私は2000年からカスタマーサポートのアウトソーシング業界で働いてきた。その間、人間のサポートチームを不要にするとされたテクノロジーが、これまでに3回登場している。
1つ目は自動音声応答(IVR)だ。適切に設計されたメニューで発信者を誘導すれば、大半の顧客はオペレーターを必要としなくなる、という主張だった。2つ目は2016年から2017年にかけてのチャットボットの波で、当時はこれを導入していない大企業を探すのが難しいほどだった。そして3つ目の波が、今まさに起きている。
懐疑的な意見を述べる前に、今回の波について明確にしておきたい。今回はこれまでとは異なり、実際に機能している。前の2つの波が失敗したのは、システムに顧客が合わせる必要があったからだ。「1を押してください」「質問を言い換えてください」「提示された選択肢から選んでください」といった具合だ。しかし、大規模言語モデル(LLM)のエージェントはそれを求めない。非構造化言語を処理できるため、従来のシステムでは構造上対応できなかった量の問い合わせを吸収できるのだ。
コンタクトセンターが注文状況の確認、パスワードリセット、返品・交換を大量に処理しており、ドキュメントが整備されているなら、その層は自動化すべきである。まさにその条件に当てはまる多くの企業は動きが遅すぎる。私ならそう伝える。
しかし、これら3つの波すべてにおいて共通して変化していない点があり、それが再び繰り返されているのを目にしている。
自動化が吸収するのは「簡単な問い合わせ」だけ
企業が問い合わせの60%を回避(デフレクション)したとしても、代表的な60%を回避したわけではない。回避されるのは単純な問い合わせだけだ。残るのは、怒っている顧客、状況が曖昧なケース、例外的な事象、人間の判断が必要な問題、そしてすでに一度解決に失敗したトラブルなどである。
その残された案件を処理するチームの規模は、自動化導入前と変わらない。しかし、業務の平均的な難易度は急激に上昇する。かつては初心者レベルのオペレーターが配置されていたポジションに、今では、プレッシャーを和らげる簡単な案件を挟むことなく、一日中難しいケースだけを処理できる判断力を備えた人材が必要になる。
ここで計算ミスが生じる。コスト削減の予測は、ほぼ常に「総合平均処理時間(総問い合わせ件数×平均通話分数)」に基づいて作成される。しかし、自動化を免れて残った問い合わせは「平均」ではない。当社の業務では、二次対応(エスカレーション)が必要な案件は、定型的な案件の約2倍の時間がかかる。簡単な業務が一切なくなったキューに総合平均値を適用すると、自動化の運用を1件も処理しないうちから、試算モデルが削減効果を過大評価することになる。
かつて、自動音声応答(IVR)の自己解決(コンテインメント)率が予想を上回ったにもかかわらず、必要な人員数がほとんど変わらなかった導入事例を覚えている。簡単な電話は消え去り、難しい電話だけでキュー全体が埋め尽くされたのだ。これと同じ現象を、チャットボットの導入時にも目撃した。
「削減」と「解決」は異なる
これに関連して、指摘しておくべき測定上の問題があり、それこそが私が最初に解決したい課題だ。
自己解決率は、オペレーターに繋がらずに終了したセッションを「成功」とカウントする。これには、顧客が途中で諦め、翌朝別のチャネルから再度問い合わせてきたケースも含まれる。ダッシュボード上では「成功」と見なされても、現場の運用レベルでは、より不満を募らせた顧客からの「再問い合わせ」が発生しているにすぎない。
私が検証してきた導入事例において、自己解決率よりもはるかに多くのことを語ってくれる指標が2つある。それは「72時間以内の再問い合わせ率」と、すべての問い合わせを混ぜ合わせた平均ではなく「自己解決したセッションのみを対象に測定した顧客満足度(CSAT)」だ。自己解決率が上昇している一方で、再問い合わせ率が高止まりしているとすれば、問い合わせのボリュームが消えたわけではない。別の場所に移動しただけなのだ。
何を自動化するか決める前に、私が実際に問うこと
問うべきことは、アウトソースか自動化か、ではない。何を、どの順序で自動化するかだ。決断を下す上で、以下の3つの質問が役立つ。
1. 問い合わせ件数のうち、本当に再現性があり、かつドキュメント化されている割合はどれくらいか? これに誰も答えられないのであれば、次にすべきことはツールの調達ではなく、ドキュメントの整備だ。再現可能なプロセスこそが、自動化に最適な対象となる。
2. エージェントは対応を「完了」できるのか、それとも「案内」するだけなのか? 読み取り(参照)権限しか持たないエージェントは、行儀の良い検索エンジンにすぎない。問題を解決するには、顧客の課題が実際に存在するシステムへの「書き込み(更新)権限」が必要となる。しかし、セキュリティリスクの観点から、すべてのシステムでこの権限を付与することが適切とは限らない。どこに最大の機会があり、どこが最もリスクが低いかを見極めるべきだ。
3. 1件の「誤った解決」にどれほどのコストがかかるか? 潜在的なリスクに基づいて、解決までのルートを決定すべきだ。例えば、顧客からの配送状況に関する問い合わせは、間違えた場合のダメージが小さいため、AIエージェントが書き込み権限を持って注文情報を更新するまで、エンド・ツー・エンドで処理すべきである。一方で、返金をめぐる係争は金銭が動き、取り消しが不可能な場合が多いため、AIエージェントは受付と情報収集のみを担当し、最終決定は人間に委ねるべきだ。
私の経験上、効果的な手順は地味なものだ。まず業務プロセスを可視化し、再現可能なものを自動化し、残りの業務には熟練した人材を維持する。最初のステップをスキップする企業は、明文化されていないプロセスのままでエージェントを構築し、結果が伴わないとモデルのせいにする。
まだ解決できていない課題
導入2年目以降に、これらのエージェントの管理責任を誰が負うべきかについて、私はまだ適切な答えを持っていない。プロンプトの調整、評価基準の維持、基盤モデルが更新された際の回帰テスト、および陳腐化するコンテンツの管理など、すべてにおいて継続的な注意が必要だ。私が尋ねたどの企業も担当者の名前を挙げるが、1年後にはその人物は別の部署に異動しており、その業務を正式に引き継いだ者は誰もいない。
3つの波を経た今、これこそが繰り返されると私が予想する「失敗パターン」である。次の自動化の波を正しく乗りこなす企業とは、最も多くの業務を自動化した企業ではない。テクノロジーの変化や、それを担当する人材の交代にも耐えうる「運用モデル」を構築した企業である。
もし、この長期的な管理責任の問題を異なる方法で解決した方がいれば、ぜひ知見を交換したい。



