JWSTの「小さな赤い点」の謎をついに解明か
今回の発見がもたらす影響は、単一の天体にはとどまらないかもしれない。JWSTによる遠方宇宙の観測が開始されて以来、天文学者は小さな赤い点(LRD)との通称で呼ばれている、サイズが小さく異常に赤い天体に何度も遭遇している。LRDは初期宇宙の観測には頻繁に現れる一方、それより後の宇宙時代にはほぼ姿を消してしまう。ナイドゥーは「この天体の正体が何なのかは、JWST時代において最も議論されている問題の1つになっている」と指摘した。研究チームは今回の研究で、LRDの多くがブラックホール星で説明できるかもしれないと示唆している。
MoM-BH*-1が特に注目すべきである理由は、周囲の母銀河(天体を宿す銀河)より圧倒的に明るく輝いているため、他と比較して干渉がほとんどない状態で観測できると考えられるからだ。
ブラックホール星はどのようにして見つかったか
研究チームは、最も遠方の宇宙に位置する最初期の銀河を探索している過程で、この天体を発見した。非常に赤くて明るい点光源を検出したのだ。論文の共同執筆者で、MKIの所長とブルーノ・B・ロッシ教授(実験物理学)を務めるロバート・シムコーは「宇宙で非常に赤い天体が確認される場合は、煤や灰のような塵(固体微粒子)に取り巻かれた天体だと考えられるケースが多い」として「最近カナダで発生した森林火災の煙により、ボストンの空が真っ赤に染まったのと同じように、天体も塵の覆いを通して見ると、本来の色よりも赤く見える可能性がある」と説明した。
だが、この天体の明るさが波長によって急激に変化している点に、研究チームは気づいた。これは高密度の水素ガスが特定の波長の光を吸収することに関連する現象で、この天体は変化の度合い(段差)が極端に大きかった。ナイドゥーは「この天体で今回観測された段差については、これまでに観測されたあらゆる天体の中で最も深い段差となっていることから、『普通の』恒星が発生源ではないと判断された」として「これにより、驚異的な規模を持つ新しい種類の『恒星大気』を目の当たりにしているのではないかと思うようになった」と述べている。さらに今回の観測では、水素とヘリウム以外の元素の存在を示す証拠はほぼ見つからなかった。
研究チームによるシミュレーションでは、今回の赤い光点が、極めて高密度の水素ガスの繭に取り巻かれた強力なエネルギー源である可能性があることが示唆された。さらに、物質を活発に飲み込んでいるブラックホールを用いたシミュレーションを重ねた結果、MoM-BH*-1が観測史上初の「ブラックホール星」である可能性があることが示された。
ナイドゥーは、JWSTの観測画像が捉えた「LRDは全て、一般的な初期銀河の内部に存在するブラックホール星と整合性がある」として「だが、MoM-BH*-1に関して特別なのは、このブラックホール星が実質的に周囲の母銀河の光を完全に圧倒するほど非常に明るく輝いているため、ブラックホール星の光だけが観測されることになる点だ」と説明している。


