アドビのクリエイティブ系アプリで、フリーミアム版(基本機能を無料で使わせ、上位の機能で課金する方式)の月間アクティブユーザー(MAU)が1億人を超えた。1年で70%以上の増加である。経営陣は、この数を伸ばし続けるために、すぐに価格を見直して得られる「短期的な下支え」よりも、入り口にあたる無料ユーザーの裾野を広げることを優先したと述べている。一方、株価は9月11日までの1年間で28%下落した。5月までの4四半期の純利益に対して14倍、つまり株価収益率(PER)14倍の水準で取引されており、3年平均の30.8倍の半分にも満たない。
とはいえ、2026年度第2四半期までの4四半期の営業利益は、1年前の82億ドル(約1兆2700億円)から91億ドル(約1兆4100億円)に増えている。同じ純利益にかつてのPERを当てはめれば、株価はいまの2倍を超える計算になる。焦点は2つある。アドビは増えた無料ユーザーを有料の顧客に変えられるのか。そして、それはどういう道筋でかつてのPERを取り戻すことにつながるのか。
市場はなぜアドビの利益に安い値しか付けないのか
評価が低いのは、利益が減少しているからではない。5月までの4四半期で売上高は11.5%伸びた。営業利益率は36.1%で、3年平均の35.7%を上回っている。
いまのPERの土台になっている純利益率は28.7%で、3年平均の27.9%をわずかに上回る。過去10年のPERは11.4倍から61倍の間で動いてきたため、14倍はその下限に近い。利益率が平年並みなのにPERが低い。これは、すでに出ている利益ではなく、この先の成長に対して市場が懐疑的だということだ。
その疑いは、2026年度第3四半期の決算説明会(米国時間9月10日)ではっきりと表に出た。あるアナリストは、新規の年間経常収益(ARR)が前年同期比で36〜37%減っていると指摘した。別のアナリストは、契約済みでまだ売上に計上していない収益の伸びが、2023年度初め以来はじめて1桁台になったと述べた。3人目は、第4四半期の見通しでは、クリエイティブ&マーケティングプロフェッショナル部門の「前四半期比の増収はわずか」にとどまると語った。
アナリストの目標株価も下がってきた。米国時間9月11日までの1年間に出た目標株価の平均はおよそ314ドルだった。直近3カ月に限れば273ドルほどで、米国時間9月11日の終値である252ドル前後をわずかに上回るにすぎない。



