、問い合わせたのがWHEREだった。
WHEREは、AIが解析した衛星画像に諸情報を重ね、市場に出ていない土地を探すSaaSを提供する。相談を受けたWHEREの関根ゆたかは、従来型のSaaS提供のみを望まれていないと判断。戦略、候補地のリストアップ、地権者へのDM送付、反響対応まで一気通貫の代行を提案。「業務フローへの落とし込みから反響率まで提示してもらい、あとは始めるだけの状態までもっていってもらえた」と高尾。約7300万件のデータベースとAIによるスクリーニングで、わずか数分で数百件の候補地が洗い出された。そこから最適地の条件をめぐり、両社は何度もチューニングを繰り返した。
高まる両者の熱量
共創は地道な作業にも派生した。地権者へのDMは、あえて手書き風を採用。両社で一字一句まで磨き上げた結果、通常1%を切る反響率が約3%に達した。さらに、外部委託が常だった地権者からの電話対応をWHEREは内製化。関根は「取引の最後の肝は地権者とのやり取り」と、一本目の電話の重みを語る。6月に始動したプロジェクトは、年内25件の具体的な案件化を視野に入れる。
今回、WHEREのメンバーは、パワーエックスのラボに招かれ、蓄電池の稼働音まで体感している。「『蓄電池に関して、よく知っているな』と他社から言われるほどの領域まで成長できた」と関根が笑えば、高尾は「WHEREの丁寧な業務推進と効率化の視点から学びが多い」と返し、「システム提供のみなら協業はなかった」と続けた。テクノロジーの先にある圧倒的なコーディネート能力と、細部にまで踏み込み合う信頼関係が、プロジェクトの礎と言えるだろう。
関根ゆたか◎WHERE事業開発部 Customer Success マネージャー。パワーエックスとの共創で戦略設計から地権者対応の内製化までを一貫して担う。衛星を使ったかつてない共創に期待を寄せる。(写真左)
高尾 渉◎パワーエックス電力事業部 アシスタントマネージャー。系統用蓄電所の用地開発から資材・工事の手配、契約まで一気通貫で担う開発チームを牽引。蓄電所が再エネ普及に寄与すると確信する。(同右)



