AIは実験段階から日常業務へと移行しつつある。
私の立場から見て、はっきりしていることが1つある。AIから最大の成果を引き出す企業は、自社のビジネスが実際にどう機能しているのか、すなわち引き継ぎ、例外処理、判断が求められる場面など、プロセスマップにはめったに現れない部分まで踏み込んで検証する意思を持つ企業だということだ。
ファシリティマネジメントでは、ほぼすべての意思決定がデジタル世界と物理世界をつないでいる。サービス依頼は、店舗マネージャーからファシリティチーム、配車担当者を経て、機器の前に立つ技術者にまで届く。各ステップでデータが生成され、文脈が加わる。大規模になれば、AIはその両方を理解しなければならない。
NESTでは最近、ファシリティマネジメントと技能職の実務課題に焦点を当てた応用AIパートナーシップを、ある大学と拡大した。学生、教員、業界のプロフェッショナルが協力し、見積もり、ルーティング、スケジューリング、業務効率化について探求している。学生と教員は、業務課題に対して異なる視点を提供してくれる。一方、私たちのチームは、見かけ上の非効率がなぜ存在するのか、どの例外が重要か、そして現場の担当者がより良い判断を下すために何が必要かを説明できる。
取り組みは企業規模のデータから始まるが、価値は実践的な問いを立てることから生まれる。例えば、サービス提供者が次の現場へより早く到着できるよう支援できるか。見積もりの精度を高められるか。既存の情報で不要なステップをなくせるか、といった問いである。
以下、AIを活用して強固なオペレーションを構築する方法をいくつか紹介する。
1. 既に摩擦が生じている場所から始める
最も有用なAIの機会は、多くの場合、従業員が既に非効率だと分かっているところから始まる。問うべきは、どこで人々が情報の比較に時間を使いすぎているか、どこで意思決定が遅れているか、どこで経験豊富な従業員が同じ判断を何百回も繰り返しているか、ということだ。
ファシリティマネジメントでは、そうした機会は見積もり、ルーティング、スケジューリング、繰り返し発生するサービス問題などに現れる。何千回も行われるタスクに対するわずかな改善であっても、大きな影響を与える可能性があり、リーダーはその影響がどのようなものになるかを予測できる必要がある。
摩擦のある領域を特定したら、次の簡単な文を完成させてみるとよい。「これを改善すれば、私たちのチームは____できるようになる」
その答えは、対応の迅速化、見積もり精度の向上、不要な移動の削減、あるいはより情報に基づいた意思決定など、より優れたビジネス成果を示すものであるべきだ。
2. 業務データはすぐに複雑になる
AIは長年の業務履歴から学習できるが、その履歴は仕事のやり方のばらつきも露呈する。
サービス依頼を考えてみよう。2人の技術者が同じ問題を異なる言葉で表現するかもしれない。類似の修理が異なる職種として分類されるかもしれない。ある作業が非効率に見えても、実は技術者が部品を待っていた、あるいは悪天候の中で対応していたのかもしれない。
だからこそ私は、AI導入の準備はテクノロジーの問題であると同時に、オペレーションの問題になりつつあると考えている。リーダーは、情報がどう生み出され、判断がプロセスのどこで介入し、どの変数が結果に影響するのかを理解する必要がある。
データベースを整理することはひとつの作業にすぎない。データが現実世界で何を意味しているのかを理解することこそが、現場での業務経験が価値を発揮する瞬間である。
3. インサイトを中心にワークフローを構築する
AIによる正確なアウトプットは、組織がそれをどう活用すべきかを理解して初めて価値を生み出す。
例えば、あるモデルが空調システム(HVAC)が故障する可能性が高いと予測したとしよう。そのアラートは誰が受け取るのか。それは点検、保守訪問、資本計画の議論のいずれを引き起こすのか。その後に何が起こったかを誰が記録するのか。
ワークフローでは、責任の所在、検証、アクション、フィードバックを定義するべきだ。また、例外にも対応する必要がある。技術者が、建設残材や異常気象、その他の現地条件が問題を引き起こしたと発見するかもしれない。そうした情報はシステムに戻され、今後の推奨事項が改善されるようにすべきだ。
ワークフローを可視化すると、責任の所在が不明確であること、重複するステップ、情報のギャップなど、他の改善機会が明らかになることが多い。それらの課題に対処することで、新しいツールを展開する前にオペレーションが強化される。
4. 経験豊富な人材をプロセスの近くに置く
現場に最も近い人々は、データセットにはっきりと現れることのない文脈を理解している。
配車担当者は天候関連の移動遅延を理解している。技術者は外部条件が機器に影響を与えるタイミングを見抜く。見積もり担当者は現地の許認可要件を熟知している。アカウントマネージャーは、なぜ類似する2つの拠点で異なるアプローチが必要になるかを知っている。そうした経験こそが、AIの設計、テスト、運用の在り方を形作るべきだ。
従業員とサービスパートナーを早期にプロセスに参加させることで、精度と定着率が向上する。技術チームはデータの背後にある推論にアクセスでき、従業員はツールが自分たちの仕事を支援するという確信を得られる。研修はプラットフォーム操作にとどまるべきではない。人々は、何が推奨事項の根拠になっているか、いつ判断を優先すべきか、そして自分たちのフィードバックがどうシステムを改善するかを理解する必要がある。
リーダーが答えるべき5つの問い
AI施策を拡大する前に、リーダーは5つの問いに答えられるべきだ。
1. 私たちはどの意思決定を改善しようとしているのか
意思決定を明示し、その責任者と、変えるべきビジネス成果を特定する。
2. 入力データを信頼できるか
データが完全か、一貫しているか、測定対象の成果と結びついているかを見直す。
3. ワークフローの責任者は誰か
誰が出力をレビューし、誰が行動を起こし、例外はどのように扱われるかを定義する。
4. 現場に最も近い人々を関与させているか
業務のエキスパートは、技術チームが見落としがちな前提条件や現実世界の状況を特定できる。
5. 価値をどう測定するか
技術的な精度も重要だが、ビジネス成果の方がより重要だ。サイクルタイム、手戻り、コスト、サービス品質、顧客体験、従業員による導入状況を追跡しよう。
基盤こそが優位性を生む
AIは組織がパターンをより速く特定し、情報を使いやすくし、意思決定を大規模に改善する助けとなる。そうした恩恵は、リーダーが規律あるデータ運用、明確なワークフロー、経験豊富な人材、責任あるオーナーシップに投資してこそ、より現実のものとなる。
基盤は完璧である必要はない。焦点を絞ったパイロットにより、ギャップを露呈させ、優先順位を明確にし、より強固なプロセスが必要な箇所を示すことができる。AIの能力が向上するにつれて、このテクノロジーへのアクセスはより一般的になる。優位性は、企業がその能力を自社のオペレーションにどれだけうまく結びつけるかにかかっている。



