サイエンス

2026.09.15 18:00

食料無限の「ネズミのユートピア」が崩壊した理由、人間社会との類似点

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2. 「ドロップアウト」組の吹きだまり
なわばりを持たず、序列からはみ出したオスたちは、広々とした檻の中央部分の床に集まり、規模は大きいが受動的な群れを作った(彼らが集まったのは、カルフーンが、檻の中でも、最も望ましくない場所だろうと考えていた場所だった)。ここに集まったオスたちは、えさを食べ、眠りはするが、それ以外のことはほとんど行なわない。しかし、このグループは不安定だった。カルフーンは、このグループ内で、理由のない突発的な攻撃が発生したと報告している。攻撃のターゲットとなったのは、逃げることも反撃してくることもない個体だった。この集団で起きたのは「ヒエラルキーなき暴力」であり、これはげっ歯類の通常の攻撃行動とはかけ離れていた。

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3. 「探求者」タイプ
これは、多動傾向があって目立つオスたちだ。求愛行動を完全に省略し、メスを追いかけて巣に突撃する。このタイプの個体の行動は、カルフーンが報告したなかでも最も不穏で、なかには生まれたばかりの仔を食べてしまうといったものがあった。

4. ひきこもり型メス
オスによる巣の防衛が崩壊すると、子どもを生んだ母親は、自分が生んだ仔に対しても攻撃的になり、離乳時期が早まったり、子育てを放棄したりすることもあった。子どもを気遣う様子も見られず、幼くして死んだ仔をよそに移動させていた。メスの一部は繁殖をやめ、檻の上部にあった、外界と隔絶されたボックスにひきこもり、1匹で暮らすようになった。

5. 「ザ・ビューティフル・ワン」
混乱する環境で生まれ育ったこのタイプのオスは、なわばり争いや求愛、交尾とは無縁の存在だ。えさをただ食べ、眠り、とりつかれたように毛づくろいをして1日が終わる。こうした個体の毛皮は、非の打ちどころがないほどつややかで、他の個体と関わりを持つオスの大半にある噛み傷などは見当たらない。カルフーンは、こうしたオスは決して欠陥があるわけではなく、そもそも最初からネズミにふさわしいふるまいを学んだことがないのだと主張した。これらの個体はそもそも、手本となる正常な求愛行動や親からの適切な育成を、成長過程で体験していないからだ。

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こうして出生数の伸びは鈍化し、やがて止まった。時間の経過とともに、コロニーでは、スマートで健康だが、他の個体に関心がないタイプが大勢を占め、そのまま個体数が減って衰退した。カルフーンの報告によれば、このコロニーで生き残ったネズミを、混み合っていない檻に移動させても、そのほとんどは繁殖行動に目覚めることはなかったという。

ネズミのユートピアをめぐる議論

生態学の世界には、こうした現象に対して標準的な用語がある。それは「密度依存的要因(density-dependent factors)」といい、動物が密集することで増大する圧力を指す言葉だ。

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翻訳=長谷睦/ガリレオ

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