2026年6月、ニューヨークで53年ぶりのNBAチャンピオンシップを祝う優勝パレードが行われた際、ゾーラン・マムダニ市長の傍らに立ったファーストレディ、ラマ・ドゥワジの装いが、すぐにファッションメディアで取り上げられた。VOGUEやHarper’s BAZAARはじめ、複数のファッションメディアが相次いでこのルックについて触れた。
メディアが取り上げたのは、「市長夫人がユニークな服を着た」という話ではない。ただ単にファッションの文脈だけで語られていたのでもない。背景に思想を持つ人物として、業界が彼女を認識したのだ。
筆者がこのコラムでラマ・ドゥワジを取り上げるのも、同じ理由からだ。彼女の在り方は、新しい世代のエグゼクティブ・プレゼンスの本質を、非常に鮮明な形で可視化している。
「ラマ・ドゥワジ」という人
まず、ここで最初に明確にしておきたいことがある。ラマ・ドゥワジを語るにあたり、どの順番で語るか、ということだ。
2026年1月、夫・ゾーラン・マムダニがニューヨーク市長に就任したことで、1997年生まれ、現在28歳のラマは、ニューヨーク市史上初のZ世代のファーストレディ、そして初のムスリムのファーストレディとなった。
しかし、彼女を語る正しい順番は「ファーストレディ」からは始まらない。
ラマ・ドゥワジは、シリア系アメリカ人のイラストレーター・アニメーター・陶芸家だ。テキサス州ヒューストンで生まれ、9歳でドバイへ移り、バージニア・コモンウェルス大学でBFAを、ニューヨークのスクール・オブ・ビジュアル・アーツ(SVA)でMFAを取得した。The New Yorker、The Washington Post、BBC、Tate Modern、Cartierといった媒体・機関に作品を提供し、2018年のグラフィックノベル『Razor Burn』では、欧米中心の美の基準や身体への不安、メンタルヘルスをテーマに、言葉を一切使わないパントマイム形式の作品を発表した。
彼女の本業はアーティストだ。ファーストレディは、後から加わった役割の一つに過ぎない。そしてこの順番こそが、彼女のプレゼンスのすべてを説明している。
そのドレスは何でできていたか
ラマがパレードで着ていたのは、53年ぶりのNBA制覇を果たしたニューヨーク・ニックスのグラフィックTシャツを素材にアップサイクルして作られた一点もののパッチワーク・トップだった。
デザインを手がけたのは、2026 CFDA/Vogue Fashion Fundのファイナリストに選ばれた新進デザイナー、Miss Claire Sullivan。ホワイトの「NBA Finals」Tシャツを上半身にワンショルダーで結び、コバルトブルーとオレンジのシャツをヘムに縫い付けてサロン風に仕立てた、まさにこの祝祭のために生まれた一着だ。
ボトムは、Albright Fashion Libraryから調達した黒のヴィンテージパフスカート。仕上げに、ゴールドのネックレスを幾重にも重ね付けし、ニックスのチームカラーであるオレンジのポンポンイヤリングをつけていた。
ここで注目したいのは、ルックの中心となるトップがアップサイクルで、スカートがヴィンテージのレンタルであることだ。完成した新品を購入して揃えるのとは異なるファッションの選択が、ここにはあった。



