金融投資がビジネスの成長を後押しするのと同じように、ソートリーダー(思想的指導者)としての自分自身への投資は、思いもよらない形で実質的なリターンをもたらしうる。
本質的に、影響力は新たな資本であり、パーソナルブランドと権威の成長を促進する。それが結果として、ビジネスを一層強固なものにする。
そして今日、ソートリーダーとしての影響力を確立することをより一層強力にしている要因のひとつが、人工知能(AI)の存在と、それが人々に投げかける「何が本物で何がそうでないのか」という疑念である。パラドックスなのは、AIが情報の氾濫をもたらす一方で、信頼の希少化を招いていることだ。人々は膨大な情報を目にして、何が本物で、何が信頼に足り、何が信用できるのかを判断しかねている。
これは、ソートリーダーシップを確立したい人々にとっての好機となる。世界は、人々が何を信頼できるかを見極める手助けをしてくれる、信頼できるガイドを必要としているからだ。自分の経験と専門知識を世に共有し、良質なアドバイスを提供してきた実績を築いていけば、信頼は徐々に構築され、ビジネスはさまざまな形で恩恵を受ける。
もちろん重要なのは、真摯であることと、自分の専門知識を人々が直面する現実の状況に結びつけることだ。ソートリーダーとして、あなたは自分が解決できる問題を人々に定義してあげられる。そうすることで、以前はあなたのことを知らなかった人々、あるいは自分にそのようなニーズがあることに気づいていなかった人々の関心を喚起することができる。
採用と定着
ソートリーダーとしての地位は、社員の採用と定着の取り組みも向上させる。
その一例が、筆者の会社から3冊の著書を出版し、その他の取り組みを通じて自身のソートリーダーシップを推進してきた、成功を収めたCEOであるブレンダン・キーガン氏だ。
キーガン氏は成果をさまざまな指標で測定しているが、そのひとつが、トップ人材を惹きつける並外れた能力である。ある時、キーガン氏が自社の営業チームのカンファレンスで講演した際、紹介の一環として、営業責任者が主要な競合他社と当時CEOであったキーガン氏のソートリーダーシップにおける市場シェアを比較した。彼の講演後、多くの人々が彼のもとに歩み寄り、彼のソートリーダーシップを知ったことが入社のきっかけであり、業界を代表する先見の明を持つ人物のもとで働きたかったのだと伝えたという。
見えざる買い手
B2B営業に関わる場合、強力なソートリーダーシップの実績は、「見えざる買い手」──営業会議には参加しないものの、取引や提携を承認または拒否する絶大な権限を持つ、舞台裏の意思決定者たち──の心を動かす助けにもなる。
これらは、財務、調達、法務、コンプライアンスなど各部門の人々で、多くの場合、取引を進める意義があるかを見極めるために独自の調査を行っている。
あなたが何者であり、何を大切にしているかを明らかにする、力強いコンテンツを備えた広範なソートリーダーシップは、成約の決め手となり得る。同時に、あなたのソートリーダーシップは、社内で交渉を進めている担当者が、見えざる買い手たちに対して主張を通すのを助けることにもなる。
機会への扉を開く
ソートリーダーは、誰が自分の仕事に注目し、その結果としてどのような扉が開かれるかを予測できない。
あなたのメッセージから恩恵を受けられる人々の集まりで講演する機会が増えるかもしれない。大学の教員に招かれたり、名門企業の取締役会に加わるよう求められたりすることもあるだろう。
ただし金融投資と同じで、影響力のリターンは必ずしも一夜にして現れるわけではない。どれだけ早く成果を実感できるかは、あなたが自らコントロールできる3つの主要な要因にかかっている。
ひとつ目は、あなたが現時点で有している権威と信頼性のレベル、つまり出発点である。ソーシャルメディアやニュースレターの現在の読者規模はどのくらいか。あなたの分野における権威としての信頼性は、あなたを特集したり記事やニュース報道で引用したりしたメディアなど、第三者によって裏付けられているか。
また、信頼性を築くために何をしているか。信頼性を高めることのできる資格取得の道はあるか。パーソナルウェブサイトやソーシャルメディアといった利用可能なプラットフォームを最大限活用し、積極的に関与し知識を共有する姿勢を持った人物として認識してもらえているか。
2つ目の要因は、あなたが提供する洞察が可視化され、聴衆に届いているかを確認することだ。ソートリーダーシップには異なるマインドセットが求められる。売り込もうとするのではなく、教え、経験と知識を共有することが目的である。あなたのメッセージは、聴衆が抱える最大の課題の解決を助けるものであるべきで、既知の内容の焼き直しではない視点を提供する必要がある。そしてもちろん、信頼されることだ。行動と言葉に一貫性を持たせ、期待とずれが生じないようにしなければならない。
3つ目の要因は、あなたが投じる意欲のある時間と労力である。権威は自然に得られるものではない。努力を要する。ジャーナリストやポッドキャスターから取材依頼があれば、そのための時間を確保し、最優先事項としなければならない。講演の依頼には時間がかかり、出張を伴うこともある。自らの知恵を共有する書籍を執筆することは、ゴーストライターの支援があっても相当な時間を要する。そのゴーストライターは、著者の経験や読者へのアドバイスに関する情報を集めるために、複数回にわたって対話を行う必要がある。
もし自分のウェブサイトやソーシャルメディアのためにコンテンツを制作する時間がないなら、それらのプラットフォームを活動的に保つのを助けてくれる人と組む意思はあるだろうか。自分の知識と意欲だけでできることと、他者と協働して達成できることとの間のギャップを埋める必要があるかもしれない。自分でやるか、支援を求めるかの判断は、あなたの優先順位と、どこまで到達したいかによる。だが、「安く、速く、簡単」のうち2つしか同時には手に入らないという古い法則が、ここでも当てはまる。
最終的に、権威への投資はあなたの影響力を高め、それが今度は、以前は想像すら及ばなかった経験や機会をもたらしてくれるだろう。



