私が自身のポッドキャストで作家兼ジャーナリストのカル・ファスマンと対談した際、彼はミハイル・ゴルバチョフとのインタビューを認められたときの話をしてくれた。彼は1時間半分の準備をしていたが、直前になって時間は10分しかないと知らされた。さらに、通訳がやり取りの半分を占めるため、実質的な時間は5分程度になるという状況だった。
インタビューの場で、ファスマンは、ゴルバチョフが当然政治の話題から入るだろうと予想していると考えた。しかし彼は代わりにこう尋ねた。「お父様から教わった最も素晴らしい教訓は何ですか?」
ファスマンによれば、ゴルバチョフはうれしい驚きを見せたという。そして、第二次世界大戦中の少年時代、父親が召集されたときの詳細な物語を語り始めた。家族は農場から町へ、父を見送りに出かけた。父は出発する前、家族全員にアルミのカップに入ったアイスクリームを買ってくれた。この話をしている最中、二人はある気づきに至ったとファスマンは語る。そのアイスクリームのカップこそが、ゴルバチョフが和平を実現し、冷戦を終結させることができた理由だったのだ。なぜなら、そのカップには、父親が戦争に行く前の日々がどのようなものだったかという記憶が宿っていたからである。
ゴルバチョフの広報担当者が何度もドアをノックし、時間切れだと告げ続けたにもかかわらず、二人は話し続けたとファスマンは語る。ゴルバチョフは会話を続けることを望み、結局10分をはるかに超えて話し込んだ。
最終的に、ファスマンの教訓はシンプルだった。まず心を狙え。頭は後からついてくる。
ビジネスで最も高くつく分類ミスは、ストーリーテリングをマーケティングとして扱うことだ
私は数え切れないほど多くの役員会議の場で、あのアルミのカップについて考えてきた。なぜなら、それが多くの経営幹部がストーリーテリングについて誤解している点を浮き彫りにしているからだ。彼らはそれをパフォーマンスのスキル、つまりステージやピッチのためのものとして扱い、ロゴやキャンペーンカレンダーの隣にある「マーケティング」のフォルダーに分類してしまう。
しかし、20世紀で最も警戒心の強かったリーダーともいえる人物が心を開いたのは、巧妙な議論や洗練された資料のおかげではなかった。彼が心を開いたのは、ファスマンが「意味は心に宿る」ということを理解し、意図的にそこへ手を伸ばしたからだと私は考えている。
組織の文化と人材について20年にわたり助言してきたなかで、私は同じ法則が働くのを見てきた。最も遠くまで届いたアイデアは、分析ではなくストーリーによって運ばれていた。CEOが困難な局面の意味を声に出して説明するだけで、不安を抱えた事業部門を落ち着かせる場に立ち会ったこともある。一方で、完璧な資料が霧のように聴衆の上を通り過ぎていく場にも立ち会ってきた。
違いを生んだのは、決して制作クオリティではなかった。リーダーが指標に手を伸ばす前に心を狙ったかどうかにかかっていた。そしてマーケティングは、リーダーシップに代わってそれを行うことはできない。マーケティングはあなたのストーリーを世界に語ることはできるが、それを真実にできるのはリーダーシップだけである。人々はその違いを、言葉にできるずっと前から感じ取っている。
ストーリーが文化になれば、文化はケイパビリティ(組織能力)になる
多くのリーダーが見落としているメカニズムはこうだ。一人の人間が語るストーリーは信念を呼び起こすことができる。多くの人によって語られ、語り継がれるストーリーは文化となる。ひとたびストーリーが文化になれば、それはもはやコミュニケーションではなく、ケイパビリティとなり始める。
マネジャーが見ていないとき、人の行動を導くものは何かを考えてみてほしい。壁に掲げられた価値観は、人々に抽象的な概念を解釈することを求める。一方、ストーリーはその内側に判断と理解を運んでいる。顧客を救うために遅くまで残った同僚、誰かに見つかる前に自らミスを認めたエンジニア、上級幹部ばかりの部屋でチームメンバーを守ったマネジャー。こうしたストーリーは、その事業が何を称え、何を許すのかを人々に正確に教える。
共有されたストーリーが豊かな文化は、組織の末端にまで知恵を行き渡らせる。そのため、プロセスが尽きたとき、そしてプロセスは常にどこかで尽きるものだが、人々は何をすべきかを知っている。自分たちのような人々が過去に何をしてきたかを知っているからである。
これは、どんな研修予算をもってしても買えないケイパビリティだ。あなたの従業員は、あなたが決して目にすることのないあらゆる意思決定の場に、あなたのストーリーを携えていく。
優れたリーダーは、ストーリーを語る前に見つけ出す
実践的な転換は、ファスマンが始めたのとまさに同じ場所から始まる。より良い問いと、その答えを聴く忍耐だ。優れたストーリーテラーはストーリーの語り方を知っているが、優れたリーダーはストーリーの見つけ方を知っている。あなたの組織はすでに、オンボーディングの会話、退職者インタビュー、そして誰かが犠牲を払ってまで価値観を体現したプレッシャーの瞬間の中で、最良の素材を生み出している。しかし、その大半は誰も耳を傾けていないために、日々の業務の中に消えていく。
だからこそ、意図的に心を狙うのだ。新しく加わった人に、最初の1週間で何に驚いたかを尋ねる。去っていく人に、最も誇りに思う瞬間を尋ねる。チームがプレッシャーの中で成果を出したなら、語り継ぐに値する行動をしたのは誰かを尋ねる。そして、その苦闘を残したまま語り直す。揺らぎこそが、結末を信じられるものにするからである。
あなたが敬服するどの文化も、おそらく戦略になるずっと前に、人間的なレベルで共鳴するストーリーから始まっている。そのことを理解すれば、それを決して裏切ることのない戦略へと変えることができる。今この瞬間もあなたの組織のどこかに、アルミのカップ、すなわち文化がなり得るすべてを宿した小さな瞬間が存在している。唯一の問いは、リーダーたちがそれを見つけ、その価値を余すところなく生かせるかどうかだ。



