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2026.09.18 09:15

想像は創造できる⁉︎ 「妄想力」に日本の残り時間を賭けよ:AnotherBall CEO 大湯俊介

日本の産業の海外売上額推移(単位:兆円、2010〜2023年の自動車を除く主要産業)Source: AnotherBall

日本の産業の海外売上額推移(単位:兆円、2010〜2023年の自動車を除く主要産業)Source: AnotherBall

誰もが文章や画像、映像をつくれる時代に、クリエイターの価値はどこに残るのか。VTuber のアバター作成アプリやアニメスタジオの運営を通じ、日本発IP の海外展開を手がける連続起業家の大湯俊介に、最前線からの見立てを聞いた。

現在発売中のForbes JAPAN10月号別冊「HUMAN-CENTERED AI 想像は創造できる!」より、抜粋してお届けする。


「AIに文字を書かせるな」

私は社内で、あえてそう言っている。生成AIを使うなという意味ではない。調査や論点整理には積極的に使えばいい。だが、何を伝えるべきかという判断まで委ねると、文章は途端に焦点を失う。AIは、膨大な情報を破綻なく並べることはできても、そのなかから「最も伝えたいメッセージ」を選ぶことはできないからだ。

画像や映像も同様に、これまで専門的な技術や巨額の制作費が必要だった表現手法を、生成AIで簡単に試せるようになった。頭に浮かんだ構想を短時間で具現化できるとなれば、コンテンツ制作に挑戦する人も増えるだろう。一定水準の制作物を多くの人が生み出せるようになれば、かたちにすること自体の希少性は下がる。

しかし、出力の量が増えても、つくり手の経験値や価値判断まで同じ速度で増えるわけではない。なぜつくるのか、何を面白いと感じたのか、どのような選択を重ねてそこへたどり着いたのか。出力が容易になるほど、作品の背後にある「意思」が問われるようになった。

先行指標となるのがVTuberの歩みだ。黎明期は、3Dキャラクターが動くだけで新鮮だったが、技術が普及すると、それだけでは人を引きつけられなくなった。ファンは画面上のキャラクターのビジュアルや動きだけではなく、キャラが育む個性や関係性といった「人格」を求めるようになったのだ。

生成AIの普及により、同じことが起きるだろう。整った文章や画像が量産されれば平均点は高くなるが、均質化する。そうなったときに創作の核になるのは、他人には理解しづらい執着や、言語化できずにいる違和感を抱え続ける力だ。

私はそれを「妄想力」と呼んでいる。

世界を動かす妄想は「余白」から生まれる

日本の強みは、そんな妄想を抱えたままでいられる余白にあると私は思う。とりわけ地方には、暮らしに不便なほどではないが、東京ほど娯楽や刺激が密集していない場所も多い。だからこそ、ひとりで妄想にふけりながら、まだ誰にも求められていない物語を考え続ける時間が生まれる。

その大半は作品として世に出ないかもしれないが、それでも無数の「好きでやってしまう人」がいるからこそ、ごく一部の異質な才能が現れ、世界規模のIPが育っていった。効率だけを見れば無駄に見える時間が、創作にとっては貯金になる。

2026年6月に発売されるや世界累計販売本数1,500万本を突破したインディーゲーム『MECCHA CHAMELEON』。個人の着想が国境を超えて届いた象徴的な事例だが、小さな思いつきが世界の遊び方を変えうることの証左といえるだろう(編注:本記事公開時点で販売本数は2000万本を突破。また、9月10日からはNintendo Switch2版を配信開始。初日だけで10万本を販売するヒットとなっている)。

漫画にも同じ構造がある。ひとりの作家が物語や絵の核を担い、世界で読まれる作品を生み出してきた。個人の偏った関心が大きなIPへ化ける回路をもっていることは、日本の明確な強みである。

ただ、作品を生み出す力があっても、その価値を次の創作へつなげられるとは限らない。生成AIの多くは海外企業に開発され、世界中で同時に使われている。日本のIPコンテンツも国境を超えて学習や生成に利用される。その対価や主導権が海外の企業やプラットフォームに偏れば、創作を支えてきた土壌は次第に細る。国内のクリエイターが慎重に対応しても、技術の利用条件そのものを決めることはできない。

では、どのような利用なら認めるのか。

作品や作家にどのように利益を還元するのか。新しい技術を取り入れながら、日本発IPの価値をどう高めるのか。個々の作り手に判断を委ねるのではなく、国と産業界が共通の方針を示す必要がある。

政府は、日本発コンテンツの海外売り上げを33年までに20兆円へ伸ばす目標を掲げている。しかし、既存のヒット作を海外へ多く売るだけでは次の作品は生まれない。市場価値が証明される前の創作や、成果の見えない試行錯誤にも、時間と資金を費やすべきだろう。

AIを使うか、使わないかが本質ではない。何をつくろうとするのか。その起点にある意思の価値は、むしろ大きくなる。


大湯俊介◎1988年生まれ。慶應義塾大学卒業後、2012年コネヒト創業。KDDIグループに売却後、グローバルVTuber事務所PRISM Projectを展開、ソニーグループに売却。22年、AnotherBallを創業。VTuber関連企業への投資家としても活動する。

文=加藤智朗

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